【大学入試紙面講義】2021年同志社2/5実施 解説速報
本日より毎週水曜日は予告していた通り、今年実施された主要大学入試の解説を行います。なお、この解説については、主な問題のみ解説を行います。
同志社大学は正誤問題はありませんが、出題特徴として、やや細かい知識を問われます。ですが、そのほとんどは教科書に載っています(ただし、掲載教科書は「詳説日本史」とは限りません)。
今回の問題は、代々木ゼミナール、東進、河合塾などの大手予備校サイトより問題を取っていただきますよう、よろしくお願いいたします。僕なりにどこで点数を落としやすいか、などを解説したいと思います。そのほかのサイトやYouTubeでも解答速報を行っているところもございます。併せてみていただけると知識の補完になります。
無料公開で行います。よろしくお願いいたします。
■同志社大学の出題傾向
まず、同志社に限らず関関同立について言える話が、「詳説日本史」に掲載されていない内容も出題されることがある、ということは知っておきましょう。今回の問題でもいくつかは「詳説日本史」に掲載されていない問題があります。こういう問題については、用語集や辞書型参考書などを用いて知識の補完を行う必要があります。そして、点差がつきやすい箇所でもあります。そして何よりも、文章正誤問題がほとんど出題されません。小細工無しの正統派の問題になっています(似たような形式が立命館、京都大学、京都府立大学などがあります)。
同志社大学は聞かれる語句のレベルが高いですが、標準問題までで8割を占めます(確実に合格したいなら9割は欲しいところで、最低でも8割はないといけません)。そして、同志社は外交史や社会経済史を単独で出すことが多いので、学習するときには気を付けておきましょう。同志社ではしつこく聞かれる語句がありますので、赤本などで確認して確実に押さえておきましょう。同志社は空欄補充問題も出ますが、選択肢が非常に多いため、明らかに使わない語句は消去していきながら問題を解かないといけません。
また、同志社のもう一つの特徴として、「○○じゃない方」がよく出されます(こういう人物は用語集レベルも下がっています)。例として、足利尊氏とともに六波羅探題を攻めた赤松則村を出しています。
■大問1 解説
大問1は古代の遺跡・史跡を問う問題で、それぞれの遺跡が何か、をリード文より判定しないといけません。似たような形式が関西大学でも出ていますが、こちらは地図での出題なので、位置もしっかり押さえておきましょう。
そのため、問題を行う前に選択肢の中に遺跡名がある場合は、予め分類しておくことを勧めます。
アは福岡平野の南、とあるので、まずは福岡県の遺跡を見つけないといけません。この中で、知らない遺跡については保留しておきましょう。ということで、保留の遺跡としては大塚遺跡がありますが、神奈川県にある弥生中期の環濠集落です。演習時には後に追加すればいいですが、本番で出た場合は、一旦保留しておくことも重要です。なお、この遺跡は須玖岡本遺跡となります。
イは福井県の縄文時代の貝塚、とあるので、これは鳥浜貝塚を瞬時に出してください。特に関西の私立はなぜか鳥浜貝塚の出題頻度が高いです。このように、関東や関西で出題されやすいものが異なるので、受験される際は気を付けてください。鳥浜貝塚が出る場合は、丸木舟も合わせて押さえるといいです。
ウは奈良時代から平安時代にかけて出羽国の地方官庁跡、とあるので、秋田城跡になります。間違える人は多賀城跡となりますが、渤海などとの交易も決め手になります。よって、日本海側の史跡を選ばないといけないです。
エは基肄城と一緒に出る朝鮮式山城なので、大野城跡となります。これが先ほど言いました同志社でしつこく出題される用語、の一つです。朝鮮式山城については同志社では数年に1度出題されますので、別日程のときでも油断しないで構えておきましょう。
オは群馬県の古墳時代の遺跡、から黒井峯遺跡か三ツ寺Ⅰ遺跡のいずれかが解答となります。三ツ寺Ⅰ遺跡は豪族の居館跡なので、今回は生活のある遺跡のため、黒井峯遺跡が正しくなります。
カは孝徳天皇のときに都になった難波宮です。都の変遷史は出題も多いため天皇と都、政策、中心人物などを関連づけて押さえておくといいです。
ここで点差がつくとしたら、ウとオの遺跡名は点差がつきます。
ここで一問一答形式で難問なのが、サの柵戸と問わせる問題、ソの宗像大社を問わせる問題、ツの摂津職を問わせる問題です。
ツについては、難波宮が分かれば、大阪を統括した官司は想像つきます。あとは沖ノ島にある宗像大社は世界遺産になった知識も含めて押さえておくといいでしょう。サについては、蝦夷討伐史で関連させておかないと簡単に解答が出せません。
■大問2 解説
大問2は日中・日朝外交史です。鎌倉時代については貿易よりも戦乱の方で出題されています。後半は日朝貿易の話が入っていなければ苦戦していたと思います。
