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思い出はいつも、「食べ物」とともに。/柏井壽「鴨川食堂」シリーズ

思い出の食を再現してくれる食堂。
あなたなら、何を再現してもらいますか。


「鴨川食堂」シリーズは、柏井壽さんの京都を舞台にした食べ物ミステリーです。連続ドラマ化もされた、人気シリーズとなっています。

「鴨川食堂」は、元刑事の鴨川流と、その娘のこいしが営む、看板のない食堂。そこには、人生に迷う人々が、“もう一度食べたい、思い出の食を捜してほしい”とやって来ます。鴨川食堂では、こいしがお客さんの話を聞き、流がその思い出の食を捜し出して、その料理を忠実に再現します。短編集ですが、一話一話が独立しているので、どこから読んでも楽しむことができます。飯テロ注意な、京都のはんなり優しいミステリーです。

この本はこんな人におすすめ

①美味しい食べ物が出てくる小説を読みたい
②そっと元気をくれる小説を読みたい
③優しい物語にひたりたい

それでは、この小説の魅力を紹介していこうと思います、ぴょん!

*美味しい料理の数々

料理人の鴨川流は、お客さんが来る度、美味しい料理でもてなします。京都の食材も出てくるので、そんなところでも古都の雰囲気を味わうことができます。その料理ひとつひとつがあまりにも美味しそうで、うっかり夜に読むとお腹が空くので要注意です。

また、流は和食から洋食、中華など様々な料理に精通しており、お客さんが探してほしいと依頼した料理を忠実に再現します。その料理に背中を押されるお客さんの姿が、読んでいるほうにまで明日への勇気と活力を与えてくれます。

*はんなり優しいミステリー

流が依頼される食は、お店で食べたもの、知人や家族が作ってくれたものなど様々。それらを追う中で、お客さんが抱える事情がひも解かれてゆきます。

ミステリー要素もありますが、お客さんの想いや過去の記憶にフォーカスが当てられているので、派手な展開はありません。しかし、お客さんが自分の過去を思い返し、思い出の料理と向き合い、過去に決着をつけるまでが淡々と語られ、最後には意外な結末が。

切ない展開もありますが、短編のいちばん最後には必ず、流・こいし親子のかけあいが挟まるので、暗くならずに読み終わることができます。

こうさぎは、「鴨川食堂はんなり」の『第四話 おでん』がとても印象に残りました。どこからでも読めるので、是非気になるお料理の編から読んでみて下さい。

ちなみに、深夜に読むとお腹が空いて大変危険なので、昼間に読むことをおすすめします。何度か寝る前に読んだことがあったのですが、寝付くまでの間、その料理のことしか考えられなくなりました。飯テロ注意です!
京都の美味しいミステリーで、是非「京都旅行気分」を味わってみて下さい、ぴょん!


(2021年7月18日にはてなブログで公開した記事を、一部修正しました。)

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