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今さら聞けない奨学金制度!ちょっと情報を整理してみました。

2021年6月11日に、NECが一般社団法人あしなが育英会と連携し、複数機関1万件以上の奨学金情報を横断的に検索可能なシステム「Canpass」を開発した、というリリースが出されました。そのリリースには「奨学金制度は日本全国の大学・自治体・社団法人・財団法人など様々な機関により運用されていますが、その数は膨大で、学生それぞれに必要な情報が届きにくいという課題がありました。」と記載されており、まさにその通りだなと感じた次第です。

NEC、あしなが育英会と連携し複数機関1万件以上の奨学金情報を横断的に検索可能なシステム「Canpass」を開発

筆者は教育業界に従事していますが、奨学金を利用する機会もなく、当事者意識を持ってこの制度を向き合ったことがありませんでした。今回は、勉強不足を反省しながら、筆者が奨学金について理解が進まなかった原因とともに奨学金の情報を整理してみることにしました。

1.「奨学金」という言葉の範囲が広すぎる

「奨学金」という単語は、様々な意味を含んでおり、文脈によってその意味は使い分けられているようです。
後述しますが、「教育のお金のサポート」という意味で奨学金という単語が使われているのだとすれば「教育ローン」などと区別をして「奨学金」を理解しなければいけませんし、「奨学金を探したい」という文脈で使うのであれば、「奨学金」の種類(団体・型など)を念頭に置いて話をしなければなりません。
かなり定義が曖昧になっている状態だったので、国の奨学金事業について調べ、その成り立ちなども勉強してみることにしました。

国の奨学金事業(文科省の資料参照)
国では、「日本国憲法第26条」「教育基本法第4条第3項」に基づき、経済的理由により修学が困難な状況にある優れた学生等に対し、教育の機会均等と人材育成の観点から経済的支援を行う教育政策として奨学金事業を行っています。
どうも「奨学金事業」の中に様々なタイプの「奨学金」が用意され、奨学金に関連した制度が後から設定されたという構図のようです。つまり、「奨学金事業」「奨学金制度」「奨学金」という言葉はちゃんと使い分けられているようなのです。

<奨学金事業の歴史>
●昭和18(1943)年度
・財団法人大日本育英会を創設し、無利子の貸与型奨学金をスタート
●昭和59(1984)年度
・財政投融資資金を活用した有利子奨学金が創設
●平成29(2017)年度
給付型奨学金事業を導入
・無利子奨学金において所得連動返還型奨学金を導入
●令和2(2020)年度
・給付型奨学金の大幅拡充を行う高等教育修学支援新制度を実施

<奨学金事業の関連制度>
返還期限猶予制度
減額返還制度
返還免除制度
海外留学奨学金制度

※現在は、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)において奨学金事業を実施

国の奨学金事業を実施しているのが独立行政法人日本学生支援機構(通称:JASSO)です。上記したものは、JASSOが実施している「奨学金」とその関連制度になります。JASSO以外にも大学や自治体・各団体が、JASSOの「奨学金」を参考に個別に新たな奨学金を設けています。これが現在の日本の奨学金の全体像のようです。

2.お金のサポートは、奨学金だけではない。

筆者の奨学金の勘違いの一つに、「教育に関するお金のサポート=奨学金」と考えていたことがありました。「教育ローン」などの単語はもちろん知っていたのですが、教育に関するお金のサポートを「奨学金」「教育ローン」「授業料減免制度」と区別し、体系的に理解できていなかったように思います。それぞれに役割とメリットがあるようです。

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3.奨学金の種類が多すぎる

奨学金と一言でいってもあまりにも種類が多く、NECによれば、世の中には1万件以上の奨学金があるようです。筆者にとって、この種類の多さが奨学金を理解するの妨げた原因でもありました。正直、奨学金の実施団体はこんなに多いと知りませんでした。今回、NECが「Canpass」を開発した意味も頷けます。以下のように考えると検索などもしやすくなるかもしれません。
筆者は試しにNECの「Canpass」のキーワード検索で「慶應大学」と入れてみました。「実施団体」の項目を意識したキーワードです。その結果、地域ごとにOBOGが実施している奨学金が107件ヒットしました。慶應大学はOBOGの力が本当に強いですね。

実施団体 × 支給型(給付or貸与など) × 条件(支給タイミングなど)

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JASSOにおいても奨学金を調べるシステムがあるようですが、NECのデータと比較すると「あしなが育英会」のような一般社団法人などは検索できないようです。

4.わかりやすい資料

今回、筆者が調べているうちに出会った大変わかりやすい資料をご紹介したいと思います。JASSOが高校の先生向けに作っている資料なのですが、保護者や生徒が読んでも役に立つ資料です。
この資料をもとに、NECがリリースした「Canpass」で検索すると自分に合った奨学金を見つけることができると思います。

進学マネー・ハンドブック(2021年度版)

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今回、奨学金について調べてみてプロモーションの大事さを痛感しました。誰かの助けになろうと思って実施されているものがこんなに一生懸命調べないと見つからないのだと…
ただ、実施団体に頑張れという気にもなれず、このような発信をしながら少しでも支援できたらいいなと感じたのでした。

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