40歳で海外転職した話 ⑦
前回の続きです。
ついにシンガポールでの最終面接に呼ばれました。息子たちには余計な心配をかけないように出張だと説明し、週末+有休で2泊3日の弾丸ツアーです。
シンガポール
人生初のシンガポール航空(世界一のサービスとも言われますが、個人的には日系の方が好きです)に乗って、人生初のシンガポール入り。
第一印象は、蒸し暑い・・・。
暑いのはともかく、湿気が多いのが嫌なのでこれはマイナスポイント。ただ、街の景観は思ったよりも緑が豊富で好印象でした。もっと無機質な高層ビル群を想像していたのですが、実はシンガポールはガーデンシティとも呼ばれ、緑化にとても熱心だと後で知りました。
先方が取ってくれたホテルは、金融街とチャイナタウンの間にある5つ星。モダンな外観で高級感抜群です。こちらをいい気分にさせるための策略に違いありません。入社後にこんな待遇が得られると思ってはダメだと気を引き締めますが、久しぶりの海外ということもあって否が応にもテンションが上がります。
翌日、まずはオフィスを見学させてもらいました。これは僕からのリクエスト。グローバルな保険会社とはいえ、日本に拠点がなくアジアでの事業規模もそこまで大きくないため、事務所やそこで働く社員の雰囲気を見ておきたかったのです。
案内されたオフィスは、金融街中心部の高層ビルのワンフロア。マリーナ湾越しに有名なマリーナベイサンズ(屋上に船がのっているホテル)が臨める抜群のロケーションでした。さすがアメリカ系、これはやられる。
すっかり良い印象を受けたところで、いったん解散。トップが出張中のため、最終面接は僕が泊っているホテルのラウンジで夜に実施とのことでした。
最終面接
いよいよ最後のステップ。先方は、アジアパシフィック地域の社長、直属の上司になるアジアの責任者、人事担当役員の3人です。
主に先方トップからの質問に答える形で、面接とはいいながらドリンクを飲みつつカジュアルな雰囲気で進みます。
きかれたのは、自分の生い立ち、キャリア観、なぜ転職を考えているのか、日本ビジネスを拡大する上で欠かせないポイントなど。シニアマネジメントだけあって、人となりや価値観にフォーカスした内容が中心でした。
後で聞いた話ですが、彼は同社のアジアパシフィック事業を一から立ち上げ、以降20年以上トップを務め続けている人でした。本人はオーストラリア人ですが、欧米とアジアをミックスさせたアットホームな社風を作り上げ、それを守ることに心血を注いできたそうです。この面接は、カルチャーフィットを見極めるための最終チェックでした。
その後、ホテルのレストランで一緒に夕食をとる流れに。「もう面接は終わりだからリラックスして」と言われましたが、ボロが出たらまずいので気は抜けません。折角の機会だったので、アジアパシフィックにおける戦略や経営課題について、色々と質問しました。
驚いたのは、先方のアジアに対する見識の深さ。前職時代に東京、香港で働いたことがあるとのことで、日本を含む東アジアの国々の文化や国民性について熟知していました。
欧米企業のシニアマネジメントの中には、アジア事情を勉強しようともせずに腰かけ感覚で地域統括会社に赴任してくるような人もいます(日本人が海外駐在する場合も要注意ですね)。彼のような人がトップであれば、きっとアジア人にとっても働きやすい環境だろうと安心できました。
食事が終わり、先に社長を見送りました。アジアの責任者から、「あの表情であれば試験は合格だろう。吉報を届けられると思うので、ぜひ前向きに考えておいてほしい」との一言を受けて、解散となりました。
異国の地で感じた高揚感
翌日、帰国便までの時間を使って街の様子を見てまわりました。
その最中、雑然とした街並みをあてもなく歩いているとき、何ともいえない懐かしい感覚にとらわれました。日本人がひとりもいないアメリカの大学に留学した初日に感じた、あの高揚感です。
一人旅が好きな方には理解してもらえるかもしれませんが、僕は異国の地にひとりで立っていると、すごくワクワクします。見たことのない景色や様々な国籍の人たちに囲まれていると、「あー、自分はいまひとりの人間としてこの地に立って生きてるんだ」と実感するのです。
「これは、やっぱり挑戦するしかないんじゃないか」
そんなことを考えながらシンガポールを後にしました。
いよいよ、決断のとき迫る。
To be continued...
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?