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【教育再生実行会議】第十二次提言のニュースとは違うまとめ方

2021(令和3)年6月3日に第48回教育再生実行会議が開かれ、第十二次提言「ポストコロナ期における新たな学びの在り方について」が鎌田薫座長から菅総理大臣へと手渡されました。
教育再生実行会議は、2013(平成25)年に第一次安倍内閣の時に発足し、今回の提言を合わせると十二回の提言を提出してきました。特に第四次提言は「高大接続改革」というテーマが大いに注目され、大学入試改革が本格化したのを今でも覚えています。
今回の提言は、コロナ禍のような学校が通常の教育活動が行えなくなる事態が今後も発生したと想定した「ポストコロナ期」に向けての新たな学びの在り方についてというテーマになっていますが、簡単に言えば「教育のパラダイムシフトを起こしたい」「意識改革をしたい」という内容になっています。
注目度が高いため、提言内容についてはニュースで簡潔にまとまっていますが、「なぜこのような内容になっているのか」という背景や理由のようなものは記載されていませんので、今回はその部分をまとめたいと思います。
個人的な感想ですが、この提言は「すごくエモーショナルな提言」だなと感じました。

1.ニュースのまとめ方

ニュースでは以下のように提言のポイントをまとめています。

<オンライン学習>
● 高校・大学の対面授業における総授業時間の半分までをオンライン形式の授業で受講可能であることを明確化する
● オンライン教育における教員向け研修の充実

<学事歴・修学年限の柔軟化>

● 大学の9月入学・4学期制への環境づくり/小中高は導入見送り
● 高校時代に取得した大学の単位数に応じて大学の早期卒業を可能とする
● 大学の入学や卒業時期の多様化を促すために入学前教育プログラムを開発する
● 「飛び入学」の学生に高卒資格を与える

<教育データ活用(データ駆動型の教育)>

● 35人学級の成果を検証
● 学習履歴や教師の指導歴を活用
● 大学の教職課程でICT(情報通信技術)に関する科目を新設

2.「はじめに」をエモーショナルに書くと

この提言ですが、お役所文書なのできっちりとした表現で記載されているのですが、感情や想いが乗った文章だなと感じました。ですので堅苦しい文章ではなく少しラフな感じで「はじめに」を筆者の独断と偏見でまとめてみました。以下に、原文も掲載しておきます。
ポストコロナ期における新たな学びの在り方について(第十二次提言)

はじめに
新型コロナウイルス感染症は、世界各地で人々の生命や生活、価値観や行動、さらには経済や文化など社会全体に影響を与えています。まさに予測困難な時代が到来していて、「従来の方程式では解が見つからない社会問題にどう取り組んでいくか」ということが大きな問題となります。

このコロナの感染拡大は、コロナ関連の課題だけでなく、これまで認識されてきたけども解決できなかった日本社会の様々な課題も浮き彫りにしました。

特にこれまで日本の子供たちは「幸福度・自己肯定感や当事者意識が低い」と指摘されてきましたが、こうした意識を高めていくにはどうすべきかということもその課題の一つです。これは子供たちに限らず、大人も含めた社会全体の課題です。
また、過度な横並び意識を無くして、いかに一人一人の自律と社会における多様性を高めていくか、想定外の事象と向き合い対応する力や不透明な未来を切り拓く力をどう養っていくかなども、コロナ禍を機に改めて考えるべき課題です。
こうした課題解決を目指すことで新たな日常(ニューノーマル)を構築していくことができると考えています。

教育再生実行会議では、
ポストコロナ期における新たな学びの在り方を考えていくに当たって、こうした課題を解決するためには、一人一人の多様な幸せであるとともに社会全体の幸せでもあるウェルビーイング(Well-being)の理念の実現を目指すことが重要であるとの結論にいたりました。

このような幸せが実現される社会は、
多様性と包摂性のある持続可能な社会でもあります。

この社会を実現するためには、
一人一人が社会の様々な問題に至るまで関心を寄せ、社会を構成する当事者として、自ら主体的に考え、責任ある行動をとることができるようになることが大切です。

