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50代からのすまい#2キッチン

体が不自由になった時にキッチンに着目する点は何でしょうか?IHコンロや、作業台の高さなどでしょうか。少し違う視点でいくつか挙げてみたいと思います。

体が不自由になった方のおうちに伺うと、台所で食事をとっておられる方がおられます。キッチンの調理台のようなところに食事をのせて食べたり、キッチンの片隅に小さなテーブルを置いて、そこで食事をとられています。何故かというと、準備した食事を運ぶ、また食べ終わった食器を片付けるということが大変だからです。

私たちは作った料理(もしくは温めた料理)をテーブルまで運ぶときに、どのように運ぶでしょうか。ラーメンは両手で運びますね。お皿を運び、お箸を用意し、コップに飲み物を入れる。食べたものを片付ける。キッチンとダイニングテーブルを3~5往復ぐらいはしてますでしょうか。これらの動作一つ一つが、手で支えながら何とか歩行している人にはとても難しい動作になります。少し飲み物を飲みたいと冷蔵庫まで行って飲み物を出せたとしても、それを持って移動することが難しいのです。そこで、移動しなくても食べることができるキッチンで食べるという事になるのです。

また、介助者がおられる家でも、介助者が一日外出する際に、冷蔵庫から食事を出すことができないから、ということで、朝から昼ごはんと夕ご飯をダイニングテーブルの上にセットして外出されている状態を見ることがありますが夏場は少し心配です。

体が不自由になってくるとまず調理が難しくなってきます。ですので、惣菜や、宅配のお弁当を利用される方も多いです。今は温めるだけで食べられる冷凍のおいしいおかずがたくさんあり、上手く使えば、調理が難しくなっても栄養バランスのよい食事がとれるようになっています。

しかし、届けてもらった弁当を温めたり、冷凍のおかずをあたためたり、冷蔵庫から飲み物を出したりという動作は必要なのですね。

そこで私は60代からキッチンの形を選べるのであれば、以下のような提案をしています。

まず、独立型や対面型ではなく、壁付け型にし、そのすぐ近くにテーブルを置けるような位置関係を勧めています。作ったものを運ぶ動線も最短ですから、体が不自由でなくても便利です。また車いすや歩行器を使うような状態になってもスペースを自由に調整することができます。

もし今からキッチンの形を変えることが難しければ、食器棚の数を減らしてキッチンのスペースに小さなテーブルを置く、もしくは長く過ごされる自室にミニ冷蔵庫や電子レンジを置いておくというのもよいかと思います。

ちなみにキッチンの下のスペースを空間にして、車いすでも調理しやすいとうたったキッチンもありますが、活用できているのは若い脊髄損傷の方のような方がほとんどです。高さの調整も必要になってくるので、ご病気などになる前からこのタイプのキッチンを導入されるのはお勧めできません。


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