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キヤノンのF11とオリンパスのF1.2

先日キヤノンから新しいフルサイズミラーレス一眼が2機種も発表されました。多くの記事で「本流が一眼レフからミラーレスへ」という紹介のされ方をしており、幻となってしまった夏のオリンピックに向けて壮大なストーリーが準備されていたことを感じられました。

キヤノンはフルサイズミラーレスのRシリーズに移行するにあたって高性能なレンズが開発できる新マウントを用意し、そのレンズラインナップの拡充に力をいれていますが、Rシリーズの立ち上げ直後は、多くの人にとって少し過剰とも言えるスペックのレンズと、一眼レフのラインナップに当てはめると少し下のクラスのボディしかなくチグハグな印象でした。その様な中で今回のR5、R6はプロやハイアマチュアをターゲットにしたEOSブランドの顔になるシステムとして登場することになりました。

もちろんスペシャルモデルとしての上位機種は出てくるでしょうが、普通の人が購入できる機種として、R5/R6のボディを軸にじっくりとレンズ”資産”に投資していくことができるようになったわけです。

機能として、8段補正の手振れや8K動画などが注目されますが、実際に使う場面で進化を感じられるのはAF性能だと思っています。ミラーレスの特徴である常時撮像を活かして被写体を捉える能力で一気に先行他社を追い越した感じです。特に人物以外の特定被写体<鳥、犬、猫>を具体的に示したのはR5/R6が初めてであり、今後ソニー、パナソニック、オリンパスと切磋琢磨していくことになりそうです。


F11固定という新しいデジタル時代のレンズ

今回のキヤノンからの製品発表はオンラインでおこなわれ、その中でR5、R6とボディの紹介から始まったわけですが、その後レンズの部で実に面白い製品が発表されました。

RF600mm F11 IS STMとRF800mm F11 IS STMの2本の望遠レンズです。このレンズの特徴は「単焦点・F値固定」によって、小型軽量でリーズナブルな価格を実現したことにあります。

今回の発表会ではR5/R6というボディが注目され、現在フルサイズミラーレスでトップを走るソニーαへの対抗が話題になりますが、実はその裏で別のシステムへの対抗心を持っていることが分かりました。

F値を固定しても野鳥や鉄道のような動きものに対して適切なシャッタースピードを保持したままで適正露出をコントロールできるようになったのは幅広いISO感度設定のお陰です。特に絞り値が大きい場合には高感度側の設定に余裕が必要ですが、フルサイズの撮像素子と画像処理によって克服できたことはデジカメの進化と言って良いと思います。

ところで、このプロモーションビデオを見てマイクロフォーサーズの「機動力」との共通性を感じたのは私だけではないと思います。バックパック一つの身軽な装備で険しい自然の中に入り、手持ち撮影でシャッターチャンスを逃さないというストーリーはこれまでマイクロフォーサーズが訴求していきたものと一致しています。

このようにミラーレスの魅力を追求していく中では、これまでの撮影スタイルを変化させて、より自由な撮影体験を目指していくことは必然と言えるのかもしれません。


マイクロフォーサーズのF1.2レンズ

丁度キヤノンのF11と逆の作戦をマイクロフォーサーズではとっているのが面白いところです。フルサイズとの戦いの中で不利だと言われていた大きなボケや、微小領域の描写変化による立体感を実現するためにF1.2という非常に明るいレンズをラインナップしています。

PROレンズということもありマイクロフォーサーズとしては高価なレンズですが、手の届かない価格ではなく、またサイズも普段使いのズームレンズの他にもう一本バックに忍ばせておけるサイズであるということもマイクロフォーサーズの特徴を良く表しています。


まだフルサイズで決まったわけじゃない

オリンパスのE-M1XとEOS R6はどちらも30万円前後となっており、直接競合する可能性があります。特に今回のキヤノンの発表によって両者のコンセプトが思いのほか近いことが分かりました。

例えば35mm換算で1000mm前後のシステムを組む場合、面白い比較ができそうです。これまではオリンパスが言っていたフルサイズカメラとのサイズ差、重量差はそのまま受け取ることができましたが、今回の発表によってその差がかなり縮まってきたからです。

今年の年末には、M1Xに鳥認識AFが搭載され、150-400mmF4.5 TC1.25xIS PROも発売される予定ですので、かなりのガチンコ勝負ができそうです。

単にこれまでの一眼レフのレンズラインナップをミラーレス用に置き換えていくのではなく、新しい撮影スタイルを提案していく方向に進んでいけば、これからもカメラの世界は面白くなっていくのだと思います。

最近の話題を見ていると世界はフルサイズミラーレスに向かうように感じてしまいますが、デジタル技術の柔軟性を活用することでAPS-Cやマイクロフォーサーズなど多様な可能性が選択肢として残っていって欲しいと思います。



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