健康保険を使った訪問マッサージ

「マッサージ」と聞くとどんなイメージが浮かぶでしょうか。

「気持ち良い」「血流が良くなる」・・・そんなイメージから、いわゆる慰安的な意味を思いうかべる方が多いのではないかと思います。

確かにマッサージの得意分野は筋肉を「ほぐす」「のばす」事です。マッサージを行えば筋肉はほぐれ、血流も改善され、心地よさを感じます。

しかし、医療現場におけるマッサージの役割は、その得意分野を使って慰安とはまた違った効果を狙ってのものになります。

まず、訪問マッサージは医療保険です。我々訪問のマッサージ師は患者様かかりつけのドクターより外出が困難な方を対象に「マッサージ同意書」を頂いて保険が使えるようになりますが、その対象となる症状は「筋麻痺」「筋萎縮」「関節拘縮」の三点です。

筋麻痺→何らかの理由で筋肉の機能が失われていたり感覚が鈍くなっている状態。

☆脳梗塞後遺症や脊髄損傷等、筋肉が麻痺してまった状態。実際に施術に廻っていても多いケースです。

筋委縮→何らかの理由で筋肉がやせる事。

☆筋肉そのものに原因がある筋原性(いわゆるミオパチー。筋ジストロフィーや多発筋炎等)、神経に原因がある神経原性(いわゆるニューロパチー。手根管症候群やALS等)廃用性(使わない事で萎縮する)といった種類がある。

関節拘縮→何らかの理由で関節の軟部組織(関節包など)が短縮し、関節が可動域制限を起こしている状態。

☆関節拘縮は廃用でも起きやすく、最も利用者様に多い状態。これにはマッサージに加え、医師が必要を認めた場合には「変形徒手矯正」という技術を用いて治療にあたる。

さて、今まで紹介したこれらの症状はすべて共通点があります。それは「自分では筋肉が動かしにくい、もしくは動かせない状態に陥っている事

筋肉は動かさないでいると拘縮を招きます。拘縮すると歩行や起居動作、さらには着替え等の生活上必要な動作にも影響が出てきます。つまり、ADLが低下してしまうのですね。

これらの症状の改善においてはもちろん「動かす」事が肝要になってきますが、動かす前にマッサージの得意分野である「ほぐす」という技術を間に挟むことでスムーズに筋肉を動かす事ができます。マッサージの技術を用いて慰安ではなく、一人の医療スタッフとして利用者様の筋肉や関節にアプローチし、ADLの改善につなげていく。それが訪問マッサージの役割といえます。

また、訪問マッサージは医療スタッフの1人としての役割があるため利用者様の体温、血圧、酸素飽和度といったバイタルチェックや部屋の温度、湿度は適正か、水分量はどうか等、利用者様が安全にお過ごしできるかという部分にも目を光らせ、何か気づいた点あればケアチームの一員としてケアマネさんや訪看や訪問ドクターといった医療分野の方にご報告を行ったりもする必要があります。

高齢者の方、障がい者の方、その方のお体に合わせて症状の改善を図っていく、やりがいのあるお仕事だと思います。



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