ブラックに飛び込む
ウェブ制作のフリーランスとして働いてはや17年。
ここに到るまでの仕事の変遷を綴るマガジン、第4回です。
新卒で入った会社で渋谷本社に異動になって配属されたのは、ホテルシステムを開発している部署だった。
いよいよ本格的にお客さんと対面して仕事ができる。
僕は燃えた。
今思えば、若いからだろうが、パワーが溢れかえっていた。
かなり必死に働いたと思う。
しかし、無茶なスケジュールでホテルのオープンに全機能は間に合わず、初めてチェックアウトでお客様に出した領収書がマイナス金額だった衝撃はいまだに覚えている。
そこからしばらく、そのホテルに泊まり込んでバグ取りをすることになった。
でも、これは僕が望んでやっていたことだ。
今の時代で言えば、ブラック会社と言えるのだろう。
今思えば不思議なほど、苦痛じゃなかったなぁ。
タクシー代も出たし、残業代もしっかり出たので、まだ景気はよかったのかもしれない。
働きづめなので、結構な金額の給料が出ても使う暇がない。
家賃も安いところだし。
お金に困るということはなかった。
終電を逃してしまい、渋谷から東横線の脇の道を通って武蔵小杉まで歩いて帰ったことが何度かある。
なんでそんなことしたのだろう。
タクシーに乗りたくなかったんだよなぁ。
そんなこんなでホテルシステム部にも慣れてきた。
炎上案件も鎮火し、小さなバグを直すくらいしかすることがない。
会社のベランダに出て外を眺めると、高速道路が見えた。
あのトラックに乗っている人は、これからどこにいくのだろう。
僕は毎日毎日、会社にきて、こうしてベランダから外の世界を眺めている。
俺はこんなことをしに、東京に来たのだろうか。
もっと広い世界があるのではないか。
それと、プログラミングという仕事にも疑問を持ち始めていた。
やはり僕に合っていないのではないか。
社員の人は、みんなよくしてくれるけれど、一日パソコンをパチパチやるだけで人間関係が深まることもない。
もっと人と接点のある仕事がしたい。
入社して1年半ぐらいたったころ、頻繁に転職雑誌を読むようになっていた。
そこで、気になる求人広告を見つけたのだった。
続く
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