中学社会は情報整理学
こちらのnoteでもたびたび出てくる言葉である「情報整理学」ですが、これってどういうことなのか?ということに疑問を持たれている人がいます。
社会科は情報量が非常に多いため、必要な情報を効率よく整理する必要があります。これは日本史講師の土屋文明氏が提唱されているものです。ここ近年は、中学生、果ては中学入試でも言えるようになりました。
きょうはこの情報整理学が中学社会でも言えることを話したいと思います。丸暗記学習からの脱却のため、重要な話になると思います。加えて、「周辺知識・関連知識・背景知識」の3つの知識も活用しないといけません。
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社会科は基本情報をまずは押さえる
まずはこの話からです。社会科は基本情報をしっかりと押さえてください。
例えば、日本の米の生産順位ですが、基本的には新潟・北海道・秋田の順番です。ただ、データ参照の年により新潟と北海道の順位が逆転することはあります。ですが、ここはそのデータを押さえるよりも、「米の生産は北陸(新潟)・北海道・東北地方の生産が多い」ことを押さえてください。と同時に関連知識として「北陸・東北地方は水田単作地帯で年1度しか稲作ができないこと」と「冬は副業として伝統的工芸品の生産を行っている」ことも同時に覚えてください。こういう基本情報を関連して押さえることで、記述問題などにも対応できるようになります。これらを単品で押さえると使える知識になりません。もちろん、新潟と北海道の米の生産BIG2については知っておく必要はあります。
と、ここで気付いた方がいるかもしれませんが、東北地方と北陸地方の稲作についてはほぼ同じことがいえるため、東北地方で覚えたことをそのまま北陸地方でも使えるようにしましょう。このようなタイプは他にもあるので、セットで押さえるようにしましょう。
また、歴史でも藤原氏の摂関政治が全盛期になった理由がよく出題されます(自分の娘を天皇の后とし、生まれた子を天皇にすることで権力を握る)。しかし、これは平氏政権が実権を握った理由と全く同じなのです。そのため、僕は平氏政権が実権を握った理由を説明するときは、「藤原氏の摂関政治の全盛期と同じやり方」と言います。そうすれば、摂関政治の話が分かっていれば、無理しないで押さえることができます。そのため、基本情報と他に活用できる知識を知ることで、正しく情報整理をすることができると思います。
新情報が出たら……
では、新情報が出たらどうしたらいいでしょうか。重要なのは基本情報を正確に押さえ、その上で新情報を追加することです。
僕が使っているテキストで例を取ると、テキストにある情報を基に、新しい情報を書き加える、という方式です。
例を取ると、九州地方の工業は昔は北九州工業地帯(現在は地域)が発達したが、エネルギー革命によりエネルギーの中心が石炭から石油に変わったことで炭鉱に近い、という利点がなくなりました。そのため、方針を転換することとなり、近年では、中国に近いという利点を生かし、自動車工業が盛んになりました(自動車の生産はアジア一位になっている)。福岡県の苅田は自動車生産で有名です。
実は、僕はこのことを知りませんでした(シリコンアイランドの方は知っていますが)。いきなり知らなくてもいいのです。知った時に新たにノートなどに加えたら問題ないのです。よく指導者研修を行っているときに、「知らないものは後から知ればいい、ただウソは教えるな」といわれることがありますが、知らないものを知ったかぶりのように指導しても意味がないということは頭の中に入れておいてください。授業は知識の披露会ではないのです。いかにわかるように指導する、伝えられるか、の方が大事です(という自分も昔は知識の披露会になってた時ありましたが……)。
このように新情報を入れる最大のチャンスは、「その新情報が入試問題に出ているかどうか、また頻度が高いかどうか」を基準にしてみるといいでしょう。頻度が高くなければスルーしてもいいが、公立入試で見かけるようになれば警戒する必要が出てきます。
ここ近年で公立入試で出てきた新語として、「ジャポニスム」というものがあります。これは今までの教科書でもほぼスルーされてきましたが、2010年代から少しずつ公立入試・私立入試でも聞かれるようになりました。そのため、僕も指導の際にはジャポニスムの説明を入れるようにしました(大学入試ではそれに関連するように同志社で徳川昭武が出てきました)。
そして、私立では頻度があった「大統領制」も近年では公立入試でも問われるようになりました。日本の議院内閣制に対応するような形で出され、2020年の東京都などで少し細かい内容が正誤問題で出てきました。大統領制は来年からの新学習指導要領の教科書ではほとんどの教科書で記載されてきます。そのため、公立入試での出題頻度も上がってくると思います。
そして、塾用テキストの中には大統領制をスルーしている教材もありますが、こういう時にその教材の要点整理に付け加えておきましょう。
来年度からはSDGsを全面的に押し出す教科書になっている関係で、2021年度以降ではそれに関連する問題も出されることが予想されます。現在くわしくSDGsについて説明している参考書は少ないので、自分で公式サイトなどで確認する必要があります。地理・公民の教科書によっては、この単元のどこがSDGsと関係しているのか、ということも記載されている(歴史はごく一部だけだったと思います)ので、自由記述型の問題にも使える題材になります。色々なことに注意を向けて学習をしてください。
基本情報とは
最後に基本情報のまとめをします。僕が思う基本情報とは「基本語句とそれに付随する周辺知識」だと思います。基本語句に関する話は過去の記事にも載せています。基本情報とはそれに付随する周辺知識であるのです。それを理解したうえで、関連知識や背景知識などを駆使してひとまとめにして覚えるのがいいです。ノートやカードにして作成する場合は、ひとまとめになっているものを箇条書きする、表などでまとめる(四大文明や三大改革など)、地図などをまとめるなどして自分なりの覚え方を身に付けてください。
間違ってほしくないのは、基本情報だからといって、それだけ単品で覚えないようにしましょう。社会科は暗記科目といわれていますが、理解する科目なのです。そして、情報を正しく整理する情報整理学でもあるのです。情報の処理の仕方を間違えると大変です。この情報整理学は高校になっても使います。
今日はこのような情報整理学の実戦例を話しました。
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