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アドレス・高知 220619

 今年の三月二十九日に竹下病院を退院してから3ヶ月近く経ちました。

 桜咲き誇る季節から曇り多き雨降る季節に時は移ろい、私の施設での生活もだんだんと軌道に乗って来たように感じます。 

 そこで今回は、私の現在生活している障害者支援施設「アドレス・高知」について、どういった施設なのかを簡単にご紹介したいと思います。 

Google Earthから。真ん中の大きな平屋が当該施設

 このアドレス・高知は、社会福祉法人ミレニアムが運営する障害者支援施設です。

 2003年(平成15年)に高知市初の身体障害者療護施設(現在の身体障害者支援施設)として開設され、地震や津波などの大災害にあっても入所者の安全、安心を確保できるように、海に近い場所から2015年(平成27年)に現在の場所に新築移転されました。開設から19年、移転してから7年が経つのです。 

 施設のある場所は、高知市の南部(海まで2kmのところ)で、近くには高知医療センターがあり、隣には高知県立大学があります。緑に囲まれた閑静な場所は、栗林、栗畑だったと聞きました。高台になっている場所を整地して施設を建設したのです。近くの医療センターから発着するドクターヘリの飛行音を一日に何度も聞くことがありますし、飛んでいくヘリも見ることができます。騒音にならないレベルの音ですので特別うるさくは感じません。 

正面玄関
南テラスから建物裏側

 建物は、木造平屋建てで木のぬくもりを感じます。建物内はバリアフリーで車椅子の移動に配慮した造りになっています。居室はすべて個室になっていて、広さは7畳位。車椅子で生活するのに丁度いい広さです。

 ベッド、机、タンス、袖机、エアコン、洗面台は備え付けてあります。

 テレビ、パソコン、プリンター、冷蔵庫、洋服ラック等は持ち込み可です。

 定員は、40名。これは高知県内最小の規模だそうです。

 私の部屋は南側に面した一室で、窓から正面に小高い山とその麓の住宅地が見渡せます。住宅地は区画数約350の区画整理されたものです。前方の山まで550メートル、住宅地までは250メートルありますが、その間に視界を遮る鉄塔などの野暮な障害物はありません。晴れて天気のよい日には、視界の半分以上に青空が広がり、鳶が~ぴぃーひょろー~と鳴きながら悠然と大きな輪を描いています。

 山の向こうはすぐ海、太平洋です。

 部屋の前はアスファルトのテラス(テニスコートの広さ)があり、その前方にはバレーコートほどの草地があります。

 テラスにはスズメ、四十雀、鳩、ムクドリなどが降りて来ますし、ホトトギズがどこかでケキョケキョと歌声を練習しています。

 窓からは、青い空、緑のグラデーションの山、近くの立木の枝葉のさざ波が自然と目に映ります。その景色を眺めていると時間の経つのを忘れてしまいます。

 ここは、私にとっては想像以上の環境で、この施設と巡り合ったことに幸せに感じています。入れていただいたことに感謝しています。

 以下に、この施設の特徴をまとめました。

 どうぞ、ご一読下さい。

<施設の特徴>

・定員が40名と少人数であること。

・自力では動けない重度障害者から私のような動ける者までが一緒に生活しているということ。

・重度の呼吸器障害などの難病の方にも対応できている施設であること。

・重度障害の方の居室及び浴室などに医療用の酸素が配管されていること。

・看護師が365日24時間勤務で対応していること。

・リハビリ室を備え、理学療法士・作業療法士の指導のもとで訓練を行うことができる環境であること。

・定時のチャイムはありません。朝も昼も夜もチャイムは鳴りません。

<食事とおやつ>

・現在はコロナ感染予防対策で、食堂で食べる人と部屋で食べる人に分かれていて、私は部屋で食べています。

・朝昼晩の3食プラス3時のおやつが供されるのが特徴で、毎日おやつが出てきます。

・食事は、美味しいの一言です。これまで千葉県の病院、高知県の病院、施設を多く経験して来ましたが、その中で一番美味しいですね。

オーソドックスな料理と味付けが変に凝ったりしてないからいいのです。刺身や納豆も通常メニューですからね、うれしいですよ。

・おやつは、コーヒーと日替わりの茶菓が出てきます。どら焼き、カステラ、バームクーヘン、栗まんじゅう、もみじ饅頭などなどです。

・食べ物、飲み物の規制、制限はありません。冷凍食品を買っておいてレンチンして食べるのもOKです。タコ焼き、ピザを冷凍庫に入れている人もいます。カップ麺を食べるのもOKです。

