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事務所と所属タレントの関係性…なの?

まあ、急にマスコミが騒ぎ出しているなあという印象のある、ジャニーズ元代表(故人)のあれこれにかこつけた騒動(あえて騒動という言葉を使ったけれど、どういう言葉を使うのが適正なのかよくわからない)。
この辺の報道について、感じたことをつらつらと書きなぐっていく試みです。

※有料記事設定になっていますが、全文無料で読めます。


1)企業のCMにおける契約更新しない問題

ジャニーズ所属タレントをCMに起用していた企業が、今回の騒動を受けて契約更新をするしない、契約終了にするしないという話が飛び交っております。
この点については、個々の企業の考えによるものであるので、どうするかを選ぶのは企業の自由と私は考えます。といいますか、「契約を継続すべき!」とか「契約を辞めるなんてひどい!」というのも、また違うかなと。

もっとも、個人としての感想はありだと思いますけどね。個人的にやめるべき!っていうのは自由でしょう。逆に継続して!っていうのも自由です。好きなタレントがCMで起用されていたから利用していたのにって思いは、多かれ少なかれ誰でもあるものですし。だからこそ残念とか思うのは、自由であるべきです。
あくまで、【個人の感想】としてという条件が付きます。むやみやたらに「国民」とか「若い人」とか「ジャニーズファン」とかに広めるのは、ダメです。

企業がなぜタレント(所属事務所を問わず)を企業の宣伝に起用するかといえば、もちろんその商品イメージもありますけれど、企業イメージをよく見せたり、そのタレントを好意的に思っている人に知ってもらうためというのも一つにあるんですよね。なので、好意的に思われていないと感じるタレントとの契約を切るのは、広告の原理としては理解できるところであります。

という話をすると、
「ジャニーズ所属のアイドル(タレント)は被害者であって、問題は会社の経営陣じゃないか!関係ないだろ!」
ということを言う方も一定数いるでしょう。

この辺りは、【顧客は誰なのか】という考え方の問題でして。
「ジャニーズタレントをCMで起用している企業は使わない」
と考える顧客が多い会社は、契約を解除するという判断を下すのが当然と考えます。
逆に、
「ジャニーズタレントをCMで起用してたとしても、その企業(商品)は利用し続ける」
という顧客が多ければ、契約解除する必要はないと考えてもおかしくありません。

もう少し複雑に考えましょうか。
例えば、現在100人の顧客がいたとして、ジャニーズタレントを起用し続けることで5人の顧客が離れ、新規の顧客は入ってこないとしたら?
同じく100人の顧客がいたとして、ジャニーズタレントとのCM契約を打ち切ることで50人の顧客を失ったが、その代わり80人の新規顧客を得ることができたとしたら?

数字はシンプルにしました。たとえですし。
宣伝効果の計算は、本当はもっと複雑なものです。ここではあくまで一例。
要は、自社(商品)にとってプラスかマイナスかを計算した結果、契約というものは決まると思うのですよ。

もちろん、その計算がいつだって正しいとは限らないのは、言うまでもありません。実は、契約を打ち切ったことで計算以上に顧客が減ったり、計算よりも新規顧客を得られないこともあります。CMタレントの問題とは別の問題で売り上げが落ちることもしばしあります。
そこは未来にならないとわからない結果ではあるのですが、今現在の状況でそう予測したのですから、あとは「そういう判断なんだ」以上でも以下でもないと思うんですよね。

2)ジャニーズタレント起用がジャニーズ事務所を儲けさせる議論

ジャニーズタレントを起用することで、事務所が儲け続けることができてしまう。
だから、ジャニーズタレントは起用すべきではない問題。
もう少し根本的な話ですね。

個人的には、被害者への慰謝料を捻出するという目的においては、ジャニーズ事務所は存続していただかないと困りますし、ジャニーズタレントは働き続ける必要があると考えます。

