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事業は「思い」から始まり、「思い」で成就する。(石坂産業・三富今昔村 訪問記)

数ある記事の中から、この記事に興味を持っていただきありがとうございます。

皆様は、埼玉県入間郡にある「石坂産業」という会社をご存じでしょうか?

カンブリア宮殿でも紹介されたことのある会社ですが、初めて耳にされる方は、まずは以下のご紹介アニメをご覧いただければと思います。

この夏休みに、子供を連れてこの石坂産業が営む里山『三富今昔村』に行ってきました。

いつか訪れてみたいと思っていましたが、ちょうど子供向けのイベントがあり、自然や生き物が好きな娘に話をしたところ乗り気だったので、これはいい機会だと思って申し込んでみました。

私が石坂産業のことを知ったのは何年前でしょうか。確か、幸福学の前野隆先生のプログ記事か何かで知ったのだと思います。

その後何度か社長である石坂典子さんの講演を聴かせていただいたり、その著書も読みました。

世の中に無くてはならない事業を行っているのにも関わらず地元住民から出ていけと言われる絶体絶命の状況から、「地域から必要とされ愛される会社」になるまでの物語には心を動かされます。

そしてそれを実現したのは石坂さんの経営姿勢、いや、『生き様』です。

そんな石坂さんの思いが詰まった里山に行けるとあって、当日の朝、娘よりも私の方が張り切っていたかもしれません。

関越道の所沢インターを下りて、20分ほど走ったところにその里山(=石坂産業本社)はありました。
産廃を運び入れるトラックが頻繁に出入りする施設のすぐそばに広がっている広大な森がその里山です。(東京ドーム約4個分だそうです)

以下写真はその里山の入り口となる「交流プラザ」です。ここでは里山で採れた野菜を中心としたメニューが豊富な食事処でもあります。

子どもが参加するイベントの受付を済ませたのち、イベント終了までの時間、私はこの里山でのんびりと過ごさせていただきました。

そこには、すぐそばに産廃のプラントがあるとは思えないほど豊かな自然がたっぷりと存在をしていました。

以前この辺りは不法投棄のゴミで溢れかえっていたそうですが、そんな過去は微塵も感じさせない豊かな自然です。

はじめに足を踏み入れたのは「くぬぎの森」です。

鳥のさえずりや蝉の鳴き声が響き渡り、生き物たちが心地よく過ごしているのがわかります。蚊にも沢山刺されましたが(笑)これも生き物の循環のひとつですね。

その後の低木エリアを抜けると、少し開けた場所にたどり着きます。ここは「くぬぎの森のカフェ」です。

この日は35度を超える真夏日でしたが、周りを緑で囲まれたこのエリアは日頃の都会の喧騒を完全に忘れさせてくれ、心からリラックスできる場所でした。

昼食もここで取りましたが、真夏日の中、あえて熱いラーメンを…

真夏の外で食べるラーメンは湯気が立たないと初めて知りました(笑)。

午後は、低木エリアにあるベンチで、木漏れ日のなか読書を楽しみました。

ここで読むドラッカーは格別でした。

こんな時、ニクいことにドラッカーさんは以下のような問いを投げかけてくるのです。

”「得るべきところはどこか」を慎重に考えた結果が、今働いているところではないということであるならば、次に問うべきはそれはなぜかである。組織の価値観になじめないからか、組織が堕落しているからか。
 もしそうであるならば人はダメになる。自らが価値あるとするところで働くのでなければ、人は自らを軽く見るようになる。
 自らが所を得ていないとき、あるいは組織が腐っているとき、あるいは成果が認められないときには、辞めることが正しい選択である。出世はたいした問題ではない”

ドラッカー「プロフェッショナルの条件」

さて、子どもがイベントを楽しんでいる間、その他あちらこちら散策をして楽しみました。

その間ずっと考えていたのは、この里山には特別な何かがある、ということです。

それは何か…?

答えは、石坂さんの「思い」です。

石坂さんの強い「思い」がなければ、この里山は生まれませんでした。

その思いを巡る物語の一部を知っていたからこそ、単なる里山とはとても思えなかったのです。

一般企業にはCSR(社会的責任)という考え方がありますし、多くの企業は環境経営を謳います。しかし殆どの企業は残念ながら形だけ取り入れるに留まります。

でもこの里山は位置付けが全く異なります。

「地域から必要とされ愛される会社になる」という思いがすべての出発点です。

失礼な言い方かもしれませんが、産業廃棄物を扱う業者とは思えないほどの素晴らしい環境を、その「思い」が作り上げているのです。(石坂さんは、こんな言い方をされない世界を作りたがっているに違いない…)

この里山で働いている方々も、そんな思いに共感をしてここに集まってくる人たちのようです。本当に皆さん、いい笑顔で、例外なく活き活きと働いていらっしゃいました。

上記ドラッカーさんの言葉を借りれば、「得るべきところはどこか」を考えた結果、ここで働く決断をしたのでしょう。

この日、子どもは虫や水の生き物を捕まえて、捕まえた生き物の住む場所や食べ物などを整理し「生態系サークルマップ」を作り上げてました。自由研究のひとつとして学校に持っていったようです。

私にとって、この里山訪問は、この夏の一番の思い出となりました。

事業というものは、その出発点に人の「思い」があり、その「思い」の強さによって命運が決まるのだと思います。

ある程度の成功体験を経て大きくなった(なってしまった)企業では、その事業の維持、又は会社組織そのものの維持が目的となってしまい、その仕事の中で「思い」を感じることは殆どありません。

その結果、人がその維持の為の「手段」として使われてしまう事になり、活き活きと働く事から遠ざかってしまいます。

先日たまたま見た野中郁次郎さんの講演動画で、野中さんはこんなことを言っていました。

「過去は、身体記憶として「いま」に臨在している」

野中郁次郎

間違いなくこの里山にも、石坂さんの過去と「思い」が身体記憶として「いまここ」に刻まれています。

ある日の講演で、石坂さんはこんなことを言っていました。

「簡単に達成できることを理想に掲げても意味がない 」

石坂典子

石坂さんの物語は、まだまだ序章に過ぎないのかもしれません。

もし、これから三富今昔村を訪れる方がいらっしゃるようでしたら、石坂さんの思いも含め、そのメッセージを身体全身で(五感で)感じ取っていただければと思います。


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