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デジタル庁〜教育データ利活用のロードマップ〜

令和3(2021)年10月25日にデジタル庁が、教育データを今後どのように利活用していくのかを示したロードマップの検討状況を公表しました。本記事を執筆している段階では、このロードマップを公表して国民に意見を募集するという段階ですが、現時点でデジタル庁がこの壮大な取り組みをどのように進めようとしているのかが気になったので、以下の資料を読んでみることにしました。

教育データ利活用ロードマップの検討状況について(PDF/4,527KB)

この資料は、文書ではなく図で作成されているので比較的イメージを掴みやすい資料となっています。ですが、多くの検討会議を参考に作成されていることもあり、かなり多くの情報が詰め込まれています。今回は概要を示しながら、イメージが掴みやすい資料を抜粋し、最後に筆者の感想を述べていこうと思います。

1.資料の概要(検討範囲・ミッション・ビジョンなど)

日本は、世界に比べて教育のデジタル化が遅れているといわれています。ですが、近年GIGAスクール構想が加速度的に推進され、デジタル化の段階は少しずつ前に進んできているといっても良いと筆者は思っています。

本資料でも、現在の日本の教育は「1人1台端末の整備は概ね完了段階」にあるとし、次の段階を「ICTをフル活用して、学習者主体の教育への転換や教職員が子供達と向き合える環境」と定めています。この段階を実現するためにロードマップが示され、以下のようなミッションとビジョンが掲げられています。

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ミッションについては読んで字のごとくですが、ビジョンについてはこの単語だけでは具体的なことが少し分かりづらくありますので少し具体化したいと思います。

◆データの「スコープ(範囲)」
・教育効果として測るべきだったが測ることができなかった多様な側面(例えば、認知能力だけでなく非認知能力)もデジタル化により測ることができる。
学校外の学びなど、アナログの世界で十分に行き届かなかった部分にも影響範囲を広げることができる。

◆データの「品質」
・データを標準化することで、組織を超えて共有・活用できる
・時間軸で見て(過去と比較して)データを利活用することが可能になる。

◆データの「組み合わせ」
目的に応じて、行政データと学習データや、学校内外の学びといった様々なリソースの組み合わせがより一層可能になる。

2.将来のイメージ(さまざまな立場別)

教育データが利活用されている状態とは、「教育データが蓄積され、流通している状態」です。この状態が実現した時に先生や子どもたち、保護者の教育環境はどのように変化していくのでしょうか。立場別に将来イメージが図化された資料がありましたので紹介します。

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【感想】期待はしているもの、すごく困難そう

今回の資料を読んでいくとこのような世界が実現できれば良いなとは個人的には考えています。しかし、教育データの利活用を実現するためには、「教育」という分野を越えた今までよりもより大きな範囲での検討が必要になることは明白です。
教育に関連するものをデータ化をするならば必ず必要になるのは、個人を識別するようなIDを付与・管理していくことです。それは子どもたちだけでなく、先生や子どもたちの保護者も識別できるようにならなければなりません。

さらにそのIDに紐づく大量の学習データを長年に渡り蓄積し、自由に活用するための仕組み(プラットフォーム)が必要となります。
学習データに関しても、学校や先生によってばらつきがあっては、同一の条件での比較が困難になります。そのため「蓄積する必須データはどういった学習データとするのか」についても議論の必要性が出てきます。
さらに「蓄積された大量のデータをどのように保存しておくのか」、「データ管理や安全性の確保はどのように実現していくのか」ということについても考えていく必要があります。
もちろん、筆者が考えるようなレベルのことは既に考えられ始めているわけで、多くの課題にはその方向性が示されています。

とはいえ、新しいことを実現する際には、ある一定のリスクが伴いますし、多くの反対意見が出てくることが容易に想像できます。「学習データを知られたくない権利」などという話が出てくるとすればかなりやっかいな問題になるのではないかというのが個人的な心配です。

実現にはかなりイバラな道を歩みそうな取り組みですが、筆者個人としては応援していきたいなと考えています。



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