路上ナンパ2 [ 幻影 第6話 ]
「もし良かったら、一緒に飲みに行かないか」
呆気にとられた表情で顔を見合わせる二人。
キャッチやスカウトには嫌というほど合っているだろう。
「何をしている人?」
金髪の娘が怪訝そうな表情で尋ねてくる。
ワンピースは内気な性格なのか金髪の子に隠れるようにして恥じらいでいる。
麻雀打ちだ、と応える資格は今の私にはない。在りのままのことを語った。
「何って、別に普通の仕事さ」
二人は一向に警戒の色を解かないが、すぐにでもこの場を立ち去りたいという様子でもない。
おそらく、それほど急いではいないのだろう。
私は上京してきたばかりで話せる人間が居ないから、一緒に飲めないかと思い声をかけてみたと素直に言った。
すると、自分たちも進学で東京に出てきたばかりだと金髪の子が答えた。
「学生?」
「W大学の一年生。19と18歳よ。私は横浜でこの子は秋田からこの4月に出てきたの」
「そうか、俺は23歳。俺も今月出てきたばかりで、俺の連れのアイツは君らの大学の先輩だ」
同じように上京してきたばかりという境遇に心を許したのか、ワンピースの娘もポツリポツリと会話に加わってきた。
私と話すのはもっぱら金髪の子だが、私たちはその場で話し込んだ。
金髪の子と話す傍らでワンピースの子の表情を盗み見た。
思った通り、いや思った以上に可愛らしい女の子だった。
その刹那、彼女と目があったが、私は思わず目を逸らしてしまった。
社交辞令的な会話を金髪の子といくつかやりとした。
見かけとは違って、しっかりした子たちのようだ。
「趣味が合いそうだし、もう少し話したいけどいきなり今日はちょっと、ね」
金髪の子が正直に説明をしてくれる
「あと、これから高田馬場でもう一人仲良くなれそうな女の子と合流する約束があるの。私たちも一緒に飲むのは初めてで」
私は変な人間じゃないから安心してくれ、と言い二人をタクシーで馬場まで送った。
そして、連絡先を教えるのは不安だろうから、と私のアドレスだけを控えたメモを渡した。
それを金髪の子、そしてワンピースの子に手渡す。
少し怯えるような表情をしながら、澄み切った瞳でワンピースの子が見つめ返してきた。
その深い瞳に吸い込まれるのを避けるように、私は再び目を伏せた。
そして、レフティの私に向ける視線に耐えながら、私たちも解散した。
いつもの私鉄に乗って帰路につき、いつものコンビニエンスストアに寄った。
だが、そのまま帰る気にはならず、駅前の初めて入るbarに寄って1時間ほど酒を飲んだ。
帰宅した私は私はベッドで大きく溜息をつき、大の字になった。
麻雀で空いた心の隙間を女で埋めようっていうのかい……。
そんな事が許されるものか。
だが、不思議とそこまで自己嫌悪な気持ちにならなかった。
時計の針に目をやると、もう深夜の2時近かった。
私は空虚を仰いだまま横になっていたが、携帯の背面が着信の光を帯びた。
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