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舞いに懸ける熱き想い/河合ゆうみ「花は桜よりも華のごとく」

諦めない。
舞いを諦めない。
未来を、諦めない。

「花は桜よりも華のごとく」は、河合ゆうみさんの能楽がテーマの小説です。
河合ゆうみさんは、角川ビーンズ文庫より出版された「花は桜よりも華のごとく」(既に絶版しています)でデビューしました。今作は、それを大幅に加筆修正し、富士見L文庫で新たに出版したものです。

舞台は安土桃山時代。主人公の白火は、誰よりも能が好きな日輪座の若太夫。
そんなある日、日輪座が京での興行を打ち、白火の舞いが京で噂になります。それを聞きつけたのは、京一の舞い人、柚木座若太夫の蒼馬でした。彼は白火を自分の座に引き抜こうと口説きますが、白火は断ります。それは、座を守るために、女人禁制の能の舞台に、女の身でありながら上っていることを隠すためでした。
華やかな京の都を舞台に繰り広げられる、能楽と恋の物語です。

この本はこんな人におすすめ

①能など日本の伝統芸能に興味がある
②時代モノを読んでみたいけれど、何から読めば良いか分からない
③魅力的なキャラクター小説が読みたい

それでは、この作品の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!

*能楽に触れられる小説

今作は、京の都を舞台に、二つの能の一座の間で起こる物語です。能と聞くと、どうしても取っつきにくい印象がありますが、こちらは非常に読みやすいです。
「伝統芸能って、興味はあるけれど何から手をつければ良いのか分からない」という方、「能を全く知らない」という方にもおすすめします。能の舞台独特の、神聖で厳かな雰囲気を感じることができるうえ、白火や蒼馬が舞う時の描写が生き生きとしているので、世界観に入り込みやすいです。
また、時代劇などでよく使われる古い言い回しや聞き慣れない言葉も、能用語を除けば少ないので、「時代モノの小説はハードルが高いのでは?」と思っている方(こうさぎは読書を始めた当初、そう思っていました)も、「花は桜よりも華のごとく」からスタートしてみてはいかがでしょうか?

*能の舞台に人間ドラマあり

主人公の白火は、天才的とも言える能の才をもつ男装の舞姫です。どんなことにも真っ直ぐで、少し頑固で、でも誰よりも舞いを愛しています。
そして蒼馬は、京の都で長い歴史をもつ柚木座という一座の若太夫です。京一の舞い人、京一の伊達男の名を欲しいままにし、遊び人な一面もありますが、舞いに対しては真摯に向き合います。
この二人の関係性の変化、蒼馬が白火に寄せる想いにも、はらはらどきどき、要注目です。
ちなみにこうさぎは、白火の幼馴染みの矢涼という笛方の少年が好きです、ぴょん!


私は、絶版になった角川ビーンズ文庫版をブックオフで見つけて全八巻を読了したのですが、かなり筋書きが変わっているのでは? と思いました。角川ビーンズ文庫版のほうが、舞いよりも人間ドラマや恋愛のほうに重きを置いている気がします。
富士見L文庫版でどのように続きが描かれるのか、続刊を期待したいです。
もし角川ビーンズ文庫版が気になる方は、ブックオフやAmazonで是非探してみて下さい。

また、角川ビーンズ文庫版で表紙、挿し絵を担当しているサカノ景子さんは、本作のコミカライズも担当しているので、そちらも是非チェックしてみて下さい。美麗なイラストにぐっと引き込まれます。なお、お話の内容がかなり変わっているので、あくまで別な作品として楽しむことをおすすめします。


舞い人たちが能楽に懸ける熱い想いと、そこに渦巻く恋模様を描いた物語。是非、その美しい世界観を堪能してみてください、ぴょん!

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