【有料級】公務員になりたい社会人が、社会人経験者向け公務員試験の予備校利用を検討する際に、気をつけること

本論に入る前に、少しだけ前提となる話にお付き合いください。

受験戦略の要諦は、
「不合格要因をできる限り排除し、
 合格要因をできる限り増やすこと」
です。

予備校の利用は、合格要因と不合格要因のいずれになるのでしょうか?
それは、受講生が有する可処分時間と、受験ノウハウと、置かれている環境によります。

予備校を利用して、短期間でスムーズに合格する方もいれば、
なかなか合格できずに再チャレンジを繰り返す方もいます。

予備校を利用するのか、
予備校に利用されるのか、
受験開始の前に、
メリット・デメリットを、
きちんと検討しておくことが重要です。

どのように活かすかを含めて、決定権は受講生にあります。
予備校は利用するものであって、利用される(先にお金だけ払って受講しなくなる等)ものではありません。

時間とお金がないであろう多くの社会人受験生の方々には、
賢い受験生になられることを切に願っております。

※くどくて恐縮ですが、誤解を与えることがないように、予備校を利用しない方がいいという立場ではないことを明記しておきます。予備校を利用した方が、一定数の受験生にとって合格の可能性が高まることは間違いありません。費用対効果などを考えて、貴重なお金と時間を使って、悔いの無い選択をしていただきたい、というのが筆者の願いです。

ということで、
本論に入っていきたいと思います。

「公務員になりたい社会人が、
 社会人経験者向け公務員試験の予備校利用を検討する際に、
 気をつけること」

とは、何でしょうか?

社会人経験者向けの講座について、
受講内容や費用は、各予備校のパンフレットを資料請求して確認することができます。
オンラインに注力している予備校では、HPに掲載しているところもあります。

択一・論文・面接対策が全て含まれる、いわゆるフルコースの価格帯は、大体10万円台半ば~20万円台半ばがボリュームゾーンとなっています。
この価格を下回る場合は、内容を絞り込んでいる場合が多いです。
(受講科目の内訳や講義時間などの定量的な部分を比較するとわかります)。

上記の確認を行う際に、どのような点に気をつければよいのでしょうか?

分かりやすく伝えるために、
誰もが知っている某大手予備校の、
社会人経験者向け講座のガイダンス内容に沿って、
多くの社会人が受験する「特別区経験者採用試験」の対策として有効か?という視点でシミュレーションしてみたいと思います。

某大手予備校の受験戦略は、
一口で言うと、「王道」です。

以下、ポイントを列挙します。
・講義を受けて復習をコツコツ続けていけば合格に必要な実力が身につく
・どの試験を受けても合格できることを目指す
・受講期間は1年間を想定
・択一対策を重視
・択一試験では6割得点を目標とする
・英語は英単語の復習、時事は新聞を読む
・論文対策は試験の3か月前から(受講9か月後に本格的に開始)
・論文対策として、大卒程度試験の政策課題式論文の知識習得から
・面接対策は講義で考え方と準備の仕方を知るところから
・模擬面接は二次試験前の10月から開始

社会人経験者向けのパターンとしては、「択一・知能重視タイプ」に分類できます。択一対策のうちでも、一般知能(主に数的処理)を網羅的に対策する点が特徴です。

このタイプのメリットは、どの社会人経験者向け試験であっても、合格点を取れるようになれる可能性があることです。試験内容について、網羅的に講義を提供してくれますので、ついていけば、オールマイティに得点することが可能になれます。

公務員試験では、ほとんどの志望先で知能科目が出題され、全体の中に占める割合が高いことが多いので、知能科目を得意分野にすることができれば、非常に強力な武器になります。

他方、デメリットは、以下の点が考えられます。
①時間がかかること
→講義の時間を確保することができるか?というのが最大の課題です。そして、講義を受けるだけでは、試験問題を自力で解くことはできません。講義は解き方を解説するものですから、自力で解けるようになるためには、自身で演習を重ねて、復習を繰り返していくほかありません。

