キレてしまえばいい

以前からプログで何度も書いてきたが
「霊というモノを必要以上に恐れる必要は無いし、逆に怖がることで霊の
悪戯心を刺激してしまったり増長してしまう結果になり反って恐ろしい
事態に発展してしまう事になる」
これはあくまでAさんからの受け売りなのだが、やはり霊というモノも元々は人間であり根本的な思考回路は同じなのかもしれない。
だとしたら自分を怖がっている相手には強く出るだろうし、怖がっている様が滑稽でより強く怖がらせようとしてくるのも道理が通る。
しかし、Aさんが以前から言っている様に、怖い気持ちを我慢して強気に出る事で怪異は怪異でなくなるのかもしれない。
今回はそういう話だ。
上田さんには弟さんがいる。
弟さんは実家暮らしであり、弟さんの部屋には父親の実家から持ち込んだ仏壇が置かれていた。
弟さんが住んでいる部屋にわざわざ仏壇を持ち込む事は考えにくいし、さすがにそんな事になれば弟さんもそれなりに拒否するだろう。
だからきっと仏壇が置かれている部屋しか空いておらずその部屋に弟さんが間借りしたと考えた方が良いのかもしれない。
実は俺も母方の実家に帰省した時にはいつも仏壇が置かれている部屋で寝泊まりしていた。
時に怪異も起きなかったし逆に仏壇が置かれている事で安心して眠れていた様な気さえする。
だから、その時、弟さんが体験した出来事も運が悪かっただけ、なのかもしれない。
弟さんがその部屋で寝ていると必ず深夜になると部屋の外から足音が聞こえてきたという。
そして、その足音は玄関や窓を開ける音すら立てる事も無くそのまま部屋の中に入って来くる。
その時には既に弟さんの体は金縛りに遭いピクリとも動かせない状態になっており眼すら開けることが出来ない。
ただ耳だけはしっかりと聞こえており部屋の中へ入ってきた足音はそのまま弟さんの寝ている上を通って何処かへ吸い込まれる様にして消えていく。
朝になってようやく金縛りから解放されると弟さんはその足音が何処へ消えていったのか、が何となく理解出来たそうだ。
それは仏壇だった。
外から部屋の中に入ってきた足音が自分が寝ている上を通って仏壇の中に吸い込まれる様にして消えていく。
一体誰が・・・?
いや、それは間違いなく生きている人間ではなく幽霊に違いない。
そんな風に考えるのはいたって当たり前の事だ。
そう考えると流石に恐ろしくて仕方なくなった。
何度も寝る部屋を変えてもらおうとしたが他に部屋は空いていない。
弟さんはそれからも同じ怪異に耐えながら朝を迎えるしかなかった。
どんなに早く眠っても真夜中には必ず足音が聞こえてきて眼が覚めてしまう。
そして、それからは一睡も出来ずに恐怖に震えながら朝が来るのを待つ。
そんな夜が毎晩の様に続いた。
そんな夜が続いていれば睡眠不足にもなるし精神的にもかなり追い詰められていくものなのだろう。
いつしか弟さんの怒りが恐怖心を凌駕してしまう。
そして、その夜もいつもの様に外から近づいてくる足音と気配で眼が覚めた弟さんは制御の利かない程の怒りで頭の中が満たされていた。
足音は部屋の中へ入って来て寝ている上を通り過ぎていく。
その瞬間、弟さんは大声で叫んでいた。
いい加減にしろよ!
それは自分でも驚くほどの大きな声だったし大声が出せたという事だけで恐怖が一気に消し飛んだのも感じていた。
金縛りもすっかりと解けており、足音もすっかり聞こえなくなっていた。
弟さんは久しぶりにゆっくりと朝まで熟睡することが出来たそうだ。
そして、もう1つ。
大声で怒鳴った夜以降は、足音も気配も全く感じなくなった。
弟さんは霊に対してマジ切れする事で快眠を勝ち取ったという事になる。
兄である上田さんに
霊に言ってやったぞ!
と鼻息荒く自慢する弟さんの姿を上田さんは遠い目で見るしかなかったそうだ。
その後、弟さんが大物になったかどうかは分からないが、霊とはきっとそんなモノなのだろう。
人間もそうであるように自分より弱い相手には強く出るし、自分より強そうな相手には近づかない。
霊だって元々は人間だったのだ。
だから霊も人間も同じなのだ。
必要以上に怖がる必要は無いのである。
 

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