見出し画像

東京の「異次元」のスタートアップ戦略~未来を切り拓く10x10x10のイノベーションビジョン~

本日11月24日、スタートアップとの協働を進める都庁のワンチーム"Team Tokyo Innovation"発足から3か月、スタートアップと交流する「出島」を設置しているCIC Tokyoで、東京都は新しいスタートアップ戦略を発表しました。

その名も、「Global Innovation with STARTUPS」

この戦略では「10x10x10のイノベーションビジョン」を掲げました。

私たちはこれから「異次元」のスタートアップ戦略を展開し、このビジョンの実現に「本気で」取り組んでいきます。

Team Tokyo Innovationの発足から「3か月」という行政としては異例の速さで、かつ、「11月」という異例のタイミングで出したのは、スタートアップのスピード感に追いつき関係者全員でいち早くビジョンを共有したいという思いからです。

策定過程も行政としては異例でした。
チーム発足当時、私たちは「行政だけで考えるのではなく、スタートアップと一緒に考えます」と宣言しました。その言葉を実践し、行政が作り上げたものを提示するのではなく、アイデア出しの段階からスタートアップ、アクセラレーター等の関係者、有識者、経済団体、そして、新たに選任した「スタートアップ戦略フェロー」のみなさまとともにフラットに議論しながら、作り上げました。

このnoteをイベント当日に書いているのも、スピード感をもって、このビジョンを共有したいからです。

本日のイベントでは、小池知事、宮坂副知事と、戦略に助言をいただいてきた藤本フェロー、名倉フェローが参加したクロストークを行いました。

今回のnoteでは、本日のイベントの様子とあわせ、この戦略について解説します。

■なぜ、東京都は「異次元」のスタートアップ戦略を展開するのか?


イベントでは、まず小池知事より「Global Innovation with STARTUPS」についてプレゼンしました。この戦略について簡単に解説します。

スタートアップは世界の変革と成長を牽引し、生み出されたイノベーションは社会課題の解決につながっています。世界では今、国や都市を挙げてエコシステムを創り出しています。

一方、日本のスタートアップ数は米国と120倍の差があり、グローバルスタートアップ・エコシステムランキングでは、東京は昨年から順位が下がって世界12位、アジアでも、北京、上海、ソウルに次ぐ4位となっており、成長スピードの差も拡大しています。

また、18歳の若者に向けた意識調査では、日本における「自分の行動で国や社会を変えられると思う」とする割合は26.5%で、6か国中最下位に沈んでおり、アントレプレナーシップ(起業家性)を応援する文化も、GEMのスコアで47か国中44位と低くなっています。

かつて世界最高の成長を実現した日本の競争力は、過去30年間で1位から34位まで低下し、長らく日本の社会に閉塞感が漂っています。このままの状況が続くと、日本は経済的に没落し、豊かな生活が成立しなくなる恐れがあります。今抜本的に取り組まないと、世界に追いつけなくなる。

強い危機感のもと、東京が中心となって、挑戦者が希望を持って活躍できる社会を実現し、行き詰まった世界に役割を果たすため、今までとは次元の異なるスタートアップ戦略を展開することにしたのです。


■目指すビジョン~10x10x10のイノベーションビジョン~

「異次元」の戦略を展開していくため、スタートアップのみなさまと共に目指す「未来を切り拓く10x10x10のイノベーションビジョン」

まずは縦の軸、「グローバルx10」です。
「Global Innovation」と銘打っているように、戦略は「世界」を見ています。起業時から世界を見据え、世界市場にスタートアップを数多く輩出していきたいと考えています。指標として、東京発のユニコーン数を5年で10倍を掲げました。

次に横の軸、「裾野拡大x10」です。
東京を舞台にスタートアップの「裾野」を広げていくことも重要です。実現したいのは、人々が自分の頭で考え、失敗を恐れず、多様性を認める学びから起業家性を育み、起業等にチャレンジしやすい社会です。指標として、東京の起業数を5年で10倍を掲げました。

最後に奥行の軸、「官民協働x10」です。
グローバルx10、裾野拡大x10となったイノベーションを生み出すスタートアップの力は、行政が取り入れてこそ、新たな成長を呼び込み、様々な社会課題を解決していくことができます。指標として、東京都の協働実践数を5年で10倍を掲げました。

これら「10x10x10」を通じて、スタートアップのみなさまとともに様々な社会課題を解決し、東京、日本、そして世界の未来を切り拓いていきたいと考えています。

■3つの軸


こうしたビジョンを目指し、3つの軸を立てました。

(1)まずは「Born Global」です。最初から日本国内市場だけをターゲットとするのでなく、「グローバル市場」で大きく飛躍するスタートアップを数多く生み出すことを目指しています。

(2)次に「東京の強みを活かす」です。東京は企業、大学・研究機関が集積し、豊富なステークホルダー、多様な人材が交流、海外からの注目も大きいなど、スタートアップが育つ「ポテンシャル」があります。こうした強みを最大限活かし、スタートアップを育てていきます。

(3)最後に「多様なプレイヤーとの協働」です。都内ではアクセラレーター、ベンチャーキャピタル、大企業など国内外の様々なプレイヤーがスタートアップを支援しています。「モチはモチ屋」です。スタートアップを「応援」する多様なプレイヤーの活動を私たちが「応援」することで、世界に挑むスタートアップの頑張りを引き出していきます。

「10x10x10」のイノベーションビジョン実現に向けて、「Born Global」「東京の強みを活かす」「多様なプレイヤーと協働」の3つを軸として、関係者が一丸となって、次の4つの戦略を進めていきます。

