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北海道の良いところ、悪いところ


0.はじめに

北海道に住んで30年近く経つ。住んでいる間、ほとんど他県へ出かけたことがない。修学旅行で2回行ったほかに、今年個人で2回、計4回しかない。
だから私の視野はどうしてもガラパゴス的になりがちという欠点はあると思う。
ただ、それでも今回初めて本州に足を踏み入れたことで、曲りなりにも「比較」できるようになったのは確かだ。
そこで今回は、北海道の良さ・悪さを列挙し、今後どうするのが良いか、考えたい。


1.良いところ

(1)自然が豊か、見晴らしが良い

日本は全体的に自然が豊かなので、これは北海道の専売特許ではない。ただ、面積が広いこと、近代化の歴史が本州と比べると浅いことから、未開の地、景色が開けていて見通しが良いところが多いのは間違いない。だからこそ、ライダーの聖地でもあるのだろう。
札幌も中心部はビルばかりで味気ないが、郊外へ行けば自然はそれなりにある。中島公園、モエレ沼公園などが代表だろう。
最果ての地ともなれば別格で、根室だとまるでヨーロッパの牧歌的な草原のような風景が広がる。まさに「母なる大地」といったところか。

ただし、これには注意点がある。外資系の企業に土地を買われ放置されたり、風車やメガソーラーの設置によって景観が荒らされている。先日紹介した熊本のメガソーラーのような景観破壊が始まっているのだ。美しい景色を守るのか、それとも目先の金のために売り渡すのか、道民の魂が試されている。

(2)残暑が(本州よりは)きつくない

温暖化の影響で北海道も暑いが、9月になればだいぶ気温が下がる。9月になっても30℃を平気で超える地域よりは残暑がきつくないといえる。というか、残暑もきついのなら冬はしんどい、夏もしんどいで地獄のような環境になる。さすがにそれはご勘弁だ。


2.悪いところ

(1)クルマ至上主義社会

「良いところ2つだけかよww他にあるだろww」と突っ込まれそうなので、一応それに答えておこう。
まず、よく言われる「食べ物がうまい」だが、正直「言うほどか?」という感じ。日本は海と山に囲まれて自然豊かなので、全国的に食べ物は美味しいはずだ。このへんはよくわからない。
次に「人がおおらか」という点について。たしかに、そういう傾向はあるかもしれないが、地域差はある。農村では有力者に媚を売るなど閉鎖的な風土だったりする。このへんは本州のそれと何ら変わりない。短絡的なイメージを抱くと幻滅する可能性があるので、一応注意換気として。

閑話休題。
北海道はクルマ社会すぎる。その原因として、都市間距離が異様に離れていることが挙げられる。
たとえば、札幌-旭川 140km、帯広-釧路 120km、旭川-稚内 250kmなど、とにかく遠い。距離感覚がおかしくなってくる。そのくせ人口密度が低いので交通機関の採算性が悪くなり、クルマが横行しているのだ。
その結果どうなるか。
交通事故が多発する。広くて見通しが良い道路が多いうえ、のんびり走っていると目的地に着かないので高速並みのスピードで飛ばしている。はっきり言って危ない。
運転マナーも悪い。制限速度で走っているとガンガン煽られる。まあこれは他の県も同じかもしれないが、とにかく自動車に魂を売った感がすごいのだ。歩行者は完全に邪魔者扱い。「俺様の快適なドライブを邪魔するな!脇によけておとなしくしてろ!」というわけだ。
まあ、どっちが本当におとなしくすべきか、よく考えるべきだが。


(2)列車本数が少ない、運賃が高い

人口密度が低い、道路が高規格、除雪などのコストが高くつく、といったトリプルダメ押しにより、北海道の鉄道は列車本数が少なく、運賃が高くなっている。
特にひどいのは宗谷本線の名寄以北で、特急と普通を合わせても8往復とか、特急が停まらない駅なら3往復といった具合だ(そりゃ観光客もレンタカー借りるわ)。
まあ、私のような秘境駅ファンにはそうした過疎ダイヤも魅力的ではあるのだが、不便なのは間違いない。
私は高速バスが好きではないので、長距離移動は鉄道を使うが、こだわらない人なら安いバスを使うだろう。そうなればますます運賃収入は減ることになる。なかなか難しいところだ。