ですから、予備校の時間を試算する際は、講義の受講時間+講義の復習時間+演習時間+移動時間をセットで考えるようにしましょう。

②途中で挫折する確率が上がるリスク
→知能分野は非常に重要な科目ですが、はじめから解けることがほとんどなく、徐々に理解を重ねていくことで得点できるようになる、という特質があります。

このため、はじめから挫折する場合に加えて、途中でイヤになってしまう、最後まで取り組んだけど得点が上がらない・安定しないといったことが頻繁に起こります。
 
特に、社会人受験生は、学習範囲を広げても、復習や演習にかける時間を十分に確保することができず、結局、講義だけ受けたけど試験本番で得点できない、というパターンになりがちです。このパターンは、社会人受験生あるあるといえるくらい、よく見られます。

③志望先の試験の種類によっては、オーバースペックになる。
→新教養試験といわれる「Logical-Ⅰ・Ⅱ(知能重視タイプ)」「Light(基礎力タイプ)」等の試験や、SPIやSCOAなどの民間型の試験を採用している志望先を受験する場合は、オーバースペックとなる可能性が高いこと

過剰な準備をするということは、別の試験対策に回せた時間を使えなくなる=不合格要因になる可能性があることを意味します。


さて、特別区経験者(事務・1級職)で合格するための条件を確認した上で、予備校利用を検討するためのポイントをお伝えしたいと思います。

条件1:
択一は15点以上とれば足切り突破できる

→試験時間は105分、30問必須回答+15問中5問選択回答
→30問の内訳は、文章理解8問、数的推理4問、判断推理4問、資料解釈4問、空間把握4問、時事6問
→選択15問は知識問題(社会科学、人文科学、自然科学)

細かい試験対策は述べませんが、
以下のように得点できれば、知能対策をそれほど取り組まなくても足切りラインである15点を突破することができます。受験経験がある方からみれば、結構現実的な得点設定であることがご理解いただけると思います。

ちなみに、知識問題は社会科学の学習だけで十分です(人文科学は国語問題を除き結構難しいです)。

30問中13問…文章理解で6問、判断推理2問、資料解釈2問、時事3問
+5問中3問…社会科学3問
=16点

以上を踏まえたポイントです。
某大手予備校のように、24点を目指せば確実に足切りラインを突破することができますから、目指せるのであれば目指せば良いと思うのですが、実際にそこまで長期的に取り組んで達成することができる受験生がどの程度いるのか?(自分はできるのか?)という点は、よく考えた方がよいでしょう。


条件2:
第 1 次試験・選考の合格者は、論文の総合成績による。
論文は政策課題論文と職務経験論文の2本(各90分、最大文字数1500字程度)がある。

ポイントは、論文試験が重要ということです。
しかも2本ありますから、両方とも相応のレベルで書く必要があります。
毎年、文字数足らずなどで涙をのむ受験生が多くいます。
そうならないためには、1日に2つの論文を仕上げる能力を身に付ける必要があります。

これまでの指導経験を踏まえると、論文試験対策は、3か月程度あればできないことはありません。しかし、受験生があらかじめ準備してきていて、かつ、集中的に添削して、フィードバックを重ねるなど、密度の高い指導ができれば、という条件が付きます。講義を受けて、数回、答案を書いてみる程度では、はじめから論文をある程度書ける方を除き、合格できるだけの実力を身に付けることは難しいのではないかと思います。

模範答案を暗記して、その答案と同じテーマが出題されれば、突破出来る可能性はありますが、全く違うテーマや少しずらしたテーマが出題された場合に現場で対応する力を身に付けるには、できれば半年程度の準備期間を持つことが望ましいといえるでしょう。

