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エバーテイル3年目のミステリー~2020年版東京ディバンカーを通したDENIAL.exe再解釈~

 皆さんは『東京ディバンカー』というゲームをご存知だろうか。
 2019年に配信開始を予定していた女性向けゲームであるがリリースが遅延し、2024年1月25日から予約インストールが開始、2月21日から広告が放映され始めた新作ゲームである。

 ところがこの広告を見れば分かる通り、エバーテイルにそっくりなホラー映像を放映している
 それもそのはず、この東京ディバンカーをリリースしているのはZigZagame。エバーテイルの広告を出していた実績があるので、そっくりなのも納得できるのではないだろうか。
 当然これだけエバーテイルに似た広告を出すのであれば、もしかしたら東京ディバンカーがエバーテイルの広告を実際に遊べるタイトルになるのではないか。そんな事をぼんやり思いながら東京ディバンカーの過去を調べた時、衝撃的な真実が明らかになった。

上:2019年に公開された東京ディバンカーのキャラ、ヒロト 下:エバーテイルの広告

 2019年に公開されていた東京ディバンカーのキャラが、エバーテイルの広告ストーリーに流用されていたのだ。
 これを参考に広告を改めて確認すると、新たなエバーテイルの真実が見えて来る。

 2021年8月10日から登場した主人公、カズトは「死は討論ではない」編から明確にキャラ付けされた人物である。
 彼は広告中で自動車に轢かれ、「お前は全ての始まりであり、終わりでもある」というメッセージが表示されていた。自動車に轢かれてエバーテイル広告内で独自に展開されているDENIAL.exe世界に転生したのだろうと考察されていたが、どの世界から転生したかは不明だった。
 しかし旧東京ディバンカーでは「ヒロト」として登場している過去が分かった今、意味深なメッセージも全てつじつまが合う。「お前は全ての始まりであり、終わりでもある」は「旧東京ディバンカーのメインキャラであり、終わった世界の人物である」という宣告であるし、この映像における「死は討論では無い」というメッセージは「カズトの死因は討論、考察するような物では無く、旧東京ディバンカー世界が消滅した事による転生という答えが出ているから」という意味なのだ。

 この映像で占い師が語っている「彼には、底知れない闇と執着が宿っているように見える……」というメッセージは旧東京ディバンカー世界に対する執着、そしてそれにまつわる闇であろう。
 本稿ではその闇を紐解いていき、カズトにまつわるストーリーを解明していく。

・東京ディバンカーが作り直された理由

 2019年にリリースが予定されていた東京ディバンカーはリリースが遅れに遅れて5年もかかってしまったのだが、このような事はゲーム開発ではそう珍しくない。例えばCygamesが運営している大人気ゲーム、ウマ娘プリティダービーは最初のリリース予定時期は2018年冬リリース予定だったのだが、結果としては2021年2月24日と3年後の配信となった経緯がある。
 さて、東京ディバンカーも2018年10月にXでアカウントを作成し、2019年2月6日に最初の投稿が行われた。だがそれから4年間の空白を置き、次に残されたのが以下の文面である。

「東京ディバンカー」の開発状況のお知らせとお詫び

 
「東京ディバンカー」をお待ちいただいている皆様、並びに関係者各位 事前登録受付中の新作タイトル「東京ディバンカー」につきまして、当初お伝えしていたリリース予定時期を大幅に超えてしまっていること、そのような状況において長らく情報を更新できなかったことにつきまして、心よりお詫び申し上げます。

 昨今のスマートフォン用ゲーム業界における競争の激化と、他社ゲームの品質の著しい向上を鑑み、皆様にご満足いただけるサービスを提供するためには、ゲーム品質の更なる向上が必要であると判断いたしました。それにあたり、すでに告知をした内容も含めて例外なくコンテンツの見直しを行ったことで、開発が大幅に遅れる結果となってしまいました。また、自信を持って公開できるクオリティに達するまで情報の発信は控えるべきという判断から、本日まで開発状況をお伝えすることができませんでした。

