空の器07/ぶどう子って知ってる? それが胞状奇胎だよ。
子宮内膜の絨毛と呼ばれる細胞が(絨毯みたいな形状をしている)妊娠すると、胎盤などの組織になっていく。その絨毛細胞が遺贈増殖していき、小さいつぶつぶが子宮の中に増えてしまうもの。
異常妊娠とされており、悪化すると子宮の筋層にまで進んだり、おなかの中に出てきたり、血流にのって他の臓器(主に脳と肺)に転移してしまったりする。まれに絨毛がんに変化することもあるようだ。
胞状奇胎自体の発生原因はいまだ不明。昔は「ぶどう子」とも呼ばれた。
妊娠300~500件に1件(文献にもよるが1000件分の1という情報もあった)程度の発生率らしい。しかしどうしてか体験談は古いブログ程度しか残っていないのだ。これには本当に困った。医療的な情報を得てから、一般的な情報や体験談を探していく。それは「今後自分がどうなっていくのかを具体的にイメージして」行く必要があるから、なぜって働いているから、必要なのでした。
多分SNSが発展して「記録を残す」という行為が「つぶやく」行為で潰えてしまっているんじゃないかと思う。もしかしたら文献もあったのかもしれないけれど、働きながらの1週間で見つけ出すことは難しかった。
だったら、私が残そうと思った。それがこのレポの動機でもあります。
そこまでの情報を得て、3回目の受診。エコーでは以前見えていた黒い丸は形を変えてひしゃげていた。
もちろん胎児心拍は見えなかった。そのかわり子宮の中にあったのは、たくさんの球状のもの。
「ああ、やっぱりそうだったか」なんとなく、そう思った。
かくして、その次の日珍しい指定もせずにもらえていた3連休の2日目に日帰り手術をすることが決まってしまった。
「あれ、なんだ心拍見えるね。一体どこに居たんだろうね。良かったね多分週数7週くらいかな」なんていうものは妄想でしかなかった。
つまり、妊娠していたと思っていたのに私が腹の中で育てていたのは空の器だった。体はまだ母親になろうとしていた。
私は母親になれなかった。
これは私の戦いの幕開けとなってしまった。