あらいぐまのハリー第3回
前回(第2回)までのあらすじ
あらいぐまのハリーは、春になり大好きな釣りに出かけ川釣りを始めたら、突然ボブという大きな熊から話かけられた。ボブはハリーが何でも洗うのが得意と聞いたらしく、はちみつなどで汚れた自分の髪の毛をヤマメ一尾と引き換えに洗ってくれないかとお願いしてきた。
ハリーはこれに了解し、ハリーの家で洗うことにした。
第1回と第2回のリンク
第1回 https://note.com/kourin1970/n/na067c985bcd7
第2回 https://note.com/kourin1970/n/n2e3ba768b1a3
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ボブは早速食べもの情報を見つけたらしく、うなずきながら読んでいます。
「他人の髪の毛は洗ったことがないからなぁー」
ハリーは急いでお湯を沸かしながら、ボブの髪をどう洗おうか考えました。
「まずはお湯でゴミを落として髪を湿らせる。次にシャンプーを泡立てて髪を洗う。たぶん汚れがひどいのでお湯で流したらもう一度シャンプーで洗わなければならないかな」
湯沸かしのポットがシュンシュンを音をたてています。
「シャンプーは何にしよう?」
洗面所の棚には、ハリーの手作りシャンプーがいくつか並んでいます。
「べたべた頭のボブにはこのシャンプーがいいかな。すっきり爽やかになるぞ」ハリーは薄緑色の瓶を手に取りました。
ハリーは家で一番大きなおけを外に運び出し、けやきの木で作ったテーブルをボブの後ろに寄せました。髪を洗うにはおけの高さをボブの首のあたりまであげる必要があるので、更にテーブルの上に木箱を載せ、その上におけを載せました。
ハリーはポットの熱い湯をおけに入れ、冷たい水を混ぜて髪を洗うのにちょうどいい温度のお湯を作りました。
そして四葉もようのテーブルクロスを前掛けがわりにボブの身体にかけ、首に結んでとめました。
「じゃあ 洗うよ」
「うん、よろしく」
ハリーはお湯をボブの頭に静かにかけて、木の葉や虫やらゴミを丁寧に落としていきました。
「だいぶ汚れているね~はちみつが糊みたいに固まっているから、お湯で柔らかくして取るからね」
ボブは気持ちよさそうに目を細めています。
「それではシャンプーするね」
ハリーが薄緑色の瓶の蓋を開けると、ボブが鼻をくんくんさせました。
「なんだこのスーっとするいい香りは」
「ユーカリとミントのシャンプなんだ。さっぱりすると思うよ」
「君が作ったの?」
「そうだよ、手作りシャンプーさ、他にも花の香りのシャンプーもあるよ」
ハリーはボブの頭の上でシャンプーを泡立て髪を洗い始めた。大きな熊の頭にモコモコと白い泡がたっていきます。
「今悩んでいるんだ」
ボブは眼を閉じたまま独り言のように言いました。
「何を悩んでいるの?」
「おいらは食べるの大好き・・・何でも食べちゃう」
「あ~みんな熊は怖いって言っているよ。食べられちゃうんじゃないかって」
ボブは黙っていました。
ハリーの小さな手がゴシゴシ、ブクブクとボブの髪の毛を揉みほぐしながら洗っています。
小さなシャボン玉がフワフワと飛んではさわやかな香りを残して消えていきます。
「怖がられて当然だよね。それで悩んでいるんだ。森の仲間を食べちゃいけないだろうなって」
ボブが小さなため息をつくと、白い小さな泡が揺れてふわっと飛びました。
ハリーは黙って髪を洗っていました。
「食べないと生きられない。でも仲間の命をうばって生きるのはね」
「泡を流すね」
ハリーは一度きれいなお湯をで髪の泡を流し、再びシャンプーを泡だてて洗い始めました。
ゴシゴシ、ブクブク、ゴシゴシ、ブクブク
「食事は他の生き物の命をいただいて生きていくこと。まぁもしかすると自分も誰かにその命を与えることになるかもしれないね。でもそれは自然の営みということで、けして悪いことをしているわけではないんだよね」
ボブはゆっくりうなずき聴いていました。
「試しに野菜、果物、木の実だけで生活してみたら?」
「野菜かー、あとハチミツはいいかなぁ~たまにお魚も」
「そうだね。それくらいはいいかな」
「それならできるかもしれない。世界初のベジタリアンの熊ねー」
ボブは微笑み、ちょっと嬉しそうでした。
「最後にもう一度泡を流すね」
ハリーは丁寧に髪を指ですきながら泡を流しました。
あたりにはシャンプーの爽やかな香りがただよっています。
ハリーがタオルでボブの髪を拭き始めると、ボブは気持ちよさそうに
「君に髪を洗ってもらい話も聴いてもらって、とてもスッキリした気分だ。ありがとう」
「また、汚れたらおいでよ。今度は別のシャンプーで洗ってあげる」
ハリーがボブの首に結んでいたテーブルクロスを外していると
「そうだ、君はこれを仕事にしたらいいんじゃないか?」
「え?これって?」
「シャンプー屋をやってみたら? 森のシャンプー屋だよ。こんなに気持ち良かったらきっとみんな洗いにくるよ」
ハリーはボブの提案にうれしいやら照れくさいやら
「そうだね〜考えてみよう」
「開店したら教えてね。僕が宣伝してあげるから」
ボブはそう言って、お礼のヤマメをハリーに渡し大きな手を何度も振りながら森に帰っていった。
つづく>>第2章へ
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