(3)雪がしんどい

雪国だから仕方ないのだが、それでも大雪で列車は止まるわ、道は歩けんわ、除雪はしんどいわ、となると文句の1つも言いたくなる。除雪は単調かつ重労働で、正直しんどい。太平洋側は降雪量が少ないが、日本海側と山は多い。札幌は地区によってかなり違う。東区、北区はかなり降るし、吹雪も強烈だ。岩見沢から北になると豪雪も豪雪。大変だ。もっとも、この雪が解けて水となり、野菜や米をおいしくする、という効用もあるのだが。


3.不便という名の利点

こう書いてくると、北海道という地域が、住みにくい街では?と思えてくる。たしかに、冬は過酷な環境だし、利便性が高い地域でもない。
「じゃあ移住すれば?本州ならあんたの好きな鉄道にたくさん乗れるぜ?」
という声も聞こえてきそうだ。
たしかに、その通りだ。
日本全国を旅したいなら、交通の発達した東京や大阪に住んだほうが効率的だ。北海道は最果てなので、どこ行くにも遠い。そうしたハンデはある。

ただ、実はこの不便さにこそ北海道の良さがある。それが振り分けと旅情だ。
先述したように、北海道の冬は厳しい。雪も降るし、寒い。つまり、誰でも気軽に住める場所ではない、ということだ。そうなると、東京や大阪に移住するよりはるかにハードルが高くなる。人の移動が活発であればあるほど、変質者が入ってくるリスクも高まるので、それを抑制するフィルターとなるのではないか、というわけだ。
もちろん、現代では移動が手軽になったし、北海道にも悪人はたくさんいるので、このフィルターがきちんと機能しているのかは疑問だ。それでも他の県と陸続きではないことから、危険人物の流入可能性も多少は下がっているだろう。
もっとも、そのせいで視点がガラパゴス化しやすいという欠点はあるかもしれないが。

次に、これは沖縄や離島にも言えることだが、陸続きでない=海を渡る必要がある、というのはそれだけで旅情を醸し出す。今年青森と秋田に行ったが、青森から秋田に着いたとき、県境を越えたこと自体に旅情は感じられなかった。県境はあくまで政治的に決まるからだ。
しかし、海はそうではない。海は地理的、物理的な隔たりであって、この境は人為的なものではなく、自然的なものだ。
つまり、これを越えることはまぎれもなく違うエリアに行くことに他ならない。だから、行くときも、帰るときもそのことだけで旅情が感じられるのだ。

たしかに、東京なら飛行機も新幹線もバスもある。どこへでも素早く行ける。
しかし、それはあくまで目的地と一直線に結ばれているだけで、「県境を越えた」ことによる旅情はあまりないのではないか、と思う。トンネルや橋、山は乗り物から見えるかもしれないが、自身の身体感覚として「越境する」という感覚はなかろう。北海道は行き先がどこだろうが、越境の情を味わえる。ただし、飛行機の場合それは薄れる。点と点を結ぶだけだからだ。私が飛行機を好かない理由のひとつはそれだ。
このように考えると、スピードという観点からは敬遠されがちな「船」こそ最も旅情豊かな乗り物だということができる。新幹線も飛行機も速いだけで無機質。はっきり言ってつまらないし、窮屈だ。旅を日常からの解放と考えるならば、より開放された船のほうが適した移動手段となるだろう。


4.おわりに

というわけで、北海道の良さ、悪さを語ってみました。
過酷な環境ではありますが、それでも祖先が住み続けたのには何か理由があるのでしょう。単に故郷に帰れなかっただけかもしれませんが、雪解け水が作物を美味しく育てることなど、メリットもたくさんあったのでしょう。
それに、過酷とはいえ住めば都みたいなところはあったりします。他の所に移住して上手くやれるかはわかりません。好き嫌いは別として、もう馴染んでしまったというのもありますし。
「隣の芝は青く見える」と言いますが、地元の悪さはよく見え、良さにはなかなか気付かないものです。他県に住んだことがないので詳しい比較はできませんが、どんな地域にも良さはあります。
それを見つけることが、第一歩だと思います。
みなさんも地元の良いところを探してみてください。できれば10個くらい。
「好きじゃないけど、悪くもないか」
と思えたら上出来です。
それでは。


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