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可笑しき御菓子器

夏山蒼翠にして滴るが如く。甘味錚々たれば涎も滴る。甘く薫る風とともに開催された『山滴る、甘党市 2024』。京都を中心に全国から、美味しく可愛く新しい「今」のかたちの和菓子が集ったマーケット。

●「山滴る、甘党市 2024」
2024年 6月16日(日)
11:00~16:00
会場/立誠ガーデンヒューリック京都
京都市中京区蛸薬師通河原町東入備前島町310-2
入場料/500円(小学生以下は無料)

今宵堂は、今回は「アテ」を「甘い」にのせかえて、お菓子のためのちょいと可笑しな器たちをこしらえてみました。

鶴屋吉信の「夏うごく」。

染付の筆を走らせたのは、
風になびく草紋ではなく、
甘い欲になびいた「糖紋菓子皿」。
UCHU wagashi の落雁「drawing」。

おやつを見つけて目尻が下がる、
「パン楕円皿」。
聚洸 × 和菓子サロン一祥の「手毬花」。

とっておきを頂きに。
しばし眺めたのちにいだだきます。
菓子皿ならぬ「菓子塚」。
甘の字に甘味を盛って、
甘いものでもと勧められたらお言葉に甘えて。
角皿ならぬ「角ゴシック皿」。
水無月は六月三十日に食べるっていうけれど、
五月末頃から売ってるので
ついつい何度か食べてしまうんだニャ〜。
あまり食べすぎると・・・。
食後に背徳感へと向き合う
板皿ならぬ「ぶた皿」。
楊貴妃が笑っているのはライチが届いたからだとか、
ライチを毎日300コ食べられるとか、
宴会中なんだか蜜柑の匂いがするとか・・・
他愛なくも果実の香り漂う七言絶句。
菓子皿ならぬ「漢詩皿」。
松山銘菓の「坊っちゃん団子」。
団子は3つ並ぶだけで絵になりますね。

ストライプの背景作る「縞々皿」。
腹が三回鳴ったらおやつの時間。
毎日訪れる幸せの時刻を知らせる
「染付御八ツ皿」。
三寸足らずへ主菓子ひとつ。
ちょいととぼけた北斎の写しを添えた
「小間絵皿」。
吉村和菓子店の「焼き鳳瑞・種まき」。

織部を掛け分けて山々の稜線を模した「山際皿」。
やうやう暮れゆく山ぎは、すこしお菓子を。
亀屋良長の「満々」。

点々ではなく「字々菓子皿」へ嬉々として。
湿々とした梅雨の日々でも
おやつがあれば気分上々こころ晴々。
地元のおまんやさんが作っている和菓子が
スーパーのレジ横とかにあって、
娘が大好きでよくねだってきます。

お菓子盛ってできる可笑しなひとコマ。
甘党版「台詞皿」。
You know me ?
わかってる、欲しいんでしょ?
Stand by me, you の me.
あなたのそばに、あなたのわたし。
温かいお茶を湛える「ユーのミー」。
器のおまけでひと振り。
「甘党賽子」。

お猪口屋としては珍しく「お菓子の器を考える」という楽しい初夏でした。

とはいえ、ひとくちふたくちの菓子の大きさは肴にも通ずるものがあり、「主菓子を盛るのもいいけど、和えものにもいいな」とつい思う吞兵衛の性。盛るものと盛られるもののサイズ感を再考する機会でもありました。

季節や自然を小さな菓子の中に見立てる和菓子のデザインも興味深く、小さな盃へと時季の景色や戯れを込める楽しさをあらためて感じた制作の日々でした。

「甘党市」の運営やボランティアのみなさま、そして愛すべきご来場の甘党のみなさま、ありがとうございました。一日限りの祝祭は甘く儚く、口の中でとけてゆく甘味とともに・・・。おかし、いや、かしこ。