「騎手をしてるママと写真が撮りたい」
アルゼンチンにルクレシア・カラバハル(Lucrecia Carabajal)という女性騎手がいます。
ただの女性騎手ではありません。アルゼンチンの女性騎手通算勝利記録を持つ歴史的な人物です。
1998年2月にデビューしました。2016年7月、マリーナ・レスカーノ騎手が持っていた611勝というレコードを更新した直後に引退しました。カラバハル騎手の通算勝利数は613勝です。
引退後は母親業と調教師業に転身しました。2017年から自分の管理馬を走らせ、現在までに145戦16勝という成績をあげています。
しかし、引退から5年が経った2021年9月、カラバハルさんは騎手として復帰しました。復帰の背景にはとある理由がありました。
その理由を述べる前に、きっとみなさんが疑問に思うことを解決しておきましょう。それは「引退した騎手がそんな簡単に戻れるの?免許的にいいの?」という疑問です。
アルゼンチンには、日本から見れば特殊な形態の騎手免許が存在します。騎手&調教師免許というものです。
これは「自分が調教する馬に限り、レースでの騎乗を認める」という免許になります。
カラバハルさんが持っている免許もこれです。そのため、特別な許可を得ることなく、自分の管理馬でありさえすれば、騎手としてレースに参加することができます。
もちろん、5年のブランクを埋めるためのトレーニングは必要なので、そう簡単なことではありません。しかも、彼女は母親業をしながらですから。
では、ルクレシア・カラバハルさんはなぜ騎手に復帰したのでしょうか?
カラバハル騎手にはニーナという名前の娘がいます。そのニーナさんから「騎手をしているママとウィナーズサークルで写真を撮りたい」とお願いされたのです。娘の願いを叶えるため、彼女は復帰を決意しました。
2022年12月10日のパレルモ競馬場16R、カラバハル騎手は自分が管理する⑭ヴェギージョイ(Veggie Joy)に騎乗し、見事に逃げ切り勝ちをおさめました。6年ぶりの勝利です。つまり、女性騎手の最多勝利記録を6年ぶりに更新する614勝目をあげました。
レース後、ウィナーズサークルにカラバハル騎手の家族が集まりました。カラバハル騎手はニーナさんと写真を撮り、娘の夢を叶えることができました。
最後に、レースを勝った後のルクレシア・カラバハル騎手の言葉を載せておきます。
「騎手をしている私と写真を撮りたいというニーナの願いを叶えるために復帰しました。結構なレース数を乗りましたが、2着もあれば4着・5着が続いたときもあり、ニーナは写真が撮れないので不機嫌そうにしていました。今日は騎乗した最初のレースで2着になり、最後の騎乗で目的を果たすことができました。私たちにとって嬉しい瞬間となりましたが、おそらくニーナよりも私のほうが喜んでいるでしょう。ニーナのおかげで、昔のように喜びで胸がいっぱいになりました。これで614勝。でも、それはただの数字です。私にとって大事なのは勝利数ではなく、1日1日を大切にして、毎日ニーナと幸せでいられるように努めることです」
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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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