ドキュメンタリー 「シークレットラブ 65年後のカミングアウト」 ネットフリックス

長年連れ添ったパートナーと暮らした家には、二人の歴史や思い出が詰まっていた。
80代後半になってパートナーの一方がパーキンソン病を患い、日常生活に不自由が出てきて、介助も必要になってきた。
が、お互いにすでに90歳に近い年齢で、いわゆる老々介護になる日も間近い状態。
それでもなんとか二人は仲良く思い出のたくさん詰まった家で暮らしている。
二人には子供はなく、遠くに住む姪が二人の状態を心から案じて、安心安全な住まいと適切なケアを受けられる環境(介護施設や高齢者専用住宅)を勧める。
二人は経済的な問題はない。
二人で長年働いてきて、自分たちの家も持っていて、そこそこ費用の掛かる施設や高齢者住宅で暮らす経済的余裕はある。
が、二人は転居にあまり乗り気ではない。
今の家の周囲の施設は高額で、二人の経済力なら入居可能だが、二人して長生きした場合は貯蓄が枯渇する心配が生じる。
だから二人は住み慣れた地域の施設入居にためらいを感じている。
思い出の品々を処分して、お気に入りの家具を処分して、友人知人の多い地域から離れて、親族がいて、施設費用も安価な地域へ移り暮らすことに踏み切れない。
高齢者家族あるあるだ。
二人の身を案じる姪は、そんな二人のためらいがもどかしく、二人の為を思ってあれこれ提案することを否定されて傷つき涙ぐむ。
介護者あるあるだ。
が、これは老々介護家庭の終の棲家探しのドキュメンタリーではない。
二人は1940年代に出会って以来ずっと愛を育み続けたレズビアンカップルなのだ。
二人は時代の先駆者でもあった。
女子プロ野球の選手の経験もある女性アスリートとしての先駆者でもあり、その後は企業で働く女性として、人生を自ら切り開いて生きてきた人たちだ。
同性愛はアメリカでも長い間タブーとされていて、二人はレズビアンであることがバレないように細心の注意を払いながら、「仲の良いいとこ同士」として一緒に暮らしていた。
二人の半生を、大量の写真やビデオで振り返ることができるところに、アメリカの豊かさを感じた。
同じ年代の私の母は東京で生まれ空襲で家を焼かれて生まれてから10代の頃までの写真は一切残っておらず、栄養失調で結核を患った。
父も東京で生まれ、空襲で片足の膝から下を失った。
私の両親が思い出も健康も学業(勤労動員でろくに授業をうけられずに卒業)も失っていた時代に、アメリカはこうだったのか!という感慨がある。
というのはさておき、そんな「進んだ国」アメリカでも、当時から今に至るまで性的マイノリティに対する差別や偏見は大きい。
二人がカミングアウトするのは65年経った時で、周囲は理解を示している様子がうかがえて、心が暖かくなった。
性的マイノリティであることを隠し続け生きていた困難がありながら、エンディングでの「後悔していない。人生を謳歌した」という彼女たちのセリフは心を打つ。
1時間22分のドキュメンタリーは、長い時間かけてこのカップルの人生の取材・撮影をして作った丹念さが感じられた。
泣きながら見てしまった。
そして、映画「プリティ・リーグ」をもう一度見てみようという気分になった。
Netflix

65年間隠された、2人の女性の美しい愛。80代レズビアンカップルのカミングアウトを描いたストーリーがNetflixで配信 | ハフポスト LIFE (huffingtonpost.jp)

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