 コンテンツを見直した結果として、イケメン「グール」たちとの共同生活や東京に潜む「怪異」などのオリジナルコンセプトは維持しつつ、舞台設定やゲームシステムなどを一新する運びとなりました。

 お待ちいただいている皆様、並びにゲームの開発に携わっていただいた関係者各位の皆様には、多大なるご迷惑をおかけして大変申し訳ございません。

 一新された「東京ディバンカー」は、間違いなく魅力的なゲームになっている自信がございます。今後、SNS等にて開発中のゲーム情報を随時公開いたしますので、是非ご覧ください。

 なお、配信開始時期は2024年初旬を予定しております。開発状況につきましても、SNS等にて順次お知らせしてまいりますので、そちらもご確認ください。

 このたびは多大なご迷惑をおかけいたしましたこと、重ねて深くお詫び申し上げます。 お待ちいただいている皆様にはご心配をおかけいたしますが、よりよいものをお届けできるよう尽力しておりますので、今しばらくお待ちいただけますと幸いです。
午後7:03 · 2023年10月24日

東京ディバンカー 公式Xより引用

 要するにゲームのクオリティアップが必要であると考えられた結果リリースが遅れてしまった、という事が書かれているのだが、問題はここからである。何故クオリティアップをする必要があり、どうクオリティアップを図ったのか?
 改修前東京ディバンカーは、4Gamer女子部とにじめんに情報が残されていた。『コンテンツを見直した結果として、イケメン「グール」たちとの共同生活や東京に潜む「怪異」などのオリジナルコンセプトは維持』とあるが、過去のあらすじと見比べるとかなりコンセプトは変わってしまっているのが分かる。

・開発中止版東京ディバンカーあらすじ

2019年。
夜行性害獣ネコマタが、人を噛み殺す事件が発生し、厚生省はネコマタ駆除組織『UCRC』を結成。
以来、ネコマタ出現をスマホに知らせるアラート、立入禁止区域指定、そしてUCRCのユニフォーム姿の職員たちが、規制線の先に向かう姿は渋谷の当たり前の風景となっていた。

ところが、UCRCの活動には謎めいた噂が――『UCRCはネコマタではなく、グールを追っている』
都市伝説コラムの記者であるあなたは、UCRCに在籍し音信不通となった弟の消息を追って、彼らの“真実を暴く”為、規制線向こうへ。

そこであなたが見たのは――
ネコマタ駆除は国家ぐるみの嘘!?
特殊部隊のくせにやる気のないUCRCのメンバーたち! しかも彼らはSAクロノスっていう名前のグール???
弟の情報を追いながら、チームをまとめることになったあなたは、SAクロノスチームの『マネージャー』を任されることに――

改修前東京ディバンカーのあらすじ 原文ママ

・最新版東京ディバンカーあらすじ

『次は、きさらぎ駅――
きさらぎ駅――』

東京の薄闇が覆う電車の中で、
あなたは突如、不気味な《怪異》に襲われる。
そこへ現れた、悪魔と契約した男たち、
通称《グール》――

彼らの秘密を目撃してしまったあなたは、
常識ではあり得ない奇怪な出来事に見舞われながら、
名門《ダークウィックアカデミー》へと連れ去られる。

そして

“あと一年で、あなたは死ぬ。”

待ち受けていたのは、
《呪い》の宣告だった。

あなたは《呪い》を解く術を探すため、
一筋縄ではいかない《グール》たちと協力し、
東京に潜む怪異事件を調査することに。

ようこそ――あなたが知らない東京の暗部、
《ダークウィックアカデミー》へ。

新東京ディバンカーあらすじ 原文ママ

 ここで二つのあらすじを見返すと、新しい東京ディバンカーのあらすじにはUCRCという秘密組織要素が無くなった代わりに「ダークウィックアカデミー」という学校要素が追加されている事が最も大きな差異だと言える。
 何故なら2020年には登場したツイステッドワンダーランド(以下ツイステ)が学校要素のあるダークな雰囲気の女性向けゲームで大ヒットという面が現在の東京ディバンカーにそっくりだからだ。