だってねえ。
むしろ、賠償も何もなく企業として解散したので、被害者への賠償責任は消滅します!のほうが問題な気がするのです。
しかも、加害者はすでに三途の川を渡っているわけですし、負の遺産は娘が相続しているわけですけれど、今ある資産を全部売り払って事務所を解散して、それで支払いって終わるんですかねえ?という疑問があります。あるという確証があるなら、まあ分からなくはない。

ただし、この話は「性的なパワハラ」とか「枕営業」的な行為とか、「忖度による圧力」とかが「現在一切行われていないし、行う人(加害者)が事務所内にいない」ということが大前提となります。現在進行形で続いているのならば、まずやるべきはその人を指導なり排除なりすることでしょうし、経営陣が現在進行形でそのようなことをしているのならば、そのような企業に仕事を与えることはハラスメントに対するお墨付きを与えるようなものと批判されても仕方ありません。
これについては、第三者委員会などで「(過去はさておき)現在は存在しない」という話が出ているので、それを信じることにします。

あるなら、今のうちに全部吐き出して、粛清したほうがいいとは思う、よ?

過去の話については、許さないという意見が出るのは仕方ないとは思います。自分もちょっとぎょっとしたところはあります。そういう意味で、新社長となったヒガシについてはあんまり信用できないところはあるんですけど(経営者として、もう性的パワハラをしないかどうかという意味で)、そこは取引先企業の皆さんの判断にお任せするだけでしょう。

とはいえ、この議題について、実はもう一つだけ疑問というか、議題があると感じています。

3)「ジャニーズ事務所」という企業をどうしたいのか

自分、報道とかあれこれ見てて感じるのが、
「皆さん、ジャニーズ事務所とジャニーズ事務所所属タレントの存在をこの世から消したいのか、それとも会社(もしくはタレント)が被害者に対し賠償金を支払ってほしいのか、どっちなの?」
ということ。

一般的に、この手の問題の解決方法は「謝罪」「(もうしないという)誓約」そして「賠償金」です。
謝罪と誓約については、加害者である当人からはもらえないことがわかり切っています。死んでるからね。今更無理なのよな。
なので、会社という立場で誓約するしかありません。
(この点について「なんで生きている間にやらなかったんだよマスコミ!」という意見はその通りであるんだが、今から過去に戻ることはできないので棚上げするしかないと思うところはあります…許す許してないという話とは別)

なんですけれど、自分が報道その他で感じるのは、
「被害者の会の皆様も含め、ジャニーズ事務所とジャニーズ事務所所属タレントをこの世から消そうとしていない?」
ということです。
ジャニーズ事務所という企業がこの世から消えれば、性搾取はなくなるはず!
ジャニーズ事務所の力で売れたタレントがこの世から消えれば、芸能界は健全になるはず!
みたいな空気をひしひしと感じるんですよね。

なんだったら、
性搾取さえなければ、僕はタレント(アイドル)として日の目を見たはず!
的な空気さえ感じることがあります。

なんというか、賠償金を支払ってほしいのか、性搾取をなくしてほしいのか、性搾取の現場になった事務所を消したいのか、性搾取もあってスターになったタレントを地の底に落としたいのか。
全部の気持ちがあって見え隠れするのが気持ち悪いなあと感じるところがあります。

ジャニーズ事務所タレントのファンとか、ジャニーズ事務所に関する対応において気持ち悪いと感じる人たちの心情って、こういう側面もあるんじゃないかなあと私は感じるのです。
特に、スターになったタレント(アイドル)の功績を全部なかったことにすべき的空気に対し、ファンが反論するのは割とわかるところがあります。きっかけはさておき、長く起用されるタレントさんって、やっぱりその人の素質なんですよね。性搾取云々ではなく。しかも、今アイドルしているタレントさんたちがジャニー氏に性搾取されていたかというと、ちょっと疑問なところもありますし。そもそも性搾取されてないけど起用されスターになったアイドルさんもいるんじゃないかなあ。
(ちなみにアメリカ的スキンシップも、日本人の感性だと(不愉快に感じれば)セクハラになりそうだなあと思ってます。なので、直接的な性搾取はさておき、どこからをセクハラとみなすかで被害者の数と範囲は変わりそうだなあと感じています)