また、
大手予備校のフルコースの受講を検討する際は、必ず論文添削がどのくらいのペースで行われるかを確認するようにしましょう。論文添削無制限をうたっていても、実際には答案を提出して返却されるのが2~3週間後という場合もあります。また、直前期になると、もっと時間がかかる、という場合もあります。

論文対策について、はじめから模範答案を書けるような完成度の高い受験生以外は、必ず添削を受ける必要があります。添削で得た「気づき」を次の答案に反映していく、という改善プロセスを通じて、論文の実力を高めることができます。

ご自身の受験開始時点の論文の実力を踏まえて、どのようなプロセスを経て、論文の実力向上を図るか?という視点で、検討していただければと思います。

条件3:
面接は、職務経歴書(面接カード、4つの質問に各320字以内で記入)を申込時(7月中旬締切)に提出する。さらに、10月最終週または11月第1週に行われる面接で、40分以上にわたり、深堀りされながらの質疑応答ができる。

ポイントは、面接対策で準備することは2つある、ということです。

まず、①二次試験を見据えた職務経歴書(面接カード)の作成。

職務経歴書(面接カード)は、7月中旬までに提出する必要があります。
これを裏返せば、7月中旬時点で、10月最終週または11月第1週に行われる二次試験(面接)で使用する資料を確定させる必要がある、ということです。

最終合格を勝ち取るには、面接試験本番を想定した内容を作成することが必要となります。職務経験を存分に盛り込むことを考えると、職務経歴書の準備時間として1~2か月程度は欲しいところです。

以上を踏まえると、予備校の面接カード作成講座の時期や、面接カードの添削サービスがいつから利用可能か、何回利用できるのか、提出から返却までの期間はどれくらいか?といったことを確認する必要があります。


次に、②本番を見据えた面接対策。
特別区経験者の面接試験の特徴は、エピソードの深堀りにあります。
面接は、面接官3人と受験生1人の形式で行われます。
面接官は、それぞれ、どう思った?なぜ、そう思った?といった形で、徹底的に深堀りしてきます。答えても、1回で納得するということは多くなく、形を変えて説明を繰り返す、ということがよく行われます。

深堀りの面接を対策するためには、面接官の深堀りの質問を想定して、それに対する回答案を作成した上で、その回答で面接官を説得させることができるかという観点から、回答をブラッシュアップしていく必要があります。
この説得力を持たせた回答を作れるかどうかで、最終合格、そして、最終的な順位が決まるわけです。

以上を踏まえると、職務経歴書(面接カード)を作成した時点で、模擬面接を最低1回は受けることが望ましいといえます。実践してこそ、実のあるフィードバックを得ることができるからです。
その後も、二次試験までに、回答をブラッシュアップしながら、定期的に模擬面接を受けることが望ましいでしょう。実際に声に出して伝えること、面接官がどのように受け取ったかといったことを把握することができるからです。

大手予備校では、模擬面接が何度もできることをアピールしていることがよくあります。しかし、実際には、利用できる時期が限られていたり、申込み枠が多くなくて、申込み時期になったら申込みが殺到して、あっという間に枠が埋まってしまう、ということがあります。
模擬面接を受けられることは、予備校利用の大きなメリットの一つです。論文添削、面接カード添削と並ぶ3大メリットと評してもよいと思えるくらいです。


以上、長々と説明して参りました。
お付き合いいただきありがとうございます。
細かい論点などについては、稿を改めて解説していきたいと思います。

最後になりますが、
予備校利用の検討は、受験生の将来を左右する極めて重要な選択につながります。高い倍率を乗り越えて、公務員になれるかどうかの大きな分岐点といえます。
(予備校を利用しないと決めた場合は、予備校が提供している内容をどのように埋めていくか、具体的には、どのようなスケジュールで、どのように勉強していくか、添削をどうするか等を個別に検討していく必要が生じます。)

どの予備校が良い悪いということではなく、
限られた時間とお金の中で、予備校利用の有無で悔いを残さないための参考資料になれば幸いです。

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