スナッフビデオ

これはブログの男性読者さんから寄せられた話になる。
彼は若い頃から所謂グロ画像やグロ動画というものに興味があったそうだ。
以前はそんなものばかりを探し海外サイトをウロウロしていたらしくそういう
画像や動画というのは初めて観た時のインパクトが堪らなかったそうだ。
怖いもの見たさでおっかなびっくり画像ファイルや動画ファイルを開くと
一瞬血の気が引く程のショックを感じられた。
それが病みつきになってつい集めてしまった画像や動画もある時パソコンの中に
保存しておくのが気持ち悪くなり全て処分した。
そんな彼が最近ハマっているのがスナッフビデオというものらしい。
スナッフビデオというのはご存じの方も多いと思うのだが、人が殺される
一部始終を収めた動画。
俺も何度か無理やり見せられた事があるがとても最後まで正視出来るものではなかった。
そして、とある動画を観たのを最後に二度と観ないと心に誓った。
それ程までに俺の心にトラウマを刻み付けた動画だった。
しかし、彼はそうではないという。
手に入れたスナッフビデオは全て最後まで観て、更に何度も繰り返し再生する
というのだ。
勿論、それには理由がある。
実は世の中には本物のスナッフビデオは存在しないと言われている。
どんなに凄惨な殺しが映されていようとそれは全てまがい物。
つまり意図して作られたフェイク動画だという事だ。
だから、彼はスナッフビデオの中に残されている映像編集やエフェクト処理を
見抜くのが何より楽しいというのだ。
しかし、本当にそうなのだろうか?
かつて俺が無理やり見せられたトラウマ級のスナッフビデオは明らかに固定カメラで
カメラを回しっぱなしにして繋ぎ個所など一つも無い動画だった。
だとしたら、本物のスナッフビデオはこの世に存在しているのではないのか?
つい俺はそんな風に考えてしまうが、彼にはそんな俺の意見は通じなかった。
時間と解析ソフトをケチらなければ必ずスナッフビデオの中にフェイクだと断定
出来る箇所が存在している。
ずっとそう思っていたそうだ。
ある1本のスナッフビデオを観るまでは・・・。
その動画は部屋の床に不自然に置かれた録画状態のビデオの静止画からスタートする。
部屋で遊んでいた少年の元へ母親がやって来て何かを指摘し注意している。
まあ、きっと遊んでばかりいないで勉強をしろ!とでもお説教しているのだろう。
しかし、その少年は母親を適当にあしらって部屋から出て行かせるとまたゲームに
没頭しだす。
すると、母親がまたやって来て少年を叱責する。
そんな事を何度か繰り返した後、突然その少年がキレたらしく部屋の中に置いてあった
金属バットで母親の頭を殴る。
最初に頭を殴った瞬間は映されてはいないがグワンッという鈍い音と共に母親が
床に倒れ込み、その顔がビデオカメラにアップで映される。
一瞬、意識を失っていた母親が目を覚まし少年に懇願する。
助けて・・・助けて・・・。
その言葉が更に少年に火を点けてしまったかのように何度も振り下ろされる金属バット。
一度振り下ろされ金属バットが母親の顔にあたる度に大きく破壊されていく母親の顔。
最初は手足をバタバタさせている音が聞こえていたがそのうち顔が痙攣したように
プルプルと震えだす。
それでも執拗に振り下ろされる金属バットは母親の顔を次第に単なる肉片へと
変えていく。
そういう内容である。
そして、何故俺がこれほど細かくその動画について書けるのか?と問われれば、
何を隠そう俺が観てトラウマになったスナッフビデオが彼が言うそのビデオそのもの
だったからである。
しかし、彼が言うにはそこからはもうスナッフビデオではなく明らかなる怪異
なのだという。
顔の皮膚が裂け、千切れつぶれ、眼も破裂し陥没したただの肉片になった後しばらく
母親の顔はビクリとも動かない時間が続いたそうだ。
すると次の瞬間、その母親はビデオカメラを手に取って立ち上がり自分で撮影しながら
今度はその少年の顔を両手で潰していく。
バットもナイフも何も使わず自分の両手だけで・・・。
しかし、ビデオに映り込む動画は何度も手ブレし明らかに母親が手で持っている
事を証明している。
それでは、その両手は一体何なのか?
誰の手だというのか?
そして、少年の顔を潰し動かなくなった少年を部屋に残して母親は部屋から出て行くそうだ。
ヨタヨタと壁に当たりながら・・・。
そんな状態で動ける事自体が常識では考えられないし、何より母親は完全に顔が
潰されているのだ。
そうして玄関ドアを開けて外の様子を写し出した時点でその動画は停止し終了する。
そして、彼が何度も確認した結果によるとその動画には編集した跡もエフェクト処理を
した跡も見つからなかったという。
アレは明らかに本物です・・・。
彼はそう言ったが、その時点で俺はこう彼に返した。
それは俺が観た動画とは後半が全く違います・・・と。
俺が観た動画は確実に彼が観たものと同じなのだろう。
それは細かい部分での一致点があまりにも多すぎるから。
しかし、俺が観たその動画では顔を完全に潰されてビクリとも動かなくなった母親の顔
のアップが延々と続いていた。
そして、動かなくなった母親を観て部屋から逃げ出していく少年の足音もはっきりと
聞こえていた。
だとしたら彼が観たその後半部分は一体何なのか?
殺された母親が生き返って息子に復讐した?
いや、金属バットで何度も力任せに叩かれた母親は顔が潰れていただけではなく
頭も割れて完全に脳みそが飛び散っていた。
だとしたら死んだ母親が何かに体を乗っ取られ操られたのか?
その動画が英語圏の動画だったのだから悪魔にでも乗り移られたというのか?
いや、かつてAさんに聞いた事がある。
悪魔も悪霊も馬鹿ではないから死んだ者には絶対に憑依しない・・・と。
だから、それが何なのか?は俺には皆目見当もつかないが、どうやら俺はその動画の
本物、いや裏バージョンを観なくて良かったと心底感じている。
どうやら彼がその動画を観てしまってからというもの、彼の部屋が昼夜問わず
叩かれるというのだ。
ノックなどではなく、ドンドンと叩かれるそうだ。
恐ろしくてドアを開けて確認した事は無いそうだが、そんな彼は俺にこんな質問を
してきた。
ドアを開けて確認した方が良いんですかね?と。
そして、俺の答えは勿論「NO」だ。
彼はきっと観てはいけない領域まで観てしまったのだろう。
だから、もしかしたらその母親が彼の元にやって来ている可能性が高い。
殺した少年と一緒に・・・。
そんな相手には居留守を使い続けるしかないのかもしれない。
相手が何なのか?が分からない以上、打てる手建など無いのだから。

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