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悪役を分析してみる。vol.1 クッパ

映画・ドラマ・漫画・ゲーム…あらゆる娯楽において不可分の存在である"悪役"…
今回は彼らをクローズアップするコラムを書いてみた。

今回は、ゲーム界最初にして最大の悪役、"クッパ"を分析してみる。

○概要

マリオシリーズお馴染み、「カメ軍団」の棟梁たる巨大カメ型モンスター。

黄色と緑の皮膚に赤い髪に日本のツノ、トゲ付きの甲羅に鋭い爪を供える立派な怪獣のテンプレ的容姿である。モデルは「西遊記」の牛魔王、または古典的怪獣のガメラであると言われている。

マリオが赤ん坊の頃に同じくベビークッパとして登場しており、意外にも同い年に近いと思われる。(ヨッシーアイランド)
因みに似た立ち位置のドンキーと違って、"二代目"などではないみたい。

因みにカメは爬虫類であり急激な温度の変化には弱い、はずなんだが、彼らが溶岩地帯に本拠を構えていることが多い理由は不明。
まぁ雪山でも火山でもノコノコ達も元気だし、あの世界のカメは恒温生物なのかも。

○戦士として

  • 高温の炎を吐く能力

  • 体躯を活かしたパワフルな肉体

  • 奥の手の巨大化

などなど、パワー系悪役として十分と言える身体能力を有する。
実際、ゲーム中でもマリオはフィジカルで大魔王に敵うはずもなく、大抵クッパ自身が用意したギミックを駆使して立ち回るハメになる。
油断が足元を掬う点も悪役として満点。

そんな脳筋のイメージが強いクッパだが、初期作品の頃は「キノコ王国の民をブロックや背景に変えてしまう魔法を駆使し、唯一それを解呪できるピーチ姫を誘拐した」というインテリ要素もあったりした。
今や死に設定と化した…かと思いきゃ、Newマリオのときなんかは「溶岩に落ちて骨だけになった(=肉も内臓も蒸発した)にも関わらず(独力ではないにしろ)復活する」という離れ業を成した辺り、魔術的能力も未だ健在と思っていいだろう。

そうでなくても専用の飛空艇を乗り回したり、武器を使いこなしたりと「粗中に細あり」のクレバーな大魔王像は、任天堂の中にまだ健在なんだろう。

○戦略家として

初期の「3」のころから、「マリオ兄弟と正面から当たっては分が悪いので、周辺諸国に侵略して兄弟を救援に向かわせ、ガラ空きになったキノコ王国に侵掠してピーチ姫を攫う」という、中々賢い兵法を扱っている。

そうでなくても、クッパ氏は悪役特有の「油断が足元を掬う」お約束から大分遠い。
基本的な侵掠プランについても

  • 占領地には総督府(城)と前哨基地(砦)をセットで建設し、反攻を未然に防ぐ手立てをとっている

  • 信頼できる子飼いの重臣に重要拠点を任せる(ワールド、NewWii)

  • カメ軍団直属だけでなく、敵国からの降伏者や現地の生物も柔軟に戦力に取り入れる

  • 本拠地をはじめとした拠点には溶岩を主とした危険なトラップを多く仕掛け、侵入者に対しても入念な対策を講じている

  • 時には軍の飛空船を派遣して、又は自ら飛空艇で出撃し、敵の油断を突く

と攻守ともに入念な対策を講じており、自身がイニチアシブを取り続けんとする戦略家としての一面も垣間見える。
戦力の逐次投入という愚を犯している点はご愛嬌

マリオストーリー」ではこの戦略家としての一面が強く意識されている。

  • のっけから「ピーチ城の地下からクッパ要塞を築き上げ、城諸共上空に浮上する」という完璧なまでの奇襲を披露

  • 星の国の「スターの杖」を駆使し、対策の取りようもないままマリオを初見殺しする

  • 倒したマリオにも油断せずに杖の力で上空から叩き落とすという入念で殺意MAXの仕打ちを敢行

  • 部下たちに小まめに偵察・報告を行わせ、情報戦でも優位に立とうとする

  • 最終戦、星の精によりバリアが無効化されるも、即座に強化マシンを発動させて逆転する

と、緩い絵柄ながら「流石大魔王」と頷きたくもなる、周到で狡猾な策略を取り続ける。
「歴代最強のクッパは誰か」という話題になったら、まず間違いなく上位に躍り出るであろう。

