映画 「渇水」
(ネタバレあり)
主人公・岩切は、水道料金滞納者の自宅を訪れ督促をし、支払えない世帯の水道停止を行う水道局員。
雨不足で給水制限のかかる真夏日が続いている中、水道料金を払えない(支払わない)世帯の水道を止めて回っている。
水道料金が払えない事情は世帯によって異なるが、多くは貧困家庭である。
その中で二人の女の子を抱えるシングルマザーの女性は、岩切から生活保護の受給を提案されるが、疎遠な親に連絡が行ったりするから無理 と拒絶し滞納を続けている。
ストーリーは、水道料金滞納者の水道停止を行う岩切が、シングルマザーの母親が男のもとに行ってしまいネグレクト状態にある幼い姉妹(恵子と久美子)とのかかわりを中心に展開する。
姉妹の状況は、映画「誰も知らない」に似ている。
男を渡り歩き(それが仕事でもある)母親は、めったに家におらず、しっかり者の姉がヤングケアラー状態だ。
主人公の岩切は、自身の家庭にも問題があって、姉妹と関わることや水不足の状況などが重なって、映画の後半で思いがけない行動に出る。
その行動に至るまでの描き方は丁寧だった。
中途半端な同情や「かわいそうに」という大人の言葉が、幼い子供たちを追い詰める様子が見ていて切なくなる。
が、それでもやっぱり、ライフライン(水道)の滞納世帯を把握する水道局員が、社会保障のセーフティネット担当部署と連携が取れないのかなぁと感じた。
生活困窮者支援事業や、児童相談所や、水道局が、セクショナリズムや業務上知り得た個人情報管理とかを優先させているんだと思う。それで社会保障制度からこぼれ落ちてしまう人たち(この映画でいえば幼い子供たち)が生まれてしまうのではないか、という思いが映画を観ながら頭の中をぐるぐるしてしまった。
困窮者支援担当部署や児童相談所や地域包括支援センターと連携できれば、水道停止を実行する職員たちの心理的負荷も減るだろうから、映画の結末も変わったかもしれない・・・という歯がゆさを感じさせる映画だった。
映画『渇水』公式サイト - KADOKAWA
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