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次の大学入試改革は、令和6年(2024年)? 〜大学入試のあり方に関する検討会議〜

3月6日から国立大学の合格発表が順次行われ、大きな改革があった令和3年度の大学入試も徐々に終わりに近づいてきています。
当初、「記述式問題の出題」「英語外部試験の活用」「e-ポートフォリオの活用」など共通テストにおいて今以上に大きな改革が実施予定でしたが、途中で頓挫しました。さらに、その混乱の中、新型コロナウィルスの感染が拡大していき、一時全国の学校で休校が相次ぐ事態となりました。今年度の受験生は本当に大変な受験期を迎えたと思っていますし、最後までやり遂げたことは本当に素晴らしいことだと考えています。

さて、この「記述式問題の出題」「英語外部試験の活用」の令和3年度入試での中止を受け、令和元年(2019年)12月に発足されたのが「大学入試のあり方に関する検討会議」という有識者会議です。

2021年3月4日に第22回の会議が開催されたようで、これまでの議論の概要など資料を色々と見てみました。結論から言えば、まだまだ討議中で21年夏頃を目処に大きな方針が発表されるようですが、何について話し合っている会議なのかを知っておくことで今後の情報収集を円滑に進めることができると考えてまとめてみることにしました。

1.発足趣旨と検討事項

「大学入試のあり方に関する検討会議」は、以下のような内容が検討されているようです。

趣旨
「大学入試英語成績提供システム」及び大学入学共通テストにおける国語・数学の記述式に係る今般の一連の経過を踏まえ、大学入試における英語4技能の評価や記述式出題を含めた大学入試のあり方について検討を行う。
検討事項
(1)英語4技能評価のあり方
(2)記述式出題のあり方
(3)経済的な状況や居住地域、障害の有無等にかかわらず、安心して試験を受けられる配慮
(4)その他大学入試の望ましいあり方
 ①ウィズコロナ、ポストコロナ時代の大学入試のあり方
 ②大学入試共通テストのあり方

2.萩生田大臣の第1回冒頭挨拶(令和2年1月15日)要旨

上記だけでもなんとなくわかるのですが、より具体的なゴールのイメージを掴むために、萩生田文科大臣が会議発足冒頭に話した内容がイメージしやすいものだったため、要旨をまとめてみました。

<英語4技能について>
◯ 英語民間試験活用のための大学入試英語成績提供システムの導入を見送り、延期した理由は、経済的な状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して受けられるようにするためにはさらなる時間が必要だと判断をしたため。
◯ グローバル化が進展する中、次代を担う若者が英語によるコミュニケーション能力を身に付けること、そして、大学入試で英語4技能について適切に評価することの重要性に変わりはないと考えている。
◯ 新学習指導要領で初めて実施する入試となる令和6年度、2024年度実施の大学入試に向けて、英語4技能をどのように評価していくのか、できるだけ公平でアクセスしやすい仕組みとはどのようなものなのかといった点について本会議で検討をお願いしたい。

<記述式問題について>
◯ 民間事業者による採点の質の確保、自己採点と採点結果の不一致の解消など、指摘された課題の解決に向け、大学入試センターとともに検討を重ね、努力をしてきたが、現時点で受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を早急に整えることは限界があると判断し、導入の見送りを決めた。
◯ 文部科学省としては、初等中等教育を通じて育んだ論理的な思考力、表現力を評価する記述式問題が大学入試において果たす役割は重要と考えている。
◯ 各大学の個別選抜において記述式問題の活用に積極的に取り組んでいって欲しいが、本検討会議でも、共通テストや各大学の個別選抜における記述式問題のあり方など、大学入試における記述式の充実策について議論をして欲しい。

3.今後のスケジュール

萩生田大臣の冒頭挨拶から、次の大きな入試改革については令和6年(2024年)に実施されるようです。特に、英語の外部試験の活用に関する取り組みが本格化するのではないかと予想されます。

2021年夏頃になんらかの通知があるので、内容によっては、令和6年を待たずに動き始める大学が出てくるのではないかと予想されます。

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中止が決定する前に英語外部試験を活用することが決まっていた大学に関しての資料もありましたので、掲載しておきます。

資料1:センター試験時の私立大入試の例

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資料2:国公私立大学における「大学入試英語成績提供システム」延期前後

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4.共通テスト「英語」に関する講評

第22回の会議資料に、令和3年の共通テストの英語に関する検討委員(渡部良典委員)からの講評の資料提供がありました。今年の共通テストを本会議の検討委員はどのように捉えていたのか、要旨をまとめました。必ずしもこの通りになるわけではないですが、改善の方向性についても触れていましたので、取り上げてみました。

◯ 構造を重視した言語観から機能言語学的言語観への移行した。
従来の、語彙・文法・文章の構成等、言語の構造を問う問題(構造を重視した言語観)が姿を決して、言語を使って何ができるかを重視する問題(機能的言語観)へ移行した。

◯ 基本的な言語運用能力の重視であった。
「日常生活を営む上で必要となる基本的な言語能力」と「認知的に高度な能力が要請される言語能力」の二つがあるが、共通テストは前者重視だったように思う。学校教育における英語力の測定が目的である以上本来はバランスよく出題されるべきではないか。

◯ 明示的言語習得観から暗示的言語習得観への移行であった。
<明示的指導法>
重要な語彙、文法、文章構造等を教師が説明し、練習を重ねることによって習得を促す。
<暗示的指導法>
意味の理解を通して生徒が無意識のうちに語彙や文法を習得することを重視し、語彙や構文の説明は最小限におさえる。
・共通テストでは発音、語彙、文法問題が廃止されたが、これは暗示的指導の効果を前提としているからであろう。
・暗示的指導法が明示的指導法よりも優れているわけではない。むしろ、学習効果を上げるためにはそれぞれ果たすべき役割が異なる。
・例えば、これまで筆記で行われていた、発音や語彙、文法の問題をリスニング・テストで行うなどという選択肢もあり得る。
・実証研究に基づいた見直しの可能性を検討する必要があるのではないだろうか。

◯ テストに関する事前の情報公開について検討すべき
・大学入試センターは詳細な情報を公開していた。(A4 で 330 頁に及ぶ受験案内など(https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r3.html)
・4 ページ目〜 5 頁目という目につきやすい箇所に変更点が記載されていたことは配慮がみられた。
・一方、内容は具体性を欠いていた。(以下が記載内容)
 発音・アクセント・語句整序などを単独で問う問題は出題しないこと。
 英語表記は現在国際的に広く使用されているアメリカ英語に加えて,場面設定によってイギリス英語を使用する。
 リスニングの音声を流す回数。

◯ 改善すべき出題内容
・リーディングの問2A,B,問3A,Bでは英国が、問5ではフランスが場面として設定されている。しかし、多様な英語(World Englishes)が許容され、認知される今般において、アジア圏その他非英語圏をトピックとし
文脈とした課題を設定する必要はないだろうか。
・あるいは、リスニング・テストの問6Bでは4人がレシートについて議論をしている場面においてその内容を聞き取らせる問題があるが、内容の聞き取り以前に音声の聞き取りだけで4名の話者の区別をすることは言語能力以外の能力を測定している可能性もある。
・測定結果が課題の目的とどの程度整合性を持っているか検証が必要である。


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