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Vol.4 難関の法定地上権、覚えないで、「なぜこうなるのか」を押さえていこう

こんにちは。TKです。今日のテーマは、勉強編ということで「法定地上権」について書いていきたいと思います。

1.法定地上権とは?

一言でいうと、「自分の土地で無い所に住む権利」です。

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この図で見てみると、AさんはBさんからお金を借りています。しかし、Aさんはお金を返すことが出来ず、抵当にしていた家を手放すことになりました。そして、Bさんはその家を競売してCさんに売却しています。

これで見ると、Cさんはその家にそのまま住めるのかもしれません。しかし、よく見てみるとその家の建っている土地はAさんの所有のままです。
こうなると、Aさんが自分の土地であることを理由に家を渡してくれなかったり、退去をCさんに求めるかもしれません。これでは、安心して売買も生活も出来ませんよね。

そこで、民法では「法定地上権」という権利を規定して、このようなケースで家を購入した人に地上権という土地の利用権を法的に与えることで、引き続きその家を購入した人が住める権利を与えているのです。

で、追加なのですがなんでこんな権利が認められているのかというと、日本の商慣習が理由です。
日本では、古くから土地と家の別々の取引が認められてきていました。なので、別々に抵当権を付けることも可能でした。そこで、そういう時のトラブルを防止するために法定地上権を決めたというわけです。

2.法定地上権の要件

でも、ここで気をつけてほしいのが、なんでも法定地上権が認められるわけではないということです。

ほとんどの法律は、バランスを取ります。ここで気を付けるべきバランスは、「家と土地の価値」です。

家を建てると、基本的には土地の価値は下落してしまいます。なぜかというと、「買った人が思い通りに使えない」からです。家を建ててしまえば、その家を人に貸して家賃を取るか、家を転売するかしかその土地の使い道はないですよね。でも、何もない土地(=更地)なら自分の好きな家を建てたり、マンションを建てたり色々なことに使えます。なので、家を建ててしまうと9割その土地の価値は下落してしまうとさえ言われています。(そしてその分、土地の抵当権価格も下がる)法定地上権を認めることは建物にとってはメリット、土地にとってはデメリットになるというわけです。そこで、法定地上権に成立要件を付けることで土地の価値も守っているのです。

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要件は、この4つです。

①:抵当権を付けた時に建物が存在したこと
これは、土地の価値を守るためです。もし、抵当権を付けた時に何もない土地(=更地)であれば、その土地は100パーセントの価値がつきますが、建物を建てれば、上の理由で土地の価値が大きく下がってしまいます。なので、抵当権を付けた時の土地の価値を守るために更地には法定地上権がつかないのです。
ただし、既に建物がある土地に抵当権がついてから建物が一度滅失して再築したケースでは法定地上権が認められます。これは、抵当権が家を建てた状態の地価で設定されているので、価値の下落が起こらないからです。

②:土地か建物の一方もしくは双方に抵当権があること
一方に抵当権が付いている場合には法定地上権が認められますが、双方に抵当権がある場合とは、家と土地両方に別の抵当権があり、競売を別々に行ったような時のことです。このようなケースでは、家を購入した人を守るために法定地上権が認められるというわけです。
ただし、似た単語に共同抵当というものがあります。これは、1つの抵当権を家と土地両方に掛けるものです。
なぜこんなものがあるのかというと、例えば家だけの抵当権では家が災害で壊れたりすれば抵当権を実行できるものが無くなるリスクがありますし、土地だけであれば、地価が大暴落するリスクがあるので、共同抵当を付けることでどちらかがダメになっても抵当権の価値を守る事が出来るからです。
この場合は法定地上権が認められません。理由は、共同抵当では更地としての価値で抵当権を付けるからです。(家・土地両方の権利を持っているので、実行時には壊して更地で売ることが予想されるためです。)なので、法定地上権が成立すると土地の価値が大きく下がるためです。

③:抵当権を付けた時、家と土地の所有者が同じであること
このケースは、土地を抵当権に掛けており、最初は家・土地で同じだった所有者が抵当権実行時には別々になってしまったような場面の事です。そして、土地が競売され上の家が誰かに貸し出されているような時をイメージしてください。
 このような場合なら、別人所有になった時に決めた土地利用権を使えばいいかもしれません。しかし、土地利用権はあくまでも賃貸借契約でしかありませんから、競売のような売買契約に負けてしまいます。(売買は賃貸借を破る)
また、このケースでは土地に抵当権を付けた時には既に家が建っており、抵当権者は法定地上権の成立を予測出来ていたとも言えるので、賃借人の権利を守るためと合わせて法定地上権が成立するというわけです。

但し、抵当権設定(家に)を行った時に家・土地が別々の所有で実行時には同一になっていた場合では、法定地上権が成立しません。
これは、元々家の所有者が土地の所有者に対して土地利用権を持っているためで、競売されたときに抵当権に乗っかってその権利が引き継がれるため、法定地上権を付ける必要がないためです。

長くなりましたが、法定地上権の要件はこんな感じです。読んでいただき、本当にありがとうございました。
































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