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僕を支えていたもの

ウェブ制作のフリーランスとして働いてはや17年。
ここに到るまでの仕事の変遷を綴るマガジン、第5回です。

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初めの半年くらいは、やはり結構きつかったです。
あまりに環境の変化が激しすぎました。

今まで、パソコンの前でパチパチやっているだけであまり人との接点はありませんでした。
でも、付き人の仕事、というか音楽業界の仕事は、もう人と人の接点が全てみたいなところがあります。
みんないろんな思いがあって、仕事をしています。
スタジオミュージシャンや、エンジニア、スタッフまで、やりたくてやっている仕事なのです。
だからアクが強い人が多い。
僕はそんな中で揉まれていきました。

ボスにもだいぶ怒られたなぁ。
スタッフもみんなボスには振り回されっぱなしでした。

この頃、僕を支えていたのは、大学時代にお世話になったバイト先のバーのマスターの言葉でした。

「村井くんは大丈夫だよ」

事あるごとに、マスターはそう言ってくれていたのでした。
尊敬する人にそんな事を言ってもらえていたおかげで、僕はボスに卑屈にならずに済んだのです。
ボスよ、あなたがどんなにえらいか知らないけれど、マスターに大丈夫だと言われた僕なので、あなたの言いなりにはなりません、みたいな感じだったのでしょうかね。

半年もすぎると、だんだんボスとも打ち解けてきました。
何しろ、付き人なので、二人で移動することが多い。
ましてや車の中では二人だけの空間になってしまうのです。

僕は、神経を研ぎ澄まして、ボスの空気を掴みとります。
ここで、僕気を使ってます、みたいな雰囲気を出しちゃダメなんです。
気を使っていないように見せかけて、最大限に気を使う技が必要です。

クリエイティブがどれだけ大変かというのは、レベルは全く違いますが、僕も大学時代に曲を作ったりしていたこともあり、僕なりに理解していました。
気分が乗るか乗らないか。これは大きな違いなのです。
そして、仕事へのプレッシャーも並々ならぬものがあるでしょう。
僕はそんなボスを理解しつつ、なるべくリラックスできる関係を築こうとしました。
そしてそれはそれなりに成功したのです。

この時の経験はとても大きいものだったなと今でも思います。
ただ、この基本は大学時代にマスターに教わった事でもあるような気もしますね。
バーでカウンター越しにお客さんと接する時も、気を使わせないように気を使う必要があるのです。その感覚が生きたのかもしれません。

そうこうしているうちに、1年が過ぎたのでした。

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