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日本の大地を踏んだスペイン産馬(超人気馬)がいる

2022年、追分ファームの吉田晴哉さんがキティーマリオン(Kitty Marion)というスペインの馬をタタソールズ社のセールで落札しました。繁殖牝馬として日本に来る予定だそうです。


スペインで走っていた馬が日本に来るというのは非常に珍しいです。なぜなら、スペインは競馬先進国ではなく、日本の生産者にアピールするような機会に恵まれないからです。

キティーマリオンはスペイン調教馬としてスペインで走っていました。ですが、スペイン産馬ではありません。イギリス産馬です。

さすがにスペイン産馬が日本に来ることはないか……

いいえ!

実は日本の大地を踏み、日本で種付けをしたスペイン産馬がいます。

話は40年前にさかのぼります。

1984年3月24日、スペインで1頭の牝馬が誕生しました。その牝馬の名前をテレーサ(Teresa)と言います。

父はレフィッシモ(Rheffíssimo)。スペインで大活躍し、イギリスのキングジョージにも出走したフランス産馬です。母のタカーラ(Takala)は1973年にスペイン最大の競走であるマドリードを優勝しました。

テレーサはスペイン競馬という狭い世界で見れば素晴らしい血統の持ち主かもしれません。しかし、世界的に見ればそれほど秀でた血統ではありません。

しかし、なぜかこのスペイン産馬がとてつもなく強かった。

1986年5月15日にマドリードでデビューすると、2歳時はグラン・クリテリウム優勝を含む4戦4勝と無敗。3歳時も4戦4勝と無敗を守り、スペインの1000ギニーにあたるバルデラスと、スペインのオークスにあたるベアモンテの牝馬2冠を達成しました。

スペイン国内で敵がいなくなったテレーサはフランスに向かいます。1987年のGⅠヴェルメイユ賞で5着になり、続くGⅠ凱旋門賞ではトランポリノの7着に入りました。

競馬人気のあまりないスペインにもかかわらず、テレーサはその圧倒的な強さから大人気の馬でした。ヴェルメイユ賞と凱旋門賞に出走するときは、2500人ものスペイン人が応援のためにロンシャン競馬場を訪れたそうです。

また、テレーサには1億ペセタ(※当時のスペインの通貨)=現在で約60万ユーロもの売却オファーが届いたそうです。しかし、馬主がこれを拒否しました。

テレーサは1988年9月25日にスペインのリカルド・ルイス・ベニテス・デ・ルーゴというレースを勝って引退します。引退後は繁殖牝馬になりました。


なぜこのスペイン産馬が日本に上陸したのでしょう?

1998年、テレーサの種付け相手に1996年の凱旋門馬エリシオが選ばれました。エリシオは1997年に社台グループによって購入され、日本で種牡馬入りしました。

というわけで、テレーサはマークエブエスティームとの仔を受胎した状態で、1998年に日本の白老ファームにやって来ました。1998年と1999年にエリシオと種付けし、1999年10月13日に帰国しました。

一時的ながら日本に輸入されて日本で種付けを行なったため、テレーサはJBISにもジャパン・スタッドブックにも登録されています。カタカナで表記された馬名にスペイン産を意味する(SPA)のコードがついているという、とても珍しい事例です。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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