すべてのサービスをユーザー目線に。サービスデザイン徹底のために都庁ではじめたこと
東京都では、都民の皆様によりよいサービスを提供するために、「サービスデザイン」を徹底する取組を進めています。
今回は、担当職員へのインタビューなどを通じて、都庁がサービスデザイン徹底のために取り組んでいることについてご紹介します!
そもそも「サービスデザイン」とは?
「サービスデザイン」は、企画・開発段階から、都民の方など、利用者との対話を徹底することで、要望や期待に沿ったより使いやすいサービスの提供を目指す取組です。つまり、サービス提供者の視点でデジタルサービスを作るのではなく、最初から最後までユーザー側の視点に立ち、サービスの企画・開発・提供・改善などを実施していくことです。
「サービスデザインガイドライン」策定に込めた想い ~担当者インタビュー~
すべてのデジタルサービスでサービスデザインを実践していくため、「シン・トセイ3」では、新たなコアプロジェクトのひとつとして、「サービスデザイン徹底プロジェクト」を掲げました。
このサービスデザインの考え方を全庁に浸透させていくための起点として、2023年3月に「サービスデザインガイドライン」を策定し、取組を進めているところです。
今回は、担当の中村さんと芦川さんにガイドラインに込めた想いやポイントをお聞きしました!
ガイドライン策定に至った背景は?
【中村さん】
これまで都庁では、デジタルサービスを各局がバラバラに作っている状況で、サービスの水準や品質管理が統一されていませんでした。そのような状況を変えて、ユーザーに寄り添った質の高いサービスを都庁全体で実践していくためにまず策定したのが、「デジタルサービスの開発・運用に係る行動指針」です(令和5年3月改訂)。
この指針では、デジタルサービスを設計する際の「価値観」と、それを具体化する「作り方」を職員全員で共有することで、使いやすく満足度の高いサービスを生み出していくことを掲げています。
このうち、「価値観」にあたるのが「デジタル10か条」です。
「デジタル10か条」については以前の記事で特集していますので、詳しくは以下をご覧ください。
【中村さん】
そして、「作り方」に当たるのが「ガイドライン」です。
「サービスデザインガイドライン」は、「デジタル10か条」で掲げる「#1顧客視点でデザインしよう」の考え方や手法を具体化したもので、UI/UX(サービスの使いやすさやユーザー体験)の領域についてまとめています。
どんなことが書いてあるの?
【中村さん】
ガイドラインでは、サービス企画段階からユーザー視点を徹底することを目的として「東京都サービスキャンバス」の使い方や活用方法について記載しています。これは、スタートアップ企業でもしばしば使用される「ビジネスモデルキャンバス」(事業内容のアイデアを整理するためのフレームワーク)を都庁版にカスタマイズしたものです。
この「東京都サービスキャンバス」を都庁すべての職場で活用することで、課題や目的を整理し、顧客視点でデザインすることを目指しています。
【中村さん】
「都庁の業務フローに沿ったガイドラインを作る」というのが一番苦労したポイントですね。私は民間から転職してきたのですが、都庁には独自の仕事の進め方やルールもあります。それに合わないものを作っても、上手く使ってもらえないかもしれないと思いました。
そこで「東京都サービスキャンバス」を作れば、上司への説明や仕様書にも使えるなど、業務との「接続性」を大事にして作成しました。この1枚で事業の説明は成り立つので、究極的には忙しい幹部にエレベーター移動中の時間でも事業説明できるような、というと言いすぎですが(笑)、それくらい簡潔で役に立つシートを目指して作りました。
どうやって活用していくの?
【中村さん】
現在都庁では、「プロジェクト監理」という取組を進めています。これは、デジタルサービスを開発する際、プロジェクトを一元的に監理・経過を記録していくもので、今年度から開始しているのですが、この中の一要素として「東京都サービスキャンバスの作成」が含まれています。そのため、デジタルサービスを新しく開発する場合「東京都サービスキャンバス」の作成が必須となっています。
【芦川さん】
私たちはガイドラインを都庁全体に浸透させるために、「知る」「理解」「活用」というフェーズに分けて取り組んでいます。
まず、「知る」についてですが、ガイドラインの存在を一人でも多くの職員に知ってもらうため、デジタルサービス局HPへの掲載はもちろん、雑誌等の取材やこのようなnoteを通じて積極的に発信しています。
次に、「理解」についてです。サービスデザインについて勉強したいと思っていても、日々の業務に追われて学ぶ時間が持てない職員も多いと思います。そのため、職員向けのeラーニングでは、職員が取り組みやすいようにレクチャー動画の作成を検討中です。また、職員の方がつまずきやすいポイントを、丁寧に解説する方針で取り組んでいます。
最後に、「活用」のフェーズでは、サービスキャンバスを作成した事業担当者とのディスカッションやワークショップの開催などを通じて、職員がよりサービスキャンバスを使いこなし、有効に活用できるようになることを目指しています。
【芦川さん】
大事なのは「ガイドラインをつくること」ではなく「都庁全体にサービスデザインの考え方が浸透していくこと」なので、そのためにできることをどんどんやっていきたいと思います。
また、「サービスデザインガイドライン」はつくって終わり、ではありません。ガイドラインを適用しながら事業を進める中で、もちろん今のガイドラインでは足りない部分も出てくると思います。私たちもそれこそサービスデザインを徹底して、見直しやブラッシュアップも進めていきます。
【芦川さん】
まずはサービスデザインが浸透し、すべての職員がユーザー目線でサービスを作り上げるようになること、それによって都民サービスの質(QOS)が向上することが第一だと思います。
また、「東京都サービスキャンバス」は課題の抽出や解決策の検討を後押ししていくものなのですが、様々な観点から検討が必要なため担当者一人で完成させるのは困難です。いろいろな人と議論を重ね、試行錯誤していくことが結果的によりよいサービスにつながると考えているので、「東京都サービスキャンバス」が都庁内のコミュニケーションツールのひとつになればいいなと思います。
都庁に「サービスデザイン」を根付かせるために
ガイドラインは作ることが目的ではなく、職員が内容を理解し、実践していくことが重要です。担当の中村さんもインタビューの中で、「この新しいガイドラインが都庁の中でどこまで理解されるか不安な面もあった」と語っていましたが、説明会を何度も行ったり、サービスキャンバスを初めて書く職員にも具体的なステップ、記載のイメージが伝わるよう「サービスデザインガイドラインの手引き」という動画を作成するなど、浸透に努めてきました。
このような取組を通じて、ユーザーに寄り添ったサービスを企画し、高品質なサービスを提供することがオール都庁で「あたりまえ」となることを目指しています。
とはいえ、都庁全体にサービスデザインの考え方を浸透させる取組は始まったばかりです。「東京都のデジタルサービスは使いやすい!」と感じていただけるよう、今後も全庁を挙げてサービスデザインに取り組んでいきます。