 ツイステは元々人気の高いディズニー要素があるとはいえ、ちょうど東京ディバンカーを出そうとしていた2020年の大ヒットタイトルの一つである。
 2020年にはあんさんぶるスターズ!! Musicやヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-という今でも話題が続くような女性向けゲームが登場していた。自分が知ってる範囲だけでもこれだけ大作が続いた年に改修前の東京ディバンカーを出しても勝負にならない、と判断したのだろう。

 また旧東京ディバンカーのゲームジャンルに関しては、主題歌を担当していたKradnessの投稿を見るとパズルゲームだった事も分かる。
 ゲーム映像などは2024年2月25日時点で残っていないのでここが変わっているかは分からないが、2020年は音ゲー要素の強いゲームが多かった。あんスタやヒプノシスマイクは音ゲーがメインであるし、ツイステにもリズミックという音ゲー要素がある。
 よって大きなクオリティアップとして、ゲームジャンル自体もパズルゲームから音ゲーに変えていてもおかしくない。

・運命を変えた『エバーテイル』

 そんな所で恐らく新しいゲームの方針を検討しつつ開発を開始していたであろう2021年3月、ZigZagameのリリースしていたエバーテイルのホラー映像が大ヒットする。
 2021年はエバーテイルにとって広告が大ヒットし、様々な実況者が取り上げ、詐欺広告だと話題になった。しかしそれ以上に、ZigZagame内部では開発していた新しい東京ディバンカーの方針を完全に決めるきっかけになったのではないだろうか。

開発中止された東京ディバンカーのキー画像

 開発中の東京ディバンカーはもっと現代寄りで、どちらかと言えばヒプノシスマイクなどの女性向けゲームに近い雰囲気である。
 元の東京ディバンカーではCVも石川界人、斉藤壮馬など16名が決まり公表されていたし、テーマソングもKradnessという歌手に依頼して公開済み、ここから方針転換しようとすると相当時間も金銭もかかる事は間違いない。おそらくゲームもそれなりに出来上がっていていただろうに、それでも開発を中止したのは相当2020年の女性向けゲームラッシュを危険視したと思われる。

 時を同じくして2021年3月エバーテイル本編の巫女編イベント『赤竜の落とし子』にてカズトが登場する。旧東京ディバンカーを確認出来ない以上どこまで以前の設定と関連しているかは不明であるが、おそらくほとんど設定は変わっているだろう。
 赤竜軍の軍人で武装ドローンを使用するカズトはヒロト時代の衣装を着用していないが、旧東京ディバンカーで登場する予定だった別衣装を流用しているのだと思われる。
 2020年時点で完全に旧東京ディバンカーは開発中止になっており、そこからキャラクターを流用する事が決まったシナリオが世に出始めたのが2021年3月だった、と推測できる。
 現時点でエバーテイル中に登場した旧東京ディバンカーのキャラは、ヒロト以外確認出来ていない。

 またエバーテイルの広告本編にもヒロトの姿が見られるようになるが、このタイミングではカズトという名前はつけられておらず、単に帽子をかぶせるだけで主人公の顔グラフィックとして流用されている。
 女性向けゲームに明るい方の場合はこの時点で旧東京ディバンカーは開発中止になったのではないか、という事を察していたのかもしれない。

・エバーテイルの広告に隠された旧東京ディバンカーのメッセージ

 この旧東京ディバンカーの顛末を見てからエバーテイルの2021年8月の広告を見ると、まるで開発中止になった東京ディバンカーに対するメッセージのような広告が多いのがよくわかる

・犠牲なく得られるものは無い(2021/8/17)