ただ、最近は本人は完璧でも部下のうっかりで戦略が崩れたり、前線を任せられる部下が減ってきて子供や自分が出張らざるを得なかったりと、苦労している面も見受けられる。
大魔王といえども組織の忠誠管理は一筋縄ではない、ということか。

○指導者として

組織をまとめ上げるリーダーとしては「寛大」なタイプであると言われている。
この属性が付いたのは「マリオRPG」で勝手に退団した(≒脱走した)部下たちに暖かい言葉をかけているあたりからついたのだろう。

本人の「器」の大きさについては作品によって変わってくるものがあるのだが、ガノンドロフやキングクルールが平然と行っている「しくじった部下の処断」に手を染めているシーンは確かに見られない。

目に余る怠慢や失態を犯したものに怒鳴りつける事は度々あるとはいえ、組織の指導者としては「甘い」一面があることは否定できない。

ただ、そのおかげで構成員の多くから慕われており、長年の敗北にも関わらず深刻な分裂や反乱が起こっていない事は特筆に値する。

また、殆ど議論される事はないが(当たり前だ)「敗北からの復活」にかけては史上類を見ない程の天才であることも忘れちゃいけない。

  1. マリオたちにどんなにこっ酷くやられても(溶岩に落とされても)命を落とさないタフネス

  2. ボロボロになった自分を率先して助けに行く部下たちの信頼・忠誠

  3. 悲惨な敗戦においても心折られずに捲土重来を志すメンタルと覇気

  4. 損耗した戦力を迅速に回復する潤沢な資金・資源

  5. 幾度もの敗北に関わらず部下から見捨てられず、一定規模の戦力を保ち続けるカリスマ性

これほどの艱難辛苦を乗り越え、現実世界でも数年のスパンで同規模の侵攻を繰り返せる才能は、ゲーム界にも殆ど見られない傑物である。

同じ「大魔王」のガノンドロフが、大抵世界征服の一歩手前まで迫りつつも、なんやかんやの内に手札の全てを失い、勇者に完膚なきまでに打ちのめされ、結果数百年もの雌伏を強いられる羽目になっているのを見ると、クッパ氏の「引き際のスキル」は目を引くものがある。

歴史を見てみても、「王」たるものの最大の才能は「逃げる」事なのかもしれない。

○教育者として

親としては、「みまもりswitch」で子供の情操教育に苦心する子煩悩としての一面が有名なクッパ。実際倅のクッパJrがワガママ盛りなあたり父親としてはかなり甘々なところがあるのは確か…ではある。

だが一方で、彼は子供や親族に対して「後継者」としての教育も怠らない男である。

実際、先述した「重要な拠点を任せる重臣」には大抵子供のJrか、親族?のコクッパ7人衆を任命している。拠点の防衛だけではなく、場合によっては飛空船を貸し出して各地の侵攻を一任、一定の戦果を上げさせている。

身内人事の誹りを受けることもあるが、彼ら子世代は父親譲りのタフネスや魔法の経験、ハイテク技術の駆使など戦力として十分期待できる若者たちである。
むしろ、実力を的確に判断した上で重役に任命していると言えるだろう。

意外だが、ギャラクシー2においてはクッパJrがら「これ以上失敗したら大目玉喰らう」と言っているあたり、信賞必罰も贔屓することなく公平に施している様である。
可愛い子供たちをも甘やかすことなく、出来うる限りの経験や実績を積ませようという、覇王ならではの親心が垣間見えるだろう。

まだまだ、ワガママゆえの失態や部下との衝突も多いのだが、今後の子世代の成長にも期待が持てるだろう。(?)

○最後に

今回は、「マリオシリーズ」の不朽の悪役、クッパを対象に「悪役」の分析をしてみた。
かなり擁護よりの内容ではあると思うけど、本ブログではなかなか見れない内容に仕上がったと思う。

こうして見ると、「悪役」としてはなかなか有能だな、クッパ様…。ピーチ姫にガチ惚れしている憎めない一面が有名だけど、そういうスキがなかったらマリオたちが抵抗できないっていうことなのかも……。

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