こうした個人を育むためには、
我が国の教育を学習者主体の視点に転換していく必要があります。

こうした発想はこれまでもありましたが、
教育行政や学校現場での教育活動において必ずしも徹底されていませんでしたので、これまで以上に重視していきたいのです。

そのためには、
教師をはじめとする教育関係者が学習者主体の視点へ転換をするという意識改革を図り(意識のパラダイムシフト)、「新たな学びの着実な定着」「教師の質の向上と数の確保」「デジタル化への対応」などを総合的に進めていく必要があります。

特にデジタル化ですが、
教育にデータを活用していくことを検討し、コロナ禍で取り組んだ遠隔・オンライン授業などのデジタル化の流れを後戻りさせないという意識の下、適切に進めていくことが期待されます。
もちろん、
個人情報保護や情報セキュリティ、過度なデジタル依存による弊害など、デジタル化の負の側面にも適切に配慮していきます。
これらに加え、
将来、今回のコロナ禍と同様の事態が再び生じ、学校が通常の教育活動を行えなくなった場合(ポストコロナ)でも、子供たちの学びを確実に保障し得る環境を構築していくことを目指します。

教育再生実行会議では、今回の提言作るにあたり、「初等・中等教育」「高等教育」でワーキンググループを作り議論を進めてきました。
ですが、
社会全体で対応すべき喫緊の課題もあります。「大学等の学事暦・修業年限の多様化・柔軟化」や「社会との接続の在り方」「学校・家庭・地域での子供の育ちを社会全体で支えるための方策」になどで、こちらも提言に含めています。

政府の皆さん、
本提言を踏まえ、教育関係者のみならず幅広く国民的な議論を深めながら、本提言に盛り込まれた各施策について、「教育の未来は今ここで決まる」という認識のもと、制度の改革や運用の柔軟化等に向けて速やかに専門的・具体的な検討を行うとともに、様々な環境の整備に努め、その内容が着実に実現されることを期待します。

3.今回、方向性を示しきれなかった課題

本提言ではさまざまな内容の提言を行っていますが、「強く課題感を持ちつつも、一定の方向性を打ち出すに至らなかった課題がある」と記載されていました。下記の4課題は、確かに今まさに議論を進めるための検討会議が開かれているものばかりです。

①高大接続の望ましい在り方
現在、文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」において検討を進めています。
● 関連記事1:次の大学入試改革は、令和6年(2024年)? 〜大学入試のあり方に関する検討会議〜
● 関連記事2:大学入試共通テスト 〜「記述式」断念!? 共通テスト科目スリム化するも紙対応!!サンプル問題も公表〜

②教師の質の向上や多様な人材の活用のための方策
現在、教員免許更新制や研修をめぐる制度の抜本的な改革や特別免許状を含む教員免許の見直しを速やかに実現した上で、教員免許、教職課程の高度化、教員養成大学の在り方等を総合的な見直しが中央教育審議会において議論されています。
● 関連記事1:どうなる?教員免許更新制度! 〜検討委員会発足〜
● 関連記事2:教員の「特別免許状」、指針変更へ

③対面指導と遠隔・オンライン教育の在り方
本提言では、初等中等教育段階における学校は「集う機能」に特に存在意義があるとしています。その一方で、社会の急激な変化や技術の進展、国際的な潮流等を踏まえれば、対面指導と遠隔・オンライン教育の在り方を今後更に掘り下げて議論することも必要であるとしています。
また、高等教育においては、教育の質の保証を前提とした上で、規制の在り方の見直しなどの改革が必要であるとしています。例えば、高等学校の全日制・定時制・通信制の区分や早期卒業に関する制度の在り方、大学におけるオンライン授業の単位数上限などの在り方についてを検討すべき事項として例に挙げています。

④データ駆動型の教育への転換
現在、文部科学省を中心にデジタル庁等とも連携しつつ、教育の DX の取組を強力に推進し、収集したデータを適切に分析・活用するための議論は文科省の有識者会議にて検討されています。
● 関連記事:教育のデータって何?今後の使われ方が考えられています。

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