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英語の上達のためには、質より量?

英語習得に必要な時間

英語を習得するためには、大量の英語に触れる 必要があります。

「そんなこと、おまえに言われなくてもわかっとるわ!」と怒られそうですが、この当たり前の事実が正しく認識されていない気がします。そのことが、僕たちの英語上達への道を必要以上に複雑にしていて、楽をしたい心につけ込む安易な商材(「簡単に話せる」「〇〇日でペラペラ」みたいなの)を生んでいるように思えてなりません。

では、「大量の」って、具体的にどれぐらいなのでしょう?

一般的には 3,000時間 と言われています。

よく引き合いに出されるのが、アメリカ国務省のこのデータ。アメリカの外交官たちが、仕事で使えるレベルの日本語を習得するのにかかる時間(授業時間)が、平均2,200時間と書いてあります。

外交官ともなれば超エリートですし、実際には授業外での自習時間も必要でしょうから、私たちのような一般的な日本人が英語を上達させるのに必要な時間は、もう少し多く見積もって3,000時間ほどだろう、ということです。

いや、もっと多くて 5,000時間 はかかる、といった主張もありますが、これは「習得」の定義にもよるでしょう。ここでは、英語を流暢に話せるレベルにもっていくために3,000時間 をいったんの目標ラインとします。

日本人の英語学習時間は?

これに対して、私たち日本人は、いったいどれぐらい英語を勉強してきているのでしょうか。

平均的なカリキュラムでは、中学、高校の6年間で約780時間、大学を入れた10年間で1,000~1,200時間だそうです。これに自宅学習や受験勉強の分を加算できますが、授業をサボったり寝ていた時間(私の高校・大学時代であれば80%ぐらい)は引かねばなりませんので、まあいいとこ1,000時間ぐらいでしょうか。(習ったことが、ちゃんと身についているとして、です)

よく、「10年も勉強してきたのに全然英語が話せない」とか、「日本の英語教育は、文法や英文和訳ばかりだから上達しない」と言われますが、数字で見れば明らか。必要量の1/3程度しかやっていないのですから、内容をとやかく言う前に、できなくて当然と考えなければなりません。

もちろん、「質」の改善が不要と言うつもりはありません。僕も、インプット偏重の日本の英語教育には問題があると感じていますし、より良い教材や勉強法を追求することは大切です。

ただ、それらは全て、必要な量を確保する前提での話であって、量が決定的に不足している中で質を多少良くしても効果は知れていると思います。スポーツの世界で考えるとわかりやすいかもしれません。たとえ世界一の名コーチに指導されたとしても、基礎練習やトレーニングに膨大な時間をつぎ込むことなしに、一流になれる人はいないでしょう。

厳しい現実ですが、まずはこの事実を直視することが、英語上達への正しいステップになるのではないでしょうか。

複数言語をあやつるヨーロッパ人たち

先ほどのアメリカ国務省の資料では、日本語は、中国語、韓国語、アラビア語と並んで、アメリカ人にとって最も難易度が高い "super-hard languages" にランク分けされています。

これが、英語と言語体系の近いフランス語、ドイツ語、スペイン語だと、必要時間は600-750時間。ヨーロッパでは、2、3ヵ国語を流暢に話す人が珍しくありませんが、私たちが英語に2,200-3,000時間かけている間に、彼らは軽く 3、4ヵ国語をマスターできる計算なので、決して才能の違いではないということです。

ヨーロッパとアメリカが世界を支配し、ビジネス、学問、医療など、あらゆる分野の公用語が英語を始めとするヨーロッパ言語になったことで、私たち日本人はとてつもないハンディを背負ってしまいました。いつの時代も、ルールを定めたものが強い、ということかもしれません。

などと、歴史を嘆いていても仕方がないので、世界を相手に戦うために、当面の共通言語である英語を、正しい覚悟と努力で身に着けたいものです。

最後に

追い打ちをかけるようで気が引けますが、3000時間は、英語との闘いにおける第一歩に過ぎません。何事も一流になるまでには1万時間が必要とも言われるように、「何年も頑張ってきてこのレベルか」と、事あるごとに自分の成長の遅さと、越えるべき壁の高さに絶望します。

これだけの労力が必要となると、いっそのことテクノロジーの発達に賭けて、その時間を別の分野に投資する戦略もありかもしれません(うちの息子たちはイギリスで幼少期を過ごしたため、幸運にして英語には困らずにすみそうなのですが、彼ら世代になると英語が差別化要因にならない世界も、現実味を帯びてきます)

それでも僕は、多くの回り道をしながら英語に膨大な時間を費やしてきたことを全く後悔していません。むしろ英語学習は、僕の人生において最もリターンの大きかった投資だったと確信しています。

日本にいながらにして、良質な英語にいくらでも触れられる恵まれた時代。投下しなきゃいけない時間もなんとなく理解できた。やるか、やらないか、後はあなた次第です。ではまた!(中田あっちゃん風)

<参考記事>


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