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たいさんと私を繋ぐお弁当

私は今、フリーランスだ。
そして旦那さんのたいさんはサラリーマンで毎日会社に出社している。

フリーランスとサラリーマンの送る毎日は全く違うものだ。
いる場所も、時間の使い方も、働き方も、働く時間帯も。
でも私は、私の日々の時間の流れこそが、本来の時間の過ごし方だと思っているし、川尻(私の苗字)家はいずれ、その時間軸で生活していくことになるだろうな、という予感がしている。

それは2人とも、明確に口には出さないけど、
なんとなくお互いの共通認識として持っているものだ。
願望、みたいなものなのかもしれない。

でも先ほど言った通り、
2人が過ごしている日々の時間は全く違うものだから、
下手したら私が先に行きかねないし、
たいさんが忙しさのあまり、ゆるゆると過ごす私に怒ることだってあるかもしれない。異なる時間軸で生活する2人の間に、摩擦は容易に起きてしまうと思う。

でも、なんだかうまくいっている。結婚して8ヶ月ほど経つけど、今のところ毎日のすり合わせがうまくいってるなーと感じる。
よく会話をしているとかもあるんだろうけど、他にも理由がありそうだな……

と考えていたら、お昼の手作り弁当がふと頭に浮かんだ。

たいさんは率先して私の手作り弁当を持っていきたがる。
例え弁当の中身が全て夕飯の残りだったとしても、彼は「全然いい。持っていきたい」という。
流石に申し訳ないから食べに行けば?と私が怯んでも、彼は持っていく。

私はお弁当を作ることが全く苦にならないし、むしろ体にいいものを食べてくれるのが嬉しくて、お弁当持っていってくれてありがとうと毎日思っている。
そして私もお昼に大抵、たいさんに弁当で持たせたおかずの残りを食べている。離れているし、違う時間軸の中にいるけど、お昼だけは弁当と弁当の残りがたいさんと私を繋ぐ。いつもそんな気分になりながらお昼を食べている。

だからお弁当は私たちにとっていいことづくめなんだけど、
そんな甘〜い話がしたいのではなく、
なぜ彼がここまで「お弁当を持っていくこと」に前向きなのだろうか、と疑問に思うことがよくあった。
(普通だったら買いたいとか外で食べたいとか言い出す場面でも全然言わないから……!)
なんか物好きな人だな〜と思ってたけど、そこに何か理由がある気がしてならなかった。

これに対する、私の推測。

彼はもはや「持ってかされてる」のではないか。
いろんな理由があって彼の意思で持って行っているように見えるけど、彼にはもうよくわからない力が働いて毎日お弁当持っていくようにプログラムされているんじゃないかと思うようになった。

彼が弁当を「持ってかされる」理由は、先ほどの2人の異なる時間軸をすり合わせるため。
2人が日中の大半の時間を全然違う世界の中で生活していても、心やビジョンが離れていかないように、なんか大きな力が働いて、2人に同じものを食べさせているような気がしている。

食べ物の力はすごい。食べ物の影響は幸せとか健康とかそういうところ以外の"無意識の部分"にも及ぶと私は思っている。例えば今回でいう、"異なる時間を生きる2人を繋ぐ力"とか。
だからこのお弁当に関するたいさんの行動は、私にとってとても興味深いものだった。

それがなんとなくいい形で(私にとって)答えが出てきて、私はやっぱりまた、お弁当を作れるのが嬉しくなった。

私たちは、お互いの時間軸を生きて学んだことや感じたことを毎日毎日擦り合わせて、
「お互い違う軸を生きていても、やっぱり本質は一緒のところにいるよ。さぁ、これから一緒にどう旅して行こうか。」そんなことを確かめ合いながら過ごしている。
もちろんそれは意識的にしている会話だけではなくて、共通の趣味で遊ぶこと、同じものを食べること、そしてお昼のお弁当も、その擦り合わせの一部になっているということだ。

それを思って私はなんだかとても安心した。
だいすきなたいさんを置いてけぼりにしないように、2人の感覚を擦り合わせながら生きていくための実践を日々できているんだな、と思った。

よし、このままいこう。

明日はどんなお弁当にしようかな。


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