R5司法試験再現 民訴法(評価:C)

本答案では、第1設問3、第2設問2、第3設問1の順に回答する。
なお、民訴法は法令名を省略し、条文番号のみ記載する。
第1 設問3 
1 課題1について
XのZに対する保証債務履行請求訴訟において、甲債権の存在を認めた前訴確定判決に基づく何らかの拘束力が作用するか。
まず、前訴確定判決の既判力が作用するかについて検討する。
既判力とは、前訴判決の訴訟物について生ずる通有性ないし拘束力をいう。
そして、既判力は訴訟の当事者について生じる(115条1項1号)。
もっとも、Zは前訴においてYに補助参加した者に過ぎず、前訴判決の「当事者」にはあたらない。そして、その他各号該当性も認められないことから、Zに前訴判決の既判力は生じない。
また、客観的範囲についても、保証債務は甲債権を主たる債務とするものではあるが、両者は別個の債権である。したがって、客観的範囲についても、前訴判決の既判力はXのZに対する保証債務履行請求訴訟について及ばないと解される(114条1項)。
では、前訴確定判決の反射的効力が作用しないか。
反射的効力とは、確定判決の結果、それと関連する別の訴訟についても影響を及ぼす効力をいう。このことからすると、甲債権の存在について前訴確定判決があることから、XのZに対する保証債務履行請求訴訟において、Zは甲債権の存在を争うことはできないように思える。
もっとも、反射的効力は、以下の理由から否定されている。
まず、民事訴訟においては、判決効の相対効が認められている。
そして、あくまで訴訟上の権利が確定するのであって、訴訟の勝敗によって実体法上の権利が直ちに影響を与えるものではない。
よって、前訴判決確定判決に基づく拘束力が、XのZに対する保証債務履行請求訴訟に作用することはない。
2 課題2
ZのYに対する求償請求訴訟において、前訴確定判決の効力が作用するか。
Zは前訴において、Y側に補助参加をしていることから、YZ間に参加的効力が生ずる結果、甲債権の存在を前提にZはYに対して参加的効力を援用して、求償を請求することが認められるかが問題となる。
46条のいう参加的効力とは、当事者間の敗訴責任の公平な負担という趣旨から、既判力とはことなり、理由中の判断にも及ぶものと解されている。
上記趣旨からすると、補助参加人の側から被参加人に対して参加的効力を援用することも許されるというべきである。
そして、甲債権の存在は理由中の判断であるから、当該判断に参加的効力は生じる。
よって、ZのYに対する求償請求訴訟において、前訴確定判決の参加的効力という拘束力が生じる。
第2 設問2の課題について
控訴審においては、判決の変更は控訴人の不服申し立ての範囲においてのみすることができる(不利益変更禁止原則、304条)。その趣旨は、不利益変更がされるとなると、控訴人にとって不利な判決がされるリスクから、控訴をためらうことになりかねず、控訴人の控訴の利益を図る点にある。したがって、(ア)~(ウ)の心証通りの判決ができるか否かは、控訴人にとって不利益変更にあたるか否かから判断される。
1(ア)について
Xは、乙債権についての弁済の事実が認められない点が不服であると考えられている。
甲債権が弁済により消滅したとなれば、そもそも本件訴訟は棄却されることとなる。
このことは、Xが全面敗訴することとなるから、不利益変更にあたる。
よって控訴審裁判所は、Xの控訴を棄却する判決をするべきである。
2(イ)について
丙債権の存在が認められないとなると、丙債権と乙債権との相殺は認められないこととなる。
そうなると、乙債権は消滅しないこととなる。もっとも、乙債権の存在を認定する点で、Xにとって不利益変更といえることから、不服申し立ての範囲を超えるものといえる。
よって、控訴審裁判所は、Xの控訴を棄却する判決をすべきである。
3(ウ)について
乙債権が弁済によって消滅したと判断することは、Xの不服の申し立てに直接かなうものといえる。そうなると、甲債権と丙債権が相殺適状になることとなるが、この部分については原判決と抵触することとなる。もっとも、控訴審裁判所は甲債権と丙債権が相殺適状にあり、相殺できるかという点について心証形成をしていない。
このことから、控訴審裁判所は、原判決を破棄して、一審に差し戻しをする判決をすべきと考える。
第3 設問1の課題について
224条1項は当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。と規定し、
2項は、当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とすると規定している。
このことは、証明を妨害することについて、妨害した結果認定できなくなった事実を妨害者に不利に認定することを容認する規定であると解される。
このことから、当事者間の公平を害し、かかる不法・不当な目的・手段で証拠を収集した場合には、本件文書の証拠能力を否定するべきであると考える。
本件についてみると、YはたまたまXの家に呼ばれて放置されていたノートパソコンから電子メールを送信したにすぎず、Xの家に侵入したり、Xのノートパソコンに不正にアクセスをして送信したというわけではない。
また、ノートパソコンにはパスワードを設定するなどして、第三者が利用することを防止する措置を講ずることはできたはずであり、これをしなかったXには落ち度があるといえる。
したがって当事者間の公平性を害し、不法・不当な目的で証拠を収集したということはできない。
よって本件文書の証拠能力は認められる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?