けいりん
連載小説Birthdayのまとめです。 学校のマドンナ的存在である先輩と運命の出会いをした少年。 祖父と祖母の馴れ初めを描いた古い日記に胸ときめかせる少女。 不思議な力がきっかけで生涯の伴侶と巡り会った男。 遺伝子(ジーン)と模倣子(ミーム)の出会いと継承。 その交錯する地点で生まれるものとは。 この運命は偶然? それとも……
声劇台本「プロローグ」を中心に、その前日譚的なエピソードを加えていく予定です。 高校合唱部の同期、マミとユカの2人が辿る、夢と友情の軌跡。運命に引き離された2人が再び出会う時、何が始まるのか。
音声配信アプリRadiotalkで、週一回お題を決めて創作して朗読した作品のテキスト版です。随時更新。
たらはかにさんの企画 #毎週ショートショートnote に参加した作品たちです
特に企画等に参加したわけではないものや、単発の企画に参加したものなどなど
短い小説をメインに発表しているけいりんのページですが、それらを種別にまとめてインデックスを作ることにしました。 どの種別もジャンルは多種多様で、基本的には互いに関連もないので、発表順、或いは気の向いたところからテキトーに読んでいただいても問題はありませんが。 ついでに作品ページにはない、それぞれのお題の記載もしておきます。 マメにはやらないと思うけど時々追加していきます。 毎週ショートショートnote参加作品(たらはかにさんの企画 #毎週ショートショートnote に参
昨年人から勧められ、観ようと思ったものの、いけそうな時にはちょうどいい時間でやってるシアターが近くになく、行きそびれたままになっていた「キリエのうた」。 サブスクに上がるのを待ってたんですが、やっと来たかと思ったらU-NEXT限定で。わい、U-NEXTは入ってないんだよねえ……初月無料も以前何かの時にやっちゃってるからもうできないし。 と思ってたら、カミさんが観たいものがあって入会したってことで、他にレンタル料もかかったんですが、ついに観ました。 正直、巷で非常に評価の
「肉は?」 汁椀をのぞきこんで、旦那が言う。 「肉?」 あたしは聞き返す。 「だって、狸汁って」 「ああ」 そういうことか。そういえば「今日は狸汁ね」と言った時、「え、マジで!? すげえ!」なんて言っていたっけ。 「精進料理でさ、こんにゃくの入ったお味噌汁を、狸汁っていうのよ」 「そうなの?」 「うん。この辺じゃあまり言わないみたいね。地元じゃ普通に言ってるんだけど」 「なんでそんな名前なの?」 「諸説あるね。坊さんが肉の代わりに食べたんだとか、油のせいで湯気が立たない
最初は偶然だろうと思った。 とはいえ、内容ははっきり覚えている。そのくらい衝撃的だったからだ。 「今日は一緒に観に行けて楽しかった~。一作目や『再び』はともかく、『必ず訪れる』のリバイバル上映なんて滅多にないからさ。スケジュール合って本当に良かったよ。晩ごはんの、チュニジア料理だっけ。初めて食べたけど美味しかったな。ほんと、いろんなお店知ってるよね。またどこか連れて行ってね」 そもそもSNSでこんな個人的なメッセージ然としたものを見ること自体珍しい。もちろん、匂わせなの
前回のお話 始めから読みたい方はこちら あたしは、疑っている。 あたしが祖父の日記を手に取ったことは、偶然だったのだろうか。 日記に書いてあった「神の誕生」とは、ふさわしい物同士の間で子供を作ること、それだけの意味だったのだろうか。 祖父はなぜ、祖母を受け入れたのか、ロマンチックな読み物として読んでいるうちは気が付かなかったが、その過程はあまりに不自然だ。そこには祖母の力か、なんらかの意図が働いてはいなかったか。 「ふさわしい時間、ふさわしい場所、ふさわしい状
前回のお話 始めから読みたい方はこちら 「先輩、あれは……あれは一体なんですか」 羽美子の部屋に通されて、呆然とする明を残してお茶を淹れに行った羽美子が戻ってきた時、明は半ばくってかかるように言った。 「まあ落ち着いて。まずはお茶をどうぞ」 言われて、自分の勢いを恥じるように、明は目の前に置かれた紅茶に口をつける。 「あ」 「おいしいでしょ。紅茶入れるのはね、自信あるの」 そう言って、自分でも一口。 「あら、ちょっと濃かったかしら」 「いえ、美味しいです。それで、あ
前のお話 始めから読みたい方はこちら それが合図となったかのように、校内の超能力者たちは、その力を強めていった。 瑞稀と同じように物を動かすところを見せていた一年生の男子は、ちょっとした口論がもとで「力」で相手を突き飛ばし、大怪我を負わせた。 こよりに炎をつけてはしゃいでいた女子のいたクラスでは、ボヤ騒ぎが起こり、3人が救急搬送された。あの子がやったんだ、そんな噂がどこからともなく流れてきた。 伏せられたトランプを言い当てていた子は、次々と友達の秘密を明るみに出し
