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人生を変えた一冊

まずは、私の大好きな本の話をさせていただきます。
サマセット・モーム『月と六ペンス』です。

こちらは、芸術家ゴーギャンのことをモデルにして書かれた作品です。
登場人物のストリックランドという男は、ゴーギャンがモデルとなっておりますが……
実際のところ、どこまでゴーギャンを参考にしたのでしょうか?笑
ゴーギャン、こんなに迷惑な男じゃなかっただろう……と思ってしまいます。
まあ、いつの時代でも、芸術家というものは困った存在ですが……

筆者サマセット・モームは、1874年にパリに生まれます。
父ロバートは在仏英国大使館の顧問弁護士。
母は軍人の娘。
五人家族の末っ子でした。
8歳の時に母が亡くなり、父も10歳の時に死亡。
牧師である父の弟に引き取られます。
パリでの楽しい生活は一転、子供のいない厳格な家庭に引き取られ、孤独と不幸を感じました。
また、その後入学したキングス・スクールでも、フランス語訛りと生来の吃音のため、いじめに遭い、とても楽しくない学校生活を送ったようです。
可哀そうに……どの時代でも、不幸な子供はいるものです。
ですが、高等部に上がる頃には優等生となったようです。
よかったね!
でも……今度は肺結核になり、楽しい学校生活も一変。
不幸って、こんなに重なることある!?
何とか復学しますが、勉強に熱が入らない。
とうとう退学し、南仏旅行ののち、ドイツ生まれの叔母の勧めでハイデルベルク大学に進学。
こちらでは楽しい学校生活を送りました。
よかったね!!(二度目)

いじめられっ子だったモームの略歴を簡単にお話ししました。
さて、肝心の『月と六ペンス』の話に戻ります。

『月と六ペンス』は、三十歳の頃に「マンネリに陥った」モームがパリに移り住み、そこで芸術家たちの逸話を聞いてアイデアを十年以上練って完成した作品です。
「月」は手の届かないものに対する憧れ、「六ペンス」は向き合わなければいけない現実……というものだと私は解釈しています。
でも、それは現代にも通ずる普遍的な悩みではないでしょうか。
人は皆、何かを諦めて、それでも戦っています。
現実からは逃げられません。
ですが、生きていれば、やがては幸せな時も来るのでは来るのではないでしょうか?

岩波文庫の行方昭夫さんの訳では、ストリックランドがこう言います。
p88 「世間の人は、あなたを人間のくずだと思いますよ」
  「思わせておけ」
また、新潮文庫の金原瑞人さんの訳ではこうなっています。
p73「みんな、あなたをろくでなしと呼んでいますよ」
  「いわせておけ」

このくらい、無理なことは無理とすっぱり断ってしまいましょう。
世間的には毒キノコのように見なされていても、気の合う菌類のような仲間はきっとどこかにいるはず。
世間一般の枠に嵌る必要なんて、ないのです。

それを教えてくれた、大切な本です。

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