Ⅰ 世界最高にスタートアップフレンドリーな東京にする
Ⅱ 誰もが夢に向かって羽ばたける土壌を作る
Ⅲ あらゆる関係者が"ワンチーム"で強力にサポートする
Ⅳ 世界を視野に戦略的に発信する


■私たちは何をするのか?ー4つの「新たな取組」


次に小池知事、宮坂副知事とスタートアップ戦略フェローでクロストークを行いました。

小池知事から東京都がこれから取り組む4つの「新しい取組」について紹介し、そのことについてディスカッションをしました。

(1)"Tokyo Innovation Base"構想

東京を「世界最高」に「スタートアップフレンドリー」な都市にすること。そのためには、スタートアップや起業希望者が交わり、挑戦し、イノベーションを生み出す、そんな「場づくり」が重要です。

フランスでは「SUの悩みの90%は、他のSUが解決策を知っている」を理念に一大スタートアップ支援拠点「Station F」が整備されており、短期間で多数のユニコーンを輩出しています。こうした「場づくり」として、"Tokyo Innovation Base"構想を立ち上げました。

(2)海外VC・アクセラ誘致の仕組みを構築

また、スタートアップが「Born Global」で海外市場で展開していくためには、大規模な資金調達が必要です。そのため、海外VC・アクセラ誘致の仕組みを構築することでグローバル展開を実現していきます。

(3)起業の"魅力"を伝える刺激的な体験

グローバル化が一層進み、社会の課題が複雑化する現在、「誰もが夢に向かって羽ばたける土壌」を作っていくためには、「アントレプレナーシップ(起業家性)」は、もはや狭い意味での「起業家」にだけ必要な概念ではなく、企業人、公務員を問わず、これからの社会を支えるあらゆる人材に必要な能力である、と私たちは考えています。

日本では「他人との違いを恐れず個性を発揮する」「多少のリスクが伴っても新しいことに挑戦する」という意識が他国より低いという結果も出ています。そこで、高校生が起業家に出会う機会を充実させ、都立大学で本物の起業を体験できる講座を開設するなど、起業家性を醸成していきます。

(4)スタートアップの自由な発想を都政の現場へ

さらに、スタートアップとの「協働10倍」を実現するため、「行政がスタートアップのファーストカスタマーになる」という方針で、SUからの提案を積極的に受け入れるなど、公共調達の拡大も盛り込みました。

藤本、名倉両フェローからは「今回の戦略の策定過程では、東京都のスピード感と熱量がすごく伝わってきました。ここで聞いているみなさんの想像の10倍の速度で一緒になって進めてきました。これからこの戦略を具体的に進めていくために私たちも協力していきたい。」といった嬉しいコメントをいただきました。


■波状的に取組を展開していきます


10x10x10のイノベーションビジョンを実現するためには、東京都だけでなく、様々なプレイヤーが力を合わせ、取組を推進していく必要があります。

スタートアップ支援の関係者がコミュニケーションを深め、目標を掲げながら取組を実践し、進捗を透明化することにより「フィードバック」をみなさまからいただき、施策をブラッシュアップし、戦略を「バージョンアップ」させていく。

そうしたサイクルを生み出す「キックオフ」として、12/5(月)にスタートアップの関係者が集う「スタートアップ・エコシステム・サミット」を虎ノ門ヒルズフォーラムにおいて開催します。

さらに、2/27、28には、「Sustainable High City Tech Tokyo」(略して「SusHi Tech」)をコンセプトに、スタートアップとのオープンイノベーションで持続可能な社会を実現するグローバルイベント"City-Tech.Tokyo"を、30か国、100都市から10,000人参加を目指し、東京都として初めて開催します。

このようにスタートアップを盛り上げる取組を波状的に展開するとともに、令和5年度予算や都庁の基本計画である「未来の東京」戦略に反映させ、関係者が一丸となって取組を実践していきます。


■挑戦者に向けて


イベントで小池知事は「スタートアップの製品をとにかく試してみようの精神で都政の現場にどんどん実装していきたいと考えています。また、東京には多くの大学が集積しています。そうした大学と連携し、たくさんのスタートアップを生み出していきたいと考えています。」とコメントしました。

また、この日は高校生のピッチイベントも開催されており、会場に来ていた高校生に対し「どんどんチャレンジして未来の東京を一緒に作り上げていきましょう」とエールを送りました。

この戦略について、ぜひみなさんからもご意見をお寄せください。

最後に「Global Innovation with STARTUPS」の冒頭に記載したTeam Tokyo Innovationからのメッセージをお届けしてこのnoteを終わります。

* * *

いつの時代も、新しい何かを生み出すのは挑戦者たちです。

芸術、社会活動、探検、スポーツ、学問。あらゆる分野で、創造的破壊によって、社会は前進していきます。

私たちは、全てのジャンルで挑戦者を必要としています。挑戦者が減った社会は、活力が失われた社会です。

ビジネスの挑戦者はスタートアップを立ち上げ、新しいものの見方・考え方、革新的なテクノロジーやアイデアで新しいサービスを創造し、社会の課題を解決し、雇用を生み、経済を活性化して世界に貢献しています。

東京が再び世界の中で輝きを取り戻すために、私たちは挑戦者をたくさん生み出し、応援し、失敗した人をリスペクトし、そして世界中の人が日本で挑戦したり、東京の挑戦者が世界に羽ばたくのを全力で応援していく。

東京を、挑戦者が生まれ、世界から集まり、そして挑戦者を応援する都市へ

「Global Innovation with STARTUPS」はこちらをご覧ください。

* * *

(追記)スタートアップとのオープンイノベーションで持続可能な社会を実現するグローバルイベント"City-Tech.Tokyo"を初開催しました!