・週イチで移動販売「とくし丸」が来てくれます。

<入浴、そうじ、洗濯、散髪>

・入浴は週に2回。私は、月曜日と木曜日です。

①シャワードーム、②ストレッチャー浴、③シャワーチェアー浴と3種類の入浴方法があり自分に合ったものを選べます。

①シャワードームは、ストレッチャーに横になり、洗ってもらった後、シャワーが出るドーム状のカプセルに入れてもらいます。上から満遍なくシャワーがかかり温もります。

②ストレッチャー浴は、専用ストレッチャーに横になり、洗ってもらった後、浴槽に浸かります。ここの浴槽は独特で、たたみ一畳位の広さで深さ1メートル掘られていて、昇降台がせり下がる仕組みになっています。沈んで浸かります。

③シャワーチェアー浴は、シャワーチェアーに座って体を洗った後、浴槽に浸かります。

・そうじは、毎日各部屋までお掃除さんが入ってくれます。

・洗濯は、洗濯する汚れ物をネットに入れて所定の場所に出しておくと、職員が洗濯乾燥して、終わったら部屋に持ってきてくれます。 朝出しておくと夕方には戻ってきます。

・散髪は、出張理容があるので、月イチで利用しています。

<社会福祉法人 ミレニアムの理念>

人間(ひと)が人間(ひと)として 尊重される

それこそが 福祉です

ミレニアムはそのために 生まれました 

 人が人として尊重される、ということは極めて当たり前のことなのですが、敢えて施設運営主体ミレニアムの理念として掲げていることがミソなのだと思います。

 人は障害の有無によって差別されてはならず、差別してはならない。障害の軽重によっても差別されてはならず、差別してはならない。

 一人ひとりがこのことを肝に銘じて胸に刻み込んで、普段の言動に留意しなければならないのです。

 そして一人ひとりの行動にまで徹底しなければならない、ということなのでしょう。

 ここは訓練施設ではないので、訓練カリキュラムが決まっている訳ではなく、施設内の自由度はものすごく高いです。

 日中好きな時間にトレーニングできるのは私にとって好都合で、やりたいときにやって、やりたくないときにはしなくてもいいのです。

 一日中自室で読書してもいいし、テレビを観てもいいし、マンガを読んでいてもいいし、何をしてもいいのです。

 入所者のための日中活動というものが設けられていて、平日の15時から、ぬり絵、間違い探し、カラオケ、クロスワードパズル、ゲーム、映画鑑賞、体操、散歩等のどれか一つを毎日行ってくれています。参加は自由です。どれに参加してもいいのです。また、参加しなくもいいのです。

 ですから、比較的ゆるく穏やかに時が過ぎていきます。そこに幸せと喜びを感じるのです。

 建物の外周は250m。5周すれば1250m、10周すれば2500m。 最初は5周でやってみたんです。思いの外スイスイと1周3分30秒で漕げてました。2,3回は5周してまして、その後は10周に増やしました。35分くらい時間がかかります。水分摂りながら無理しないペースで漕いでます。

 施設入り口に坂道50mあるので、坂道ダッシュができます。やるとすれば、5回~10回ですね。天気が良ければやります。

 一人ひとりの障害者に向き合い、「人が人として尊重される」理念のもと、この施設は運営されているのだと感じています。

 ゆるやかな規制のこの施設にあっては、自己責任でやるもやらぬも自由だという運営の仕方は私にあっており、ここで存分に有意義な時を過ごすことができると信じています。

 私は褥瘡の手術で医療センターに入院していた時から、次は「アドレス・高知」に行くのだと考えていました。文章を書いたり、本を読んだり、映画を観たりをメインとする生活ができる施設、教習所に通うことの出来る施設を探していました。それが出来るのが「アドレス・高知」なのです。ここで生活することで自分が“活きる“ことが出来ると考えたからです。

 環境は大事です。雰囲気は大事です。雰囲気って、職員の態度・表情・声・話し方、同じ入所者の顔・声でだいたい分かります。

 職員から不満の声を聞くことはありません。若い職員が、キビキビ笑顔で働いている姿は尊いものがあります。

 ナースコールで呼ぶと、迅速に来てくれます。そして丁寧に対応してくれます。

 この例からもいい雰囲気であることが分かるでしょう。

 3ヶ月近く生活してみて、自分はまだまだ成長可能だと実感していますし、前進していくことができるでしょう。

 コロナ禍を脱して、外出ができるようになれば、教習所にまた通えるようになれば、より以上に成長できるはずです。

 近々そうなるのではないかと期待しています。

 そして、みなさまと再会して、元気な姿をお目にかけたいと考えております。

では、ごきげんよう。

弘瀬厚洋




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