前回のお話 最初から読みたい方はこちら 広い和室。十畳、いや、その倍ほどもあるだろうか。 だが、その広さですら、奥に設えられたものに比べたら、明を驚かせるには足りなかった。 それは、ある種の祭壇のように見えた。色味としては大きなお寺にあるものと似ている。だが仏教の祭壇そのままというわけではない。その作りや置かれている様々なものたちは、今までに明が見たことのあるどんな宗教の意匠とも異なっていた。 中央に聳え立つのは、写真で見たことのあるマヤのピラミッドにも似た何か。
連載小説「Birthday」の構成にミスがあり、修正しました(第七章と第八章を入れ替え)。ストーリーを追う上で不都合はありませんが、お知らせしておきます
父が死んだ。 ほとんど顔も覚えていない父だ。唯一の法定相続人とかで役所から連絡を受けるまで、まだ生きていたということすら知らなかった。 何をしていたのか知らないが、かなりの額の財産が残されているのだという。そこには、父が一人で住んでいた郊外の一軒家も含まれていた。 正直なところ、全て放棄してしまおうかとも思った。裕福とは言えないが、特別困っているわけでもない。そもそも遥か昔に縁を切った父だ。今更都合よく遺産だけ受け取ろうというのも気が引けた。 だが一方で、それこそ今
前回のお話 最初から読みたい方はこちら 「今度は三年だってよ」 「え、また? そろそろ飽きてこない?」 そんな会話が聞こえてくる。 昼休みの教室。話しているのは、それほど仲良くはないグループの数人。あたしは耳をそばだてた。 「それがさ、今度のはすごいらしいよ」 「今更、変わったことなんてこれ以上ある?」 「あるある。なんたって瞬間移動だもん」 「え、マジで!? 消えるの? 目の前から?」 それは確かにすごいな、そう思って、あとで確かめるべく耳を澄ます。 三年二組の
前回のお話 最初からお読みになりたい方はこちら 「ここですか」 「そう。あたしの家」 一ブロックをまるまる囲った塀。大きくはないが厳しい不風情の門。 木扉を開け、羽美子は明を誘う。 「さ、入って」 「あ、はい。お邪魔します」 あの日、羽美子の告白を受け入れた明は、晴れて羽美子の恋人となった。……はずなのだが、その後特に羽美子からの連絡などはなく、明はあの日おこった全てが夢だったのではないか、とさえ思い始めていた。 だが教室に行けばそこには好奇心いっぱいのクラスメー
その瞬間、激しい動揺に襲われた。 鼓動が跳ね上がり、息が荒くなり、目が泳ぎ出す。何かが記憶の底で蠢く。心の奥津城から低い声が聞こえる。 だめだ。思い出しちゃ、だめだ。 せっかく忘れたのに。忘れようとしていたのに。 だが、本当はわかっていた。あたしは不器用に目を逸らそうとしているだけで、その傷は、まだあまりにも生々しく、血を流し、熱く脈打ち続けているのだ。 「忘れた」なんて、自分に言い聞かせてるだけ。 そうしないと、足が止まるから。 「う……うう……」 今感じて
前回のお話 最初から読みたい方はこちらから 「ねえねえねえ、見て見て!」 瑞稀が興奮した様子で言う。 早速祖父の日記の続きを読んできたあたしは、瑞稀が他の話をしてきたのをちょっと意外に思った。昨日あんなに夢中だったのに。 ま、日が変われば興味の対象だって変わる、か。 私の方はすっかり新しく仕入れたネタで盛り上がるつもりだったわけで、一抹の寂しさを覚えなかったといえば嘘になる。だがひどく熱を帯びた瑞稀の目つきに逆らうのも躊躇われた。 こっちの話はあとでもいいか。
「それじゃ、最後の曲、聴いてください。『Drastic Violet』」 歓声はなく、だがそれに変わるように大きな拍手が起こる。短い前奏の後、なぐりんが、ちかおが、順にメロディーをついでいき、皆が振り上げるペンライトの色は黄色、そして赤へと変わる。さらにオレンジに変わった時があたしのパート。 みんなわかってるなあ。 あたしは安心感とともにマイクを握り直す。 ♪見せかけの色じゃ もう我慢できない ♪および腰の知性なんて ねじ伏せてきて 軽やかに回りながら、
君がついた嘘を ぜんぶ集めたら、いつかは 本当の愛になるんじゃないか、なんて そんなことを信じてるフリしたのが 僕のたった一つの嘘だったのに また重ねろって言うの? この上 「君がいなくたって平気だよ」なんて 本当になんかならないって わかってる嘘をさ