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経験の浅いキャリアアドバイザーがする、転職者への誤った寄り添い方

転職って人生におけるそれなりに大きな節目です。

転職エージェントは、転職を支援するのが仕事ですから、転職活動の場面には数多く関わってきていますが、転職者当人はほとんど場数経験がないことが多いです。

さらには、転職中の心情も人によっては穏やかではありません。
離職中であれば、時に社会からの疎外感を感じてしまったり、あるいは収入面での不安があったりします。
現職中であっても、いまの仕事に身が入らなかったり、辞めたい気持ちが先立ったり、新しいプロジェクトを引き受けることに躊躇したり、転職活動を並行していて多忙で苦しかったりします。

そんな中で、人生におけるそれなりに大きな節目にあたるのですから、適切な判断を下せないことも容易に起こり得るわけです。


こんな事例がありました。
初めての転職活動をする50代のAさんは、第一志望に未経験分野の職種を選び、第二志望としてこれまでの経験が活かせる分野の職種を選びました。生活に余裕はあるので、そこまでお金は気にしておらず仕事内容を優先して次の会社を決めたいということでした。

第一志望の職種には、たくさん応募してみても書類選考が通過することはなかなかありません。たまに面接に進んでも経験不足が理由で落ちてしまいます。

目先を変えてみる思いで、第二志望の職種にも応募を始めたところ、とんとん拍子に2社から内定となりました。

ところが、その2社の内定への回答期日間近になっても、Aさんはまだ気持ちが決まらない様子です。

さて、キャリアアドバイザーとして、どう寄り添うべきか。


経験の浅いキャリアアドバイザーほど、寄り添うという言葉からひたすらうんうん話を聞いてあげることをやってしまいがちです。
そして、それが仕事だと思い込んでいるようにも見えます。

その場合の結末としては、本当によくあるケースとして「2社とも辞退して、やっぱり第一志望の職種での転職活動を続ける」というストーリーになりがちです。

転職活動を続けるということは要するに今のままですから、つまるところ変化がないということです。私の経験則から思うに、本当に迷いに迷ったときには変化のない選択を人はしがちです。本能的に安全な道を選んでしまうとも言えます。

転職エージェントですから、ビジネスとしては、転職してもらって初めて売上になります。
ただ、だから「転職しない」という決断を良しとしない、と言いたいわけではありません。

迷いに迷ったときに、ちゃんとそれぞれの選択肢について頭を整理してあげることができたか?、それによって少しでも理知的な決断ができるようなサポートが提供できたか?と言いたいのです。

もし、うんうん話を聞いているだけで転職者に寄り添えていると自己満足しているキャリアアドバイザーがいたとしたら、人生の大きな節目に際して提供するサービスとしては、とても物足りないです。


本来であれば、このケースではこんなサポートができそうかなと思います。

まずは、第一志望の職種を狙って転職活動をしてみた手応えを振り返る。意外と厳しいなという共通認識に落ち着くと想定。

第一志望にこだわる気持ちも受け止めつつ、第二志望の職種の良さも改めて捉え直す。例えば、経験職種だから、成果を出すのも早いし、評価もされやすいし、年収も得られやすいなど。

さらには、第二志望の職種での内定も、50代という年齢からなかなか簡単に得られるものではないと伝え直して、価値があるものだという認識を持ってもらう。

そして、一通り話し合ったところで、それぞれの選択肢の良いところや悪いところを整理します。

第一志望の職種の良さは、何より未経験で面白そうということ。ただし、内定獲得に至るかが不透明で少なくともあと◯ヶ月はかかることを覚悟しておかないといけない。
第二志望の職種の良さは、何よりすでに内定が得られている上に、馴染みがあって評価されやすい。あと未経験分野ではないにしろ、初めて違う会社でやる仕事なので多少の違いが実感できるのは面白さかも。悪いところとしては、第一志望と比較すると目新しさはない。

最後に、私ならどちらが良いと思うかを提案します。

「ここまでAさんのお話を聞くかぎりだと、どちらかと言えば今回は第二志望の職種での内定を受けたほうがAさんがご納得できる決断になる気がします。というのも〜」

さいごに。
こんなサポートも、迷いに迷って心を決めた後に提供しても意味はありません。迷いに迷ってる最中にこそ提供してあげることが肝要で、タイミングにも気を配ることが求められます。
転職エージェント、けっこう奥の深い仕事だと思うのです。

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