個人的には「ジャニーズ事務所に所属している限りは性搾取で売れたという色眼鏡をかけられがちなので、問題のないアイドルは事務所移籍とかもありなんじゃね?」とは思います。芸能界(特にTV業界)において、必要だとされるのならば、事務所関係なく起用されるのがこの世界です。ただ、事務所の力で仕事がもらえているタレントは、移籍したら仕事はなくなるでしょうね。

一応この話は「TV局などが忖度をしない・ジャニーズ事務所が圧力をかけない」という誓約を前提にしています。なので、相変わらず忖度が発生したり圧力をかけているのならば、確かに事務所はいったん解体したほうがいいだろうなあとは思います。
思いますが、それを被害者側がその空気を隠すことなく訴えるのは、被害者側がうさん臭く感じる原因であり、それはそれで損にならないのかなあと思うところではあるのです。

4)辞めジャニーズが起用されない問題

最後に。
「忖度をしないなら、辞めジャニーズに圧力をかけないのなら、のんも起用しろよ!」
というネットの声。

とりあえず、のんちゃんの件に関しては、ジャニーズじゃないからなあ…。自分もTVその他の起用が増えてほしいなあとは思うところではありますが、これは起用する側の問題もあれば起用される側の都合もあるので難しいところ。
(ちなみに映画や舞台のお仕事は増えているし、歌などのアーティスト活動も活発化しているので、TVだけが俳優業ではない現状においては温かく見守っていくのもありかなと思います。TVの仕事って結構安いらしいし)

話を戻して、元ジャニーズタレントの皆様において。

まず、ジャニーズ所属タレントが事務所を辞めるとそれまでのTV番組を降板する羽目になるのは、単純に「ジャニーズ事務所」という枠で出演しているからであり、要はバーターというか「包括契約」的な要素が強いと思われます。そのうえ、事務所が変わるとなれば、支払いも変わるわけで、改めて契約を結ぶ必要があるわけですが、辞めジャニさんって辞めた直後は所属事務所が決まっておらず、契約上は個人事務所扱いになるところが降板の理由として大きいのではないかなと思います。
要は、ギャラを支払うための契約や口座情報を、TV局側が持っていない。

では、直後の降板は仕方ないとして、その後新事務所設立なりどこかの事務所に所属なりした後もなかなかTVに出演することがない問題について。

……これさ、身も蓋もないことを言うと「需要がない」からじゃないかなあ……。

需要があるタレントは、辞めジャニであっても起用されている印象があります。それも昔から。
中居君もそうだし、もっくんもそうだし。
一部じゃん!とか、結構経ってからだよ!とか言われがちですけど、タレントというものはそういうものだと思うのです。
ここでいう需要というのは、「番組の内容」や「スポンサー」のお話です。残念ながら、ファンの人数とかではないところに注意が必要です。
なんというか、ジャニーズだから出演できていた程度ならば、本職の人に出番を譲って欲しいと思うのはだめですかねえ。演技にしろ、お笑いにしろ。

あと、使いにくい演者は、よっぽど有能だったりTV的に重要でない限りキャスティングから外れやすいという法則があります。使いにくいってのは、忖度とか圧力とかのほかに、演者の性格とかの話。一緒に仕事するにあたって、面倒な人と面倒でない人、能力が同等でギャラランクも同等ならばどっちと仕事したいですか?って話。いい人なんだけど気難しくて気分屋で振り回されがちな人と仕事したくはないよ、ね…?みたいなお話です。
会社ですとその企業の一員ですのでそんな人とも仕事をしないといけないんですけど、TVとか舞台とかのお仕事は、いうなれば個人と個人が集まって行う仕事のようなものです。仕事をするために集まる相手は、ある程度選ぶことができます。だったら、仕事しやすい相手と仕事するよねって話。

