マガジンのカバー画像

特殊設定恋愛小説

31
「特殊設定」を取り入れた恋愛小説。 少し不思議な恋愛小説をまとめてみました。
運営しているクリエイター

2022年7月の記事一覧

【連作短編】一つの願いを叶える者 第六話 お気に召しましたでしょうか?

第六話 お気に召しましたでしょうか? 「容姿を変えたいというのが、貴方の願いですか?」 新島絵里の前で、白い靄でできた人が首を傾げるようなしぐさを見せた。 「そう。だって、私、顔は大きいし、目は小さくて一重だし、鼻は丸いし、唇は分厚いし、いい所なんてどこにもない。」 「すみません。私には人の美醜というものが分からないのです。私は、貴方の顔にいい所がないなどとは思いませんが。」 「ダメなの。とにかくダメ。私の顔をモデルのように綺麗にしてほしいの。」 「モデルのように・・で

【連作短編】一つの願いを叶える者 第五話 私を呼んでください。

第五話 私を呼んでください。 手にたくさんのレジ袋を下げて、誰もいない自宅に戻る。一人で住むには、この2LDKのマンションは広すぎた。 ダイニングテーブルにレジ袋を置いて、中に入っていた数多くのタッパーを取り出した。タッパーの中には、俺の婚約者である遥の母親が作った総菜が詰まっている。帰り際に、家で食べるように持たされた。 きっと、すごく気を遣わせてしまっているんだろうな。 タッパーを冷蔵庫にしまう。冷蔵庫には飲み物以外はほとんど入っていなかったから、タッパーを全て入

【連作短編】一つの願いを叶える者 第二話 貴方は選ばれました。

第二話 貴方は選ばれました。 よく眠れない。 頻繁に夢を見る。たまに悪夢。そして、夜に目が覚めてしまう。 更年期障害の症状の一つ。女はよく聞くけれど、男にも更年期障害は発生する。ホルモンの減少に体が付いていけずに出る。 病院にかかって、薬は飲んでいるものの、そう簡単に治るものでもない。 だから、最初それを見た時、俺は夢を見ているんだと思った。 夜中に目が覚めてしまって、喉の渇きも覚えたので、キッチンの流しで白湯を飲んでいた時の事。暗い部屋の中央に、白い靄のようなものが見え

【連作短編】一つの願いを叶える者 第一話 願いを一つ叶えましょう。

第一話 願いを一つ叶えましょう。 「貴方は選ばれました。貴方の願いを一つ叶えましょう。」 私の目の前で、人の形をした白い靄が、腕を広げて言った。 ここは私の自宅で、もう寝ようと、ベッドに横になった時だった。 部屋の中央に白い靄が見えた。私の目が疲れているのかと、瞼をこすってみたものの、その白い靄は徐々に大きくなり、最終的には人の姿になった。 それは、男なのか、女なのかも、よく分からなかった。 体のラインを拾わない服を着ているように見えて、体を見ても性別の判断はできなかっ