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人を分かりたい天使 #あな空

本日小屋入り。あっという間の稽古期間も昨日で終了しました。各セクションでの役者間コミュニケーションがされているのを見かけるととても風通しの良いチームだなと思っています。

本日ご紹介するのは二人組の天使の1人、武田莉奈さん演じる悠について。観劇を迷っている方の参考にでもなればと思っております。
※武田さん扱いのチケットは上記お名前のリンクから飛んでください。

悠という役は正直なところ初演とはかなり変わっていると思います。話し方がとても丁寧なのは茘枝との比較対象としてそこまで初演と変わるところはないのかもしれませんが、時折見せる狂気感、宗教(勧誘)感はリブート版特有かと思います。

また目の演技(今はマスク常時着用で稽古をしているので口元の芝居はわかりません)は見どころの一つ。きっと演じている武田さんって目に力があるというか、引き込むチャームをもっているんだと勝手に思っています。

悠は人間がわかっていないと公言し、そのことに戸惑いを覚えている天使。焦りとは違う感情。私たちは何者か、彼らは何者か、その違いは何か、我々の役割、役目とは何か。問う、自身に問う。神とは何ぞ。私はそれが知りたいのだと探究心が強い。そのためか地上に神様のお使いでやってきたときは大抵本屋で人間理解のために本を買って読んでいる。そしてその時間を邪魔する茘枝というのがいつもなのだろう(と二人の様子を見ていて思う)。

あらゆる悩みを悠は密かに、相棒である茘枝に言うことなく抱えるものの、その葛藤それ自体、彼女には理解ができない。悩みすぎて「苦しい」という感情もわからない。茘枝の言動に振り回されて人間のような反応をしてしまうことに彼女がどれだけ気づけているのか。観察眼を持つ茘枝にはその日々の変化を気づかれてもいるのだろう。

不意に感情的になる瞬間もあるが、なぜそうしてしまうのか自身わからずにいる。その感情に名前を与えてほしいとすら願う。それはもしかしたら徐々に人に近しい存在になってきている証拠なのだろうか。

茘枝とのコンビネーションについて考える。穏やかで心優しく、静かでちょっと大人な悠のイメージ(今その点が崩壊しかけているのですがいい意味で)でしたが、武田版 悠は茘枝の目線で動ける、そんなところが親しみやすく仕上がってきている。いつもは好きだからの裏返しで冷たく突き放したり、無視したり、ツッコんだりしているけれど、付き合ってあげるのは彼女の優しさ。

彼女の水面下での感情も忙しい。大好きな人と離れ離れにするのが天使であり、連れていく対象の真司という人間がいて、残される奥様である栞里がいる。悠の感情については私も書いている時にはそこまでのものが見えていたわけではないのですが、今、武田さんが持ってきている最後のシーンでの悠と栞里のやりとり、これはいくつかある見どころの一つに違いないなと思うわけで。書いた人間は想像すらしていなかった、かもしれないが演出はとてもいい感情の発露だと思った。

武田さんはうちの舞台に出てくれるようになったのは「セーブポイントからもう一度」からになります。そこから続いて今回で4作品目。ありがとうございます。

どういう芝居をされる方なのかなぁとセブポイの時はコメディパートの役だったこともあり、色々な提案を頂き、どれも個人的に面白いと思うからそれを活かして、全部入れ込めないかと悩んだこともあります。

次にシリアスな芝居を観たいと思っての「無視できない私の中の感情」では潜入捜査官をやっていただきました。最初の稽古でトレンディだと指摘したことを思い出します。あの髪の長さの女性がただただ髪をかき上げるだけでトレンディ感、80年代ドラマ感が出るのは勉強になりました。

そして再びのコメディパート、ちょっと飛んじゃってる、すぐに部員に仲間外れにされてしまうような報道部部長という高校3年生。私はああいうキャラクター(愛される虐げられるキャラ)なら2時間でも3時間でも台本が書けますのでいつか主軸の物語を書いてみたいなというのが密かな企みです。コメディをやってもらうと想像していたところからすぐ翼を授かって更に違う方向に飛んでいってしまうのですが信じて見守る事が多いです。

そして今回、稽古初日の顔合わせ。読み合わせ。その前日の配信で武田さんは人見知りであることを強調されていましたが、その印象がない(繊細な人だとは思っている)ので、はてさてと思いつつ様子を見ていました。その日の帰り道、個人的な反省として弄りすぎたかなと。そして頑張って作ってきたドイツ語の威力が強すぎて、1単語で吹き出してしまったことを未だに悔いております。今はとてもイメージ、その場にあったドイツ語をすらすらと言ってくれて、笑うどころかよくやってくれたと思っているんです。彼女がいるだけで何故か座組の空気が和む、雰囲気が優しくなる、それってある種の超能力、ですよね。だからこそ人見知りというのがいまだに信じられずにおるのです。

今回は初演があるので大体の想像はしていたものの、前とは違って天使だけのシーンなどで背景や相棒の関係性に触れ、重要な局面でで出現しては人間の運命に関与する点はリブート版からになり。そうか、悠という天使はこういう種の性格なんだと初めて思う瞬間も多くありました。悠の不器用さ愛らしさ、苦悩(とは理解していない天使の感情)を表現してもらっています。セリフのない瞬間瞬間の彼女の表情や居方を目に焼き付けてほしいと願うばかりです。

公演詳細

公演情報は劇団Twitterから

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