子供にとって「良い先生」はどんな先生?
今回の記事を見てほしい人
・現在教職を担っている人
・お子さんがいるご家庭
皆さんにとって「良い先生」はいましたか?
「いい先生」に出会って人生が変わったという人がいると思います。私にもそんな経験はあります。中学二年生の時、担任をしてくれた人がいましたが、とても印象的に残っております。部活動や勉強のことによく相談に乗ってくれました。
その先生は学年の間では、とても怖がられていました。めっちゃ怖かったんです。顔も怖くて、物静かで必要最低限のことしか話さないのです。最初はその先生と目が合うと、背筋がピーンと伸びた記憶があります。
しかし、その先生の授業はとても面白いのです。人が変わったかのように口調が変わり、面白いおかしく授業してくださいました。社会の担当だったのですが、面白く授業をしてくださったおかげで社会の科目が好きになり、難しい言葉も覚えられるようになりました。
部活動では顧問をしてくださったのですが、とても怖い印象は変わりません。ですが、言葉一つ一つには愛情がこもっており、とてもよく指導してくださいました。今では感謝の気持ちでいっぱいです。
私にはこのような経験がありますが、皆さんはありましたか?
実際、皆さんの中にも、学校で素晴らしい先生に教えを受けて、人生が変わるような体験をした人は少ないはずです。
今回は科学的に「良い先生」とはどういう人なのかを紹介します。
良ければ、参考にしてください。
先生の影響力
教員の「質」に関する研究をリードしてきたスタンフォード大学のハヌシェク教授によると、もともとの学力の水準が同程度の子供たちに対して、能力の高い教員が教えた場合、子供たちは1年で1.5学年分の内容を習得できたのに対して、能力の低い教員が教えた場合は、0.5学年分しか習得できませんでした。
これは実に、1年間で丸一年間分もの差が生じたことになります。ハヌシェク教授はこの結果をもとに、能力の高い教員は、子供の遺伝や家庭の資源の不足すらも帳消しにしてしまうほどの影響力を持つ、と結論付けています。
「いい先生」とは?
結論から言うと「よい先生」とは、子供の成績を伸ばしてくれる先生のことです。
とてもシンプルな考え方ですが、この考え方には一つ問題点がありました。
それは、成績の良し悪しだけで評価をすると、長い目でみて子供たちを本当の意味で成功に導いていないのではないか、などの論争がありました。
この論争に終止符を打つべく、経済学の一流誌「アメリカン・エコノミック・レビュー」に2本の論文を発表したのが、ジョン・ベイツ・クラーク賞の受賞者でもあるハーバード大学のチェティ教授らの研究グループです。
チェティ教授らは、全米の大都市圏の学校に通う100万人もの小・中学生のデータと納税者記録の過去20年分のデータを用いて、教員と教員が担当した子供たちの人生を統計的に研究しました。これはかなり膨大なデータです。
すると、質の高い教員は、ただ単に子供の学力を上昇させているということにとどまらず、10代で望まない妊娠をする確率を下げ、大学進学率を高め、将来の収入も高めていることも明らかにしました。
チェティ教授らは、成績を伸ばしてくれる先生に出会うだけで、子供の生涯収入の現在価値を、学級当たり2500万円も上昇させることができると推計しています。
教員の質を改善するだけで、私たちの社会や経済が得る便益はとても大きいのです。
少子化が進んでいく中では、少人数学級の導入によって教員の「数」を増加させることよりも、教員の「質」を高める政策のほうが、教育効果や経済効果が高い可能性があるのではないでしょうか、と述べているのです。
教員の質を高めるために海外では研究が行われています。ボーナスの与え方の工夫で効果が見られたり、研修は意味がない、教員免許を持っている先生同士でも質の差はかなり大きいなどの研究があります。
しかし、日本ではこの研究が進んでおらず、確かな情報をもとにしたエビデンスが取れていないのです。
日本ではもっと研究が進んでほしいですね。
少しでもこの国で「よい先生」が増えてくれることを願うばかりです。
( 引用: 学力の経済学 教育経済学 中室牧子 著 )
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