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黄金の舞台 [ 幻影 第8話 ]


 真梨香との生活は私に大きな変化をもたらした。
 笑顔や人格を捨て、極限まで隙を排除しようとしていた麻雀打ちの日常とは掛け離れた穏やかな日々。

 蜜月のとき、とまでは行かないが私たちは充実した日々を送った。


 互いに時間に余裕があった訳ではないので会えるのは週に2~3回だが、食事や遊びに行ったり、そして何よりも真梨香が私の部屋へよく顔を出してくれた。


 19歳の大学一年生。様々な文化を吸収し、また最も遊びたい時期だろう。
 だから私は彼女に社会勉強も遊びも目一杯好きなようにやるように伝えた。

 結局、人生は何もかもやってみなければ判らないものだらけだ。
 彼女はその言葉にある程度従い、おっかなびっくりしながらも世界を広げて行った。

 それでもまだ子供なので、道に迷ったり私に依存をしてしまうときがある。
 次第に仕事と勉強に励み、その姿を真梨香に見せる事が私の遣り甲斐になって行った。

 
 1ヵ月、3ヶ月と時が過ぎ、半年が経とうという頃には私はすっかり東京の生活に慣れていた。


 仕事や勉強が少しずつ判っていき、微々たる額だがサラリーで徐々に貯蓄も増えて行く。完全に壊れていた私の体は健康を取り戻し、顔も生気で溢れるようになっていた。

 
 全ては順調だった。
 表面上は...、何の問題も無かった。

 しかし、牌に生きた時間はそんな簡単に忘れられるものではなかった……。
 幾度も辛酸を舐め、無限の摂理を牌が教えてくれた。


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 いつもの速さでリーチ棒を放り、盲牌する親指に一発自摸の感触が伝わってくる……。


 いつだって厳粛で荘厳な闘いが繰り広げられる、あの四角い舞台。
 苦しくて、それでも胸が躍り、黄金の輝きを放つ闘いの場…。


 あの卓上の状景が私の頭から離れたことは一度も無かった。


 

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