点差がつく問題は(1)の設問イと設問ウです。ですが、イについては消去法で解くことも可能です。元寇は北九州なので、祈願するなら福岡周辺の神社ではないのか、というのが類推できます。よって、出雲大社と伊勢神宮は消去できます。宇佐八幡宮も大分県のため、消去することができます。よって、筥崎宮が解答となります。ただし、「詳説日本史」「新日本史」「日本史新訂版」の3つの教科書に筥崎宮のことは記載されていません(ですがどれかの教科書には記載があるはずです)。よって、基本的には消去法で解くのがいいかもしれません。
設問ウについても難問です。この一山一寧についての問題文は、「新日本史」の本文をそのまま使っています。
ちなみに、太字になっているところは、実際の入試問題でも使われた文言です。これは「詳説日本史」「日本史新訂版」どちらも記載はありません。これが先ほど言いました「詳説日本史」以外からも出題される、という話です。
(2)でも「善隣国宝記」の作者である瑞溪周鳳も本来は難しいです。ですが、史料の学習を行っている人は「足利義満の国書(日明貿易)」の出典が「善隣国宝記」だとわかれば判定はできると思います。そこに瑞溪周鳳が作者だとはっきりと書いています。つまり、史料が出てなくても、史料出典なども見ておかないといけないことが分かります。
点差がつくとすれば、あとは、分一銭と抽分銭の区別がついたかどうかです。明の建国年も注意深く見ておかないとスルーされやすいので、気を付けておきましょう。
(3)はクの文引が出たかどうかです。これも「新日本史」に掲載されています。あとは予備校で分引を扱うか、くらいです(僕が昔使っていた予備校のテキストは太字で記載がありました)。日朝外交史を行うならこの内容は必要となりますので、ぜひ押さえておきましょう。
■大問3 解説
大問3は江戸幕末期から明治初期にかけた政治史を中心とした問題です。今回の問題は全体的に平易にできているので、来年入試を控えている高2生の皆さまは基礎固めの問題としてやっておくといいでしょう。
もし、点差がつくとすれば、(1)bの岩瀬忠震ですが、これは消去法で解くことが可能です。あとは海軍演習所の名称と場所も押さえておく必要があります。
mの天誅組の変は攘夷事件の一つとして押さえている人もいますが、内容も押さえなければいけません(「詳説日本史」(山川出版社)、「新日本史」(山川出版社)、「日本史新訂版」(実教出版)は注で掲載アリ)。
そして、(2)の公議政体論ですが、これは「新日本史」と「日本史新訂版」では本文に記載があります。この問題は「詳説日本史」外しの問題です。
実際の問題は漢字5字で答える問題のため、公議政体だけ見ていたら不正解になります。なお、問題本文中にある徳川家も加えた衆議、については、似たような文言が「詳説日本史」にはありました。
あと、注意するべきところは、vの愛国公党です。成立した場所が東京であることに気を付ければ、解答は出せると思います。
これらから見た同志社の難易度は標準かやや易になると思います。同志社受験生にとっては、思ったよりも取り組みやすかったかもしれません。となると、高得点が取れたかどうかの勝負になるため、いかに点差の付く問題で点数を取ることができたか、になります。
■来年、同志社を受験される人は
まず、来年同志社を受験する予定の方で日本史を使う場合、確実に取れる問題と点差の付く問題の区別をしておきましょう。そして、今自分が使っている教科書に記載があるかないか、というチェックも忘れないようにしましょう。関関同立については、「詳説日本史」外しの問題も散見されます。そのため、その後の学習も大事です。赤本での過去問演習のときに、教科書記載のチェックも忘れないようにしましょう。もし、なければ、学校の先生にお願いして、「新日本史」「日本史新訂版」、東書の日本史教科書などを見せてもらうようにしましょう。そこから新たな周辺知識や関連知識を身に付けておきましょう。
きちんと対策ができていたなら、予想以上に高得点が取れると思います。最低でも日本史で8割はないと厳しいです(僕が以前勤務していた予備校では、同志社の日本史は9割欲しい、と聞きましたが、問題を見ると納得しました)。できなかった問題を中心に、知識の補完をサブノートなどに記入してまとめておきましょう。
同志社は時折図版問題を出すことがありますので、文化史がテーマで来たときは、図版問題が出ることも警戒しておきましょう。そして、建築物の位置関係・内容の知識も合わせて押さえておくと、他大学の学習にも役立ちます。史料が出ないからといって、史料の学習をしなくていいわけではありません。今回の「善隣国宝記」は日明貿易の説明の重要史料のため、出典名・作者などの関連知識も押さえておきましょう。