共通テスト第二日程 日本史 大問5・6

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それでは、今回は近現代の問題を行いましょう。

■大問5 解説

この問題は、井上馨と渋沢栄一の一生を年表形式で表した問題です。どちらかというと、基本的な問題だと思います。

難易度:標準(代々木ゼミナールより引用)

僕も、今回の問題はあまり苦労しなかったな、と思います。受験生にとっては問1が難問だったと思います。それ以外はやや易になると思います。

問1は年号並び替え問題です。しかし、今回の判定で困った人はⅢです。Ⅰは略年表を見ると1862年、Ⅱは1856年ごろ(1858年に日米修好通商条約を締結している)、とここまでは苦にせず判定できます。しかしⅢの関税を下げたのは1867年のできごとです(兵庫の開港が遅れたことも起因している)。「改税訳書」というものが出されたのがこの時期です。ここの判定に迷って誤った人が多いのでは、と思います。

問2は用語組合せ問題です。Xは大蔵省がどちらに属しているか、ということが分かれば問題ありません。太政官の下に属しています。Yの歳出の削減は、家禄の廃止となります。家禄の廃止が分からなくても、地租の2.5%への引き下げは1876年のことなので、下線部の時期(1873年)とは合致しません。

問3は二文章正誤問題です。Xは正文で、生糸は重要な輸出品です。ここは社会経済史の学習が追い付いていなければ難しいと思います。Yは誤文です。1882年のころ、綿糸・綿花は輸入に頼っていました

問4は組合せ正誤問題です。いつも通り、前半は史料読解、後半は内容判定の問題です。
史料の内容から、井上馨が首相になる条件として、渋沢栄一に大蔵大臣として入閣する、という話がありました。しかし、渋沢栄一は固辞した、とあるので、aが誤文と判定できます。dは明らかな誤文です。陸海軍の統帥権は天皇が持っています。内閣総理大臣に統帥権はありません。これは大日本帝国憲法の史料内容が分かればすぐに判定できます。

実は、この問題ですが、類似の資料が上記の動画で解説されています。もし、この動画を見たうえで第二日程を受けられた方は背景知識が入っていたと思います。そうすると、aが簡単に誤文とわかったかもしれません。

■大問6 解説

最後は食文化・食生活に関するテーマ史問題です。この切り口については斬新な問題もあり、なかなか面白かったと思います。

難易度:標準(代々木ゼミナールより引用)

僕の体感は問3が難問だったと思います。しかし、背景知識などを活用できたら何とか判定できるかな、と思います。そして、注目点は、問7です。形は違えども、第一日程で出題された問題が出ています。
僕が公式Twitterで話したこととして、第二日程を受ける際は、第一日程の問題形式を見ておくこと、と言いましたが、まさかの的中となりました。

問1は単純正誤問題です。関連知識や背景知識を駆使すれば正解は出せると思います。
➀は輸入額が最も多かったのは毛織物です。茶は輸入よりも輸出品です(1位はダントツで生糸)。②は租税は現金納入です。財政収入を安定させることから物納ではなく金納となったのです。物納は小作料の方です。③は台湾の割譲は下関条約です。天津条約は朝鮮に対する派兵の取り決めを行ったのです。④は正文です。

問2は組合せ正誤問題ですが、新傾向として、表を当てはめる問題です。表の説明を参考にしつつ、正しい表を入れ込めばいいです。2つ目の説明より、米の消費量が1930年より減少したより、米の消費量はa<bなので、Xにはaが入ります。一つ目の説明より、牛乳・乳製品の消費量が増え続け、とあるので、Yにcが入ります。また、米の減少に注目するなら、1970年の減反政策が分かれば、減少し続けていることもわかるため、そこからcが1975年と判定できる、としてもいいでしょう。

