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展示を終えて

「Tororo-10 vol.4」終了いたしました。
・2019年8月23日(金)〜25日(日)

ご来場いただいた皆様、また、言葉を交わしてくださった皆様、ありがとうございました。 会場に置きました2つ折りのキャプションの内容を記録して、展示のご報告とさせていただきます。



私の神様

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この組写真は、「生きる許可を得られる世界」をつくるところを撮影したもので“架空のセルフポートレート”作品群のひとつ、「畏怖」の続きになります。
私達には、生きる許可を取り続けなくてはならないという共通点がありました。2人共、自分が一番にならなければ生きる許可が得られない世界に生きていて、許可が得られない場合には、生きることを許されなくなります。

私達は死にたくないから、なんとかして許可を得ようとしてきました。何かを受賞したり誰かに一番と言ってもらえても、それは許可にはならなくて、何度も許可を取り続けなくてはなりませんでした。生きる許可は誰に与えられるものでもなく、自分自身が自分に対して与えるものだからです。本物の世界の中で私達はいつも、自分に許可を与えることができないでいます。

本物の世界で一番になれない、一番だと自分に言ってあげられないのであれば、自分が一番になれる世界ごとつくれば良い。とろろさんにとっては、偽物の世界をつくることが「生きる許可」を得ることの入り口になりました。今回の撮影では、その世界ができていくところを残すことにしました。

『偽物は、本物よりもやさしい。』

偽物は厳しくない。偽物は簡単です。偽物の世界であれば、新しい価値観をつくることも、例えばぬいぐるみに名前をつけて命を与えることもできます。現実では同じ型番の既成品のぬいぐるみでも、自分のつくった世界では唯一の、命を持った友達や家族になることもできます。そこに代わる同じ型番のぬいぐるみは存在できません。そんな時、偽物の世界にいる自分やぬいぐるみは本物の世界を超えているのではないでしょうか。

死ななくてはならない自分を過去から切り離し、未来に生きていくために。

とろろさんが「偽物の世界」の神様になるところ、世界をつくるところを記録しました。撮影地の養老天命反転地は、その名の通り天命(変えようにも変えられない運命)を反転する場所で、死にたくないという気持ちが形になった場所でした。私達にお誂え向きだなと、運命を感じずにはいられません。

いつも深い関わりで作品をかたちにしてくれる山掛とろろさん。特別な場面に立ち会わせていただきありがとうございました。
他に変わる人のない、私のミューズです。

                 2019.07.25 小山ひとき

#フィルムカメラ #フィルム写真 #写真展 #創作 #ポートレート

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