2021年慶應義塾大学経済学部 解説速報

本日もよろしくお願いします。今日の解説速報を慶応義塾大学にするか、噂の立命館を行うか迷いましたが、今回は慶応義塾大学の経済学部を扱います。今回は年号判定を中心に解説を行いたいと思います。
問題につきましては、代々木ゼミナール、河合塾などのサイトよりDLいただきますよう、よろしくお願いいたします。

■慶応義塾大学経済学部 出題傾向

経済学部は短文記述問題も多く、用語説明などがしっかりとできていなければ点数につながりません。また、年号も正確に押さえておかないと正しい解答が導くことができません。あとは、地図問題も何問か出てきます。2020年は世界地図を用いる問題もあったため、予想以上に難問だった気がします。加えて史料の内容も入っていなければ苦戦は必至です。
もう一つ大きな傾向としては、古代の出題がほとんどありません。中世も2・3問程度の出題です。近現代、近世の出題割合が非常に多いため、対応をしておきましょう。

■大問1 解説

問1の(1)は豊臣秀吉の政権時の正確な時期判断ができなければ解答は容易ではありません。この中で判定が難しいのが3だと思います。よく読むと、兵農分離の話ではないのか、と判定するなら朝鮮出兵よりも前であることは判定できます。それが分かればあとは並び替えることができます。
問2は商場知行制から場所請負制に変わったことを説明できればいいです。もちろん、商場知行制と場所請負制の説明も欲しいと思います。
問3は史料の内容と時期が判定できないと難しいですが、選択肢にある内容の時期も分からないといけません。aの史料は「亜細亜東方の悪友を謝絶するもの」とあるので、1885年に発表した脱亜論です。bの史料は、「日本国と平等の権を保有せり」「朝鮮国政府」とあるので、1876年に締結した日朝修好条規と判定できます。cの史料は「朝鮮の兇徒日本公使館を侵襲し」とあるので、1882年に起きた壬午軍乱と判定できます。あとはそれぞれの年代を判定できれば解答できると思います。
問4は日露和親条約と千島・樺太交換条約の内容が分かれば解決できます。
問5は、日韓協約の内容を正確につかめるか、がポイントです。このタイプは説明をそのまま書くのではなく、史料を用いて解かせる形式で出てきます。日韓協約の内容が分かれば判定できます(下記参照)。

【日韓協約の流れ】
1 日韓議定書(1904):日本の領土使用の承認
2 第一次日韓協約(1904):日本人財政顧問・外交顧問を置く
3 第二次日韓協約(1905):漢城に韓国統監府設置、外交権を奪う
4 第三次日韓協約(1907):韓国軍隊解散、内政権の掌握
5 韓国併合条約(1910):韓国の統治権を日本に譲渡、朝鮮総督府設置

■大問2 解説

問6で知らないものが集議院の設置です。これは版籍奉還後の二官六省のときに一緒に設置されたものです。中央官制の変遷で確認してください。それ以外はそこまでの難問ではないと思います。
問7の(1)は大津事件を受けて、政府はロシアとの関係悪化を避けるために犯人に大逆罪を適用して死刑にするように要求しましたが、大審院長の小島惟謙が司法権の独立を守り、無期徒刑に処したところまで書けたら十分です。(2)は地方自治の変遷がわかれば判定できます。リード文に1878年とあるので、そこからでも絞ることはできます。
問8は内閣と政党名の関係性が分かれば判定できます。内閣はどちらも第二次とあるので、すでに首相になった人物から絞ることができるので、容易に行けると思います。あとは政党名は時期によって変わっているため、変遷にも気を付けておきましょう。(3)の年表はそこまでの難問ではありません。ここは確実に正解を出しておきましょう。(4)は華族制度の変遷を押さえましょう。そのポイントは華族令の制定です。以前の華族と華族令が制定されてからの変遷を押さえると書けると思います。(5)は第二次西園寺公望内閣の総辞職の原因が陸軍が二個師団増設を要求したことに対して内閣が拒否したことです。それを受けて、陸軍大臣が帷幄上奏権を行使して辞任し、陸軍大臣を推薦しなかったことで総辞職に追い込まれました。その理由は、軍部大臣現役武官制を盾にして、内閣が組閣できなかったからです。陸軍・海軍大臣就任についての変遷は国公立二次でも論述問題としても出る可能性があります
問9の(1)は「労働者の共同の組合即ち団結」より労働組合の結成に関して対応するための法律を作ろうとしていることが分かります。となると、考えられるのは、治安警察法であることが判定できます。工場法は労働時間や就業者の規定がなければいけないので、選択肢から外すことができます。(2)は選択肢の年代は判定できると思いますが、グラフの時期判定が非常に面倒です。ヒントは「19世紀後半から20世紀前半のうちの25年間」「同盟罷業(ストライキ)件数」です。ここで日本最初のストライキが雨宮製糸スト(1886)であることが分かると、グラフの年代のスタートは最低でも1886年からになることが分かります。しかし、グラフを見てもらうとわかりますが、一番左でも30件近くはあることが分かるので、もう少し先の時期とわかります。そして、Aの時期が終わってからはストライキの件数が急増しています。となると、流れ的には、労働組合結成→政府がその動きを抑える→第一次世界大戦中に労働組合再結成で労働争議が急増、となります。
よって、右側の5年間は第一次世界大戦中と判定できる(1917年から急増)ので、Aの期間は第一次世界大戦前と判定できます。よって、選択肢で世界大戦よりも前のものは2・4・5となります。5は時期的にズレるかもしれませんが、最初の年が1897年とするならギリギリ入りますので選択肢に入れなければなりません(ここの判定がやや難しい)。