これについては、ファンが「確かに気難しいところあるけれど!でも、本当はとってもいい子なの!」といったところで、どうにもならないと思うんですよねえ。起用する側も人の子ですし。

5)単純に良い悪いで切り捨てられない話だと思う

……ここまでの文章は、実は9/10の仕事待機中に勢いでパーッと書いたものでした。二晩ほど寝かせて考えた結果公開しようとは思ったものの、これを読んで一番危惧しているのは。

「濱澤はジャニー氏の未成年性暴力を肯定するのか?!」
「性暴力を振るうような反社会的な組織を許していいのか?!」
「っていうか、単なるジャニファンの一人じゃねえか?!」

みたいな、頓珍漢なことを言い出す人がいそうだなあということです。自分、あんまりジャニーズタレントさんにそこまで興味ないんですけどねえ。この文章を斜め読みして「ジャニーズ事務所擁護」「性暴力賛成」と捉えられると、ちょっと悲しいところがあります。

自分個人としては、ジャニー氏の性暴力も、その他報道にあった事務所内先輩タレントやテレビ局の人達による性搾取的暴力も、許してはいけないと考えています。過去にそういうことをしていた人たちは悔い改めてほしいし、本音を言えば自分たちがやらかしてきたことを自覚した上で反省し、被害者に謝罪をしてほしいと思います。

まあ、自覚することはないだろうな、と思うのが、元いじめられっ子のこれまで生きてきた上での率直な感想ですが。

そのうえで、ジャニーズ事務所そのものをこの件を持って今すぐ廃業に追い込むような真似は反対です、という立場です。
理由は、今現在所属しているタレント(アイドル)の皆さんは、(被害者の可能性はあっても)加害者ではないから。彼らの今後…例えば移籍先とか、今後の身の振り方とか、そういったものを考える余地もなく事務所だけを潰せば良いというのは、別の被害者を生み出す結果にしかなりません。

まあ、でも。
最低限、名前は変えたほうがいいんじゃないかなとは思います。加害者の名前を冠したままの事務所名だと、延々とこの話をされ続けるわけですし。
(もちろん改名したところで(旧:◎◎)みたいな注釈がつくので一緒だろという見方もありますけれど、タレント名に所属団体表記をせねばいけない環境はそこまで多くないと思いたいところ)

ジャニー氏だけじゃなく、例えば世に多々存在するプロデューサーとか、専門家とか、先生や専門家的立ち位置の人にその才能を見出され、世に出た人たちはいっぱいいます。その人達に見出されなければ、世に出ることはなかったでしょう。逆に言うと、そういう人達に出会うことなく消えた才能を持った人たちも多数いたと思います。
そういう、「才能を見出す人」という能力は、誰もができることではないと思うんですよね。

もちろん、そういう立ち位置だからこそ、見せかけの才能を偽造することもできるでしょうし、才能を世に出すためにあんまりよろしくない手段を使うこともあるでしょう。そこは断罪されるべきだとは思います。
思うけど、それとこれは分けて考えたほうが良くね?とも思うのです。

これは、悪い人に才能を見出された世に出た人は、みんな悪い手段でスター街道を駆け上がった悪い人たちと考えている人が散見するからあえて書いているところがあります。

なんといいますかね。難しいんですけど。
ジャニー氏は悪人、でもいいんですけど。
ジャニーズ事務所所属タレントは全員悪人みたいな風潮になるのだけは避けてほしいな。
好き嫌いは仕方ないけどね。

ってところが、現状の報道への反応に対する、私の感情でもあったりします。シンプルに存続で良い悪いで切り捨てるのは、やっぱり愚かなことの繰り返しでしかないと思うのです。

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