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「崩れた輝き」

佐々木美佳は、部屋の隅に置かれた硝子細工の小さな鳥を見つめていた。その鳥は彼女の母が病床に伏す前、最後に手にしたものであった。美佳は幼い頃からその硝子の鳥を「守り神」と信じていたが、母の死をきっかけにその信仰は脆く崩れ去った。

母が亡くなった日、美佳はその鳥を窓辺に置き、太陽の光が当たる度に反射する色彩の輝きを楽しんでいた。しかし、その輝きは時間と共に鈍くなり、やがて何の感動も与えなくなった。母を失った悲しみと共に、彼女の心もまた硝子のように冷たく、脆くなっていった。

ある日、美佳は何かに突き動かされるようにその硝子の鳥を手に取り、固く握りしめた。柔らかい硝子の感触が手のひらに伝わり、心の奥に閉じ込めていた感情が溢れ出した。しかし、次の瞬間、彼女の手の中で鳥は粉々に砕け散った。美佳は驚き、手を開いて見ると、掌には細かい硝子の破片が散らばり、血が滲んでいた。

その瞬間、彼女は初めて母がいない世界の現実を受け入れた。硝子の鳥が砕ける音は、彼女の中で長い間鳴り響いていた感情の鎖を断ち切る音でもあった。涙が一筋、頬を伝い落ちると、彼女はその破片を慎重に拾い上げ、小さな箱に収めた。それはもう「守り神」ではなかったが、美佳にとって母との最後の繋がりだった。

硝子の鳥はもういない。しかし、その破片は、美佳の心の奥底で永遠に輝き続けることだろう。

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