 カズトを「迷える子よ、我が許に来るがいい」と呼んでいる闇は、東京ディバンカーが作り直しになったから役割を無くし、迷える子となったカズトをエバーテイル世界に入れた経緯だと言えるだろう。
 闇の中で見たカズトの死体は東京ディバンカー時代「ヒロト」と呼ばれていた彼の名残であり、完全に旧東京ディバンカーが消えた事を示唆している。
 最後に表示されたモンスターに食われるカズトと共に表示される「犠牲なく得られるものはない」というメッセージも過去の東京ディバンカーを犠牲にしなければ新しい東京ディバンカーは得られないという意味になるし、大量のモンスターに襲われるカズトはエバーテイル世界で今後好き放題に使用するという意思表明だ。

・チームの犠牲(2021/12/28)

 エバーテイルの主要キャラであるリゼットが、「チームが生き残るために、何を犠牲にする?」という問いかけに対して犠牲に差し出したのはカズトだった。
 これはZigZagame内部で起こった開発タイトルの取捨選択の様子を比喩的に表現しているのではないか。ZigZagameでは「ネオモンスターズ」「エバーテイル」というタイトルが並び最新タイトルとして「東京ディバンカー」があるのだが、ビリドラがネオモンスターズ、リゼットがエバーテイルだとするとカズトは東京ディバンカーを表現していて、彼を犠牲にせざるを得なかった事を示している。

 またバリエーションとしてリゼットが「これで安心ね!」と言っていた映像もある。
 タイトルを開発中止にするのも大きなコストを無為にする行いではあるが、それでも安心だとコメントしたという事はそれだけ旧東京ディバンカーから新しい東京ディバンカーに作り替える目途が立って安心した、という所を指しているのかもしれない。

・旧東京ディバンカーの没シナリオ?

 カズトが特にひどい目に遭わない広告もいくつか確認されているが、他のエバーテイルのホラーストーリーとはあまり関連性が無いような映像も散見された。
 だがカズトが旧東京ディバンカー出身のキャラクターだとするならば、これらのカズト主役の映像が開発中止になった東京ディバンカーのシナリオを広告にしたのではないかと推測する事が出来る。
 世界観から変更されたのだから新しい東京ディバンカーに以前のシナリオはそのまま使えないし、とはいえそのまま死蔵させるのもコスパが悪い。よってホラー系広告をやっていたエバーテイルで流用すれば、コスパ良く物語を再生産出来ると考えた可能性がある。
 特にこのカズトの母に関する変な夢はエバーテイルとも既存のホラーストーリーとも繋がりが薄く、その割に長編の導入らしい雰囲気も感じる。あり得ない話ではないだろう。

 ただし、一概に旧東京ディバンカーの没シナリオではないかと見るのは難しい。
 この映像もカズトの変な夢という形で物語が進むが、これはカズトの過去や秘密に直接関係しているような表現がなされている分、没シナリオではなく新規に作った物ではないかと考えられる。
 あるいは東京ディバンカーのヒロトがカズトという偽名を使っていて、その秘密をエバーテイル世界の人物に勘づかれたくない、という見方をする事も出来る。

・新生、東京ディバンカーの運命は?

 最後にこの映像を改めて見て、今回の旧東京ディバンカーを含めたエバーテイル広告の再解釈を締めようと思う。これは謎の占い師がカズトの姿を幻視した広告であるが、彼は底知れぬ闇と執着が宿っている、と予知されているのは最初に書いたとおりだ。
 しかしこの映像には続きがあり、最後に表示されるメッセージが「目を閉じても、俺を消せはしない」とある。これはここまで映像に刻まれてきたカズト自身の言葉だろう。ZigZagameがどれだけXの投稿を消し、公式サイトの構成を変えたとしてもインターネットには情報が残っている。どれだけZigZagameが無視しようとしても無視できない、消せない証を見事に打ち立てたと言える。
 そして、ZigZagameが5年もの歳月をかけて開発された東京ディバンカーはAppstoreでは2024年4月18日にリリースされる予定だ。東京ディバンカーの広告自体も少しずつ出て来たばかりなので、今後さらに旧東京ディバンカーとの繋がりも発覚する可能性がある。エバーテイルの広告世界が完全解明される日まで、引き続き広告を確認していきたい。


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