問3は年号並び替え問題です。しかし、今回はⅡの時期の判定に困った人が多いと思います。
Ⅰは1945年頃で戦後すぐのできごとです。Ⅱは沖縄出身者など多くの日本人が南洋諸島に移り住んだ、とあるので、沖縄戦が行われる前、と判定できます(1944年ごろ)。Ⅲは辛亥革命が1911年とわかるので、ここで判定します。そのため、⑤か⑥で大いに悩んだと思います。もし、誤答で⑤が多かったらⅡの判定が難しかった、とわかります。

問4は単純正誤問題です。これも形は違えども、第一日程で出た松方財政の内容が分かれば、容易に判定できます。あとはインフレ・デフレの汎用知識も必要となります。
誤文は②です。松方デフレで農産物価格は下落しています。その結果、土地所有者の中には土地を手放すものが出てきて小作人になるものが増えました。その一方で、その土地を手に入れた寄生地主も現れています。この背景知識も押さえておくといいでしょう。

問5は組合せ正誤問題です。第一日程でも出題された因果関係型の正誤問題です。
米の関税維持を支持する層は、米価の安定を望んでいます。これも汎用知識で、関税が廃止されると物価の安い商品が流入し、農家の人々の生活が苦しくなります。よって、生活費が低下します。そのため、関税維持するなら、米価を安定させなければなりません。また、米の関税廃止を支持する資本家は、生活費を下げることで庶民の生活を安定させる方を望んでいると判断できます。今回は関税廃止の汎用知識で解決できる問題です。
今後も、このような形式の問題は出題が予想されますので、様々な形式のシチュエーションをしておきましょう。

問6は二文章正誤問題です。Xは誤文です。戦時中の生活は「ぜいたくは敵だ」というスローガンのもと国民も一致して戦争に協力していました。そんな中、カレーライスなどの洋食が人気になることはこの時期ではありえません。カレーライスなどの洋食が広まったのは大正時代です。ここからでも誤文と判定できます。Yは正文です。
これも背景知識ですが、当時の日本とアメリカの関係は悪化する一方で、外国から入ってきたものについて、外来語を使わない風習がありました。例として野球でセーフを「安全」などといっていました。
なお、このXの選択肢ですが、「日本史 図版・史料読みとり問題集」(山川出版社)でも記載されていますので、確認ください。

問7は用語組合せ問題です。食料不足に悩む国民がおこしたデモ行動は食料メーデーです。ニ・一ゼネストは労働闘争計画のことです。また、インフレ防止と赤字財政解消の要求をしたのは、ドッジ=ラインです。また、単一為替レートの設定を行ったのもこのときです。一緒にシャウプ勧告も押さえておきましょう(この時期の社会経済史は出題頻度も高いため注意が必要)。レッド=パージは共産党員の公職追放令のことです。
ドッジ=ラインについては、第一日程でも出題されています。

■全体的な難易度は?

代々木ゼミナールのサイトでは、昨年のセンター試験よりやや難、といっていました。しかし、僕が思ったのは、標準かやや易になると予想しています。なぜなら、明らかな難問が少なかったこと、図版読み取り正誤問題がなかったからです。史料読解で時間を取られた方もいると思いますが、それは、問題のトレーニングが足りなかったのでは、と思います。平均点予想として、第一日程が64点とあったが、第二日程は67点くらいいくかもしれません。

今後の対策などは過去の記事に掲載していますので、一読ください。

今回は第二回とあっただけあり、比較的解きやすかった感じでした。もし、来年度受験で日本史を使われる予定の方は、ぜひ一度解いてください。その際、まず点数は気にしなくてもいいです。どんな感じの出題のされ方か見ておくといいでしょう。そのうえで、今後の学習の参考として見ていただけると幸いです。
僕の解説は周辺知識・関連知識・背景知識の3つの知識を活用できるように意識しています。そのため、それらを活用できるように内容をまとめておきましょう。理系で日本史を使われる場合は、基本語句と内容の整合性、年代整理、内容と内容の関連性など意識して学習してください。

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