NHKの経緯説明に見られる荒唐無稽さ~ラジオ国際放送乗っ取り事件
先月発生した国際放送の事案について、NHKは当初「不適切な発言」としていましたが、「放送の乗っ取り」であることを正式に認めました。 9 月10日に公表された調査報告書には、例によって「にわかに信じがたい言い訳」が書かれています。
https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2024/20240910_1.pdf
特に気になったのは以下の箇所です。
まがりなりにも放送のプロが二人いるのに、「突然のことで対応できなかった」だなんて、あり得るんでしょうか? 音声を消したり、音楽を流して「しばらくお待ちください」としたりなど、定番の対処法があるのに、一切しなかった。直後に「おことわり」を入れることもなかったようです。
生放送なのだから不測の事態に備えて、職員の人たちが立ち会っているのですよね? こういう時に対処しないのなら、彼らがいる意味はない。最初にこの事件を知った時、「本当は誰も立ち会ってなかったんじゃないか?」とか、「その場にいたけど寝ていたかスマホを見ていたかで、ぜんぜん注意が向いてなかったのでは?」などと思ったのです。でも、少しずつ事情が明らかになるにつれて、実は現場の人たちがみなグルだったのではないか、という気すらしてきました。そうでも考えないと、NHKの言い分は荒唐無稽すぎて、つじつまが合わないのです。
「不適切発言」は一度ではなく、三回にわたってなされました。最初の発言の時に阻止しておけば、被害を最小限に食い止めることができたでしょう。その余裕は十分にあったと思われます。
①の直後に阻止すれば、②以降は防げたはず。もし、立ち会っていた二人の担当者が中国語を解さない人で、①での問題発言に気づかなかったとしても、③は英語での発言なのでこの内容はわかったのでは?
かりに担当二人が中国語も英語もわからないとしても、④で中国語のニュースを読み上げた別のスタッフなら、当該スタッフの中国語の問題発言を理解できたはず。別のブースにいたら気づかなかったでしょうけど。
このときのニュースは全部で9項目あり、問題が発生したのは8項目めでした。そこで打ち切りにせず、次のニュースも別のスタッフに読ませて、何事もなかったかのように番組終了まで持っていったとは……。理解に苦しみますね。あのようなアクシデントが起こってしまった以上、他のニュースはもはやどうでもいい。一刻も早く訂正とお詫びをするのが、最優先事項です。
問題発言のあったニュースが最後ではなく、最後から2番目であったことは、NHKの報告書を待つまでもなく、事件当日の産経新聞の記事にすでに書かれていました。
これを読んだとき、不可解さを感じました。「最後のニュースじゃなかったんだ」と。
8月23日の読売新聞の記事を見ると、当該男性スタッフの他にもう一人スタッフがいて、この人が最後のニュースを読んだことがわかります。
さらにこの記事からは、立ち会った二人の担当者のプロフィールがおぼろげに見えてきます。
一人は「中国語がわかる日本人職員のデスク」。NHKの報告書では「中国語班の基幹職のデスク A」とあるだけです。読売新聞の記事内容が真実であるならば、このデスクは中国語がわかるのだから、当該スタッフの発言内容を理解できたはず。
もう一人は「外部のディレクター」とあり、国籍不明、使用言語も不明です。NHKの報告書でも、「NHKが業務委託している外部ディレクター」と書かれているだけです。当該スタッフと同じく、業務委託先の子会社に所属している人でしょうか。
このうち少なくとも一人は中国語がわかるのだから、放送中に中国語で不規則発言があれば気づくでしょう。しかも、報告書によればこのディレクターとデスクは、放送前にニュース原稿の内容を巡って、当該スタッフとかなり激しくやりあっているのです。だとしたら、放送中のスタッフの挙動から目が離せないでしょうし、何かあったらすぐに動けるように心づもりをするでしょう。
そう考えると「突然のことで対応できなかった」という言い訳は、やっぱり変なのです。放送前にトラブルが発生し、その延長線上に「放送の乗っ取り」があると見るのが自然ですからね。「突然のこと」では決してなく、予測できた事態です。それでもなお看過したのなら、そこに作為があったと疑われても仕方がないですよ。
報告書には、「こうした事態を招いた背景には、NHKの危機意識の乏しさがあった」「放送中に不規則発言が出ることを想定しておらず」などとあり、迂闊さや備えのなさが原因であるかのように書かれています。でも、NHKの言い分をそのまま受け入れる気には、とうていなれないのです。
私がクロ現で捏造報道された時、NHKの人たちはつじつまの合わないごまかしと嘘で私を言いくるめようとしました。昨年5月のニュースウオッチ9の虚偽報道についても、「にわかに信じがたい」言い訳をして、BPOを呆れさせました。NHKは不祥事を起こした時に、たとえ故意にやったことでもあくまで過失で押し通そうとします。
今回の報告書に嘘やごまかしが含まれていても、何ら不思議ではありません。
いうなればNHKは報道内容だけでなく、存在そのものが「フェイク」なのです。嘘やごまかしで成り立っている。だから、不正や不祥事、虚偽・捏造報道がやむことはありません。世の中を混乱させ、国際社会での立場を危うくし、メディアへの政治的介入を許し、報道の自由を失わせる……それが私たちの国の公共放送の実態です。「放送の乗っ取り」事件のインパクトはとても大きいし、今後も尾を引くでしょう。
報告書の末尾には、「公共放送NHKの存在意義を揺るがす極めて深刻な事態」であるとして、対応策の徹底とガバナンスの強化、信頼回復を謳っています。でも、今までずっとそうであったように、これもまた空手形に終わるでしょう。再発防止策は絵に描いた餅で、ほとぼりが冷めれば忘れられてしまう。1,2年経ったらまた、超ド級の不祥事をやらかすのは目に見えています。
もはやNHKに自浄作用は望むべくもないのだから、別の方向からアプローチしなければなりません。NHKだけでなく私たちも本気で「対応策」を考えていく必要がある。
NHKの受信契約をしている人もそうでない人も、この国にいる以上はNHKの影響から逃れえないことが、今回の事件で明らかになりました。かつての私がそうであったように、「自分はテレビを観ないから、NHKがどうなろうと関係ない」ではすまされないのです。このような形で、誰もが等しく、NHKの報道によって被害をこうむるのだとしたら、ひとごとではいられません。
【追記】NHKは「外部スタッフ」「外部ディレクター」といいますが、業託先といっても数ある子会社の一つです。ことさらに「外部」というのはおかしい。自分のところの職員がやった、とは言いたくないのでしょう。
ちなみに、昨年の「取材メモ流出事件」では、流出させた人物のことを「NHKの子会社が契約している派遣スタッフ」としています。この件は興味本位で起こした情報漏洩として片づけられましたが、待遇その他に不満のある非正規労働者の内部告発ではなかったのかと、私は疑っています。今回の放送ジャックにもそういう側面がありますね。
NHKのような「一流の」大組織では、一般の職員が好待遇であるために、派遣や業務委託のスタッフとの差が大きいのではないでしょうか。だから不満がたまりやすいのかもしれません。
小さい会社でブラック気味なところだと、いわゆる「正社員」も悲惨な待遇で働いているので、バイトやパートや派遣との格差が較的小さいですけどね。
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