■大問3 解説

今度は琉球・沖縄史の問題です。早稲田でも琉球史は出題されますので、確認もしておきましょう。
問10の(1)はイの貿易港がやや難しいかもしれませんが、少し考えれば那覇と判定はできます。(2)は琉球王国が江戸幕府に派遣した遣使である慶賀使と謝恩使の説明がそれぞれできていれば問題ありません。
問11は「尚泰が琉球藩王」から1872年のできごととわかります。もう一つは「琉球藩を廃し沖縄県」とあるので琉球処分の1879年のできごととわかります。それをもとに時期の判定をしましょう。
問12はドイツがポーランドに侵攻のきっかけとなったのが、独ソ不可侵条約が締結されたことによります。しかし、日本とドイツは1937年に日独伊防共協定を締結したのですが、ソ連に対しては敵対をしていたのです(ソ連、イギリス、フランスを仮想敵国とする)。それが突然条約を結んだので、欧州情勢の急激な変化に対応できずに平沼内閣は総辞職をしました。
問13の(1)は作品の内容、作品名、著者名が分からないと判定は難しいです。bは書き出しに白痴とあるので、作品名が「白痴」です。よって、著者は坂口安吾です。この時点で解答は1か6に絞れます。aは詩風の作品のため、「原爆詩集」とわかり著者が峠三吉とわかります。よって残ったcが大岡昇平の「俘虜記」となります。(2)は日本の国際連合加盟に関する背景を記述する問題です。この時の首相名、締結した条約、その結果どうなったか、の3点を書ければ問題ないと思います。
問14ですが、今回の問題は経済成長率の変化が急激に下がっている4の位置がいつの時期かが分かると解決できます。ポイントは急激に下がったポイントが0を下回っている、ということです。よって、この年は1974年とわかります。そこから判定すれば、選択肢の年代が判定できれば解答が容易にできると思います。もし、知らないとするなら、aの教育委員が公選制から任命制となったところだと思います。これは1956年の新教育委員会法のことです。
問15の(1)は奄美大島を選べばいいです。(2)はMSA協定が1954年とわかれば、それ以外は難問ではありません。

■年代は覚えるべき?

日本史講師として、この話はいろいろと議論が出ると思います。僕個人の意見とすれば、覚えるべき年代は覚えないといけない、と言います(過去問5年分で出ている歴史名辞は年代も知っておいた方がいい)。特に今回の経済学部の問題は正確な年代が分からないと解けない問題が多いため、そういうところを受験するときは流れも大事ですが、正確な年代も覚える必要があります。年号を覚える必要がない、というのは妄信です。最初の第一歩の学習時ではそこまで気にする必要は無いですが、本格的に入試に向けた学習であるなら覚える必要はあります。
共通テストでも基本的な年代は覚える必要があります。時期判定をするためには最低限の年代は知っておく必要がありますが、大まかな流れ、歴史名辞は知っておく必要はあります

なぜ、そのようなことを言うのか?理由は簡単です。年代並び替え問題でも時期が近い問題も出てくるからです。その時に関連のある出来事だけで出ているなら問題はないのですが、関連性のない出来事が並んだ時で時期が近い場合は年代が判定材料(歴史名辞も含む)になることが多いです。
なので、僕は指導する際には年代は年表に出てくるものは最低でも覚える必要がある、と言います。

これは、高校入試でも苦手な人が多いです。最低でも高校入試レベルの年代は確実に覚えておく必要があります。空欄補充で年代を聞く問題もあります。日頃から時代・時期・年代は意識して覚えておきましょう。

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