共通テスト追試験解析3 大問5・6

本日もよろしくお願いいたします。それでは、3回目の解析を行います。以前の投稿は下記より参照ください。

では、最後までお付き合いよろしくお願いいたします。

■大問5 解析

大問5は幕末維新期の人物史に関する問題です。

問1は幕末維新期に活躍した人物と業績を問う問題です。Xは江藤新平から佐賀の乱と判定できます。萩の乱は前原一誠です。Yの初代文部大臣から森有礼が出ます。加藤弘之は『国体新論』で天賦人権論を紹介したものの、『人権新説』でダーウィンの進化論をまとめたもので天賦人権論を否定しました。

問2は幕末から明治期の貿易に関する年代並び替え問題です。今回は歴史名辞、内容などで判定していきましょう。
Ⅰは欧米の5カ国との間で関税自主権の欠如などを内容とする条約を締結したから日米修好通商条約です。締結年は1858年です。Ⅱは生糸・雑穀などの横浜港直送を禁じる法令から五品江戸廻送令が出るといいでしょう。発布年は1860年です。Ⅲは釜山など三港の開港を定める、日本の領事裁判権を一方的に認めさせるから日朝修好条規です。締結年は1876年です。

問3は史料とメモの両方をうまく活用してください。Xは政体書によって将来的な議会設置、が誤文です。議会設置は国会開設の勅諭の時になります。史料からの判定だと、2つ目の上下議政局の判定からみるといいですが、正誤文は政体書に関する周辺知識が必要となります。Yはメモをしっかりと読むと正文と判定できます。

問4は明治期の文学に関する問題です。➀は言文一致体の話なので、坪内逍遙ではなく二葉亭四迷です。③は日露戦争の前後なので、自然主義ではなく反自然主義です。④は国民新聞ではなく平民新聞などです。国民新聞はどちらかというと開戦論派です(徳富蘇峰は日清戦争後に国権主義を唱え国権論に転向しています)。

この大問は史料読解とそれに付随する関係性があれば解答はできると思います。それ以外は知識の問題で十分に解けます。よって、この大問の難易度はやや易としています。

■大問6 解析

大問6は近現代の日本と世界の関係をまとめた問題です。

問1は吉野作造が書いた日支交渉論です。なお、この史料は初見史料ですが、中世や近世の史料と比べると幾分読みやすい文章です。よく読めば正誤判定は容易にできます。
Xは一つ目の「英国が多少の譲歩を日本に致すといふことは、決して望み得ないことではない」とあるので、対支要求に否定的ではない、というのは正文です。Yは二つ目の「支那の主権を侵害し、或は支那の面目を潰したやうな点もあるが、帝国の立場から見れば、大体に於て最小限度の要求である」とあるので、不信感が高まることを心配しているわけではありません。よって誤文と判定できます。

問2は1910~20年代の大衆文化についての正誤問題です。②の戦争文学は1930年から40年代のできごとです。③はこれも戦争文学の代表的なもので、1930年代の話です。④は正岡子規の革新運動は1900年代の出来事なのでそれぞれ誤文です。ここは確実に点数を取っておきたいです。

問3は年代並び替え問題です。が、この問題は今回の問題の中でもかなりの難問です。Ⅰは関東軍特種演習の実施は1941年ですが、8月に中止されました(南部仏印進駐が決定したため)。Ⅱはハル=ノートが提示されたのは1941年ですが、10月から11月にかけてです。これを最後通牒と捉えた日本政府は対英米蘭戦争を決断しました。Ⅲは日ソ中立条約締結は1941年に締結しましたが、前年の日独伊三国同盟の帰国前に行ったので、1月から2月にかけての話です。
そう、この問題が難問となった理由は、すべての年代が1941年だからです。そのため、この年の動きを知らなければ並び替えも容易ではありません。正答率も20%あるかないかの難問になります

問4は地図を用いた問題です。Xはカイロ宣言です。よって、エジプトにあるbを選びましょう。Yは7月に三国首脳会談が開催されたのはポツダムです。つまり、ドイツにあるdを選びましょう。なお、aはヤルタ、cはチュニスになります。
この問題は点差がつきやすい問題です。カイロ会談とかポツダム会談などの話は分かるかもしれませんが、その場所を問われるとかなり難しくなります。日本史といえども日本史と関係のある世界地理は知っておいた方がいいでしょう(最悪、中学レベルでも構いません)。もし、このタイプの問題で面喰ってしまった場合、正答率が40%を切るのでは、と思います。

問5は日ソ共同宣言の重要点を問う問題です。これはそこまで難しい問題がありません。➀は平和条約の締結はまだ実現していません。②は日本はサンフランシスコ平和条約締結で西側陣営の一員となりました。第三勢力は東南アジアやアフリカなどの国々を指します。④はOECD加盟は1964年なので、日ソ共同宣言とは関係がありません。

問6は占領期文化のできごとについての組み合わせ正誤問題です。ちなみにどの文章も正文なので、時期が異なれば誤文となります。
bは大江健三郎のノーベル文学賞受賞は1994年です。cの宮崎駿のベネチア国際映画祭でグランプリ受賞は2002年頃です。よってどちらも占領期文化の時期には該当しません。

問7は近現代の対外関係について述べた誤文正誤問題です。③は財政支出を拡大させるための経済安定九原則ではありません。インフレが進行したことに対する対策です。その後、ドッジ=ラインやシャウプ勧告につながっていきます。

一部の難問はあるものの、そのほかの問題は解きやすかったのでは、と思います。全体の難易度は標準ですが、問3のみ難問です。

■全体的な難易度は?

今回の難易度についてですが、本試験の問題よりは幾分かは解きやすかった感じでした。ただ、史料読解の問題は予想以上に苦労したのは本試験でも変わりませんでした。難度は標準と予想していますが、本試験よりは幾分か点数がいいものの、60点は切るのでは、と思います。

本試験でもいえる話ですが、今回の共通テストは史料読解の問題が非常に多く、史料読解のトレーニングができていなかったら苦戦した受験生が多かったのでは、と思います。となると、それを踏まえたトレーニングや周辺知識・関連知識・背景知識の獲得を務める必要があります。もちろん、私立でもこのようなトレーニングが必要なところもありますので、自分の受験する大学でその傾向の問題があるならそれに準じたトレーニングはしておく必要があります。加えて、読解力の強化も行っておきましょう。

それらのトレーニング用教材については別記事でアップします。